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正直意外だった。
まさか学校長がシエルの決闘を受けるとは思ってもいなかった。学校長からしたら拒否して押し進めてもよかっただろうに。
「わかりました。丁度いいので受けましょう」
そう言った学校長はサッと立ち上がると「三十分後、第一訓練所で待ちます」と言って学長室から出ていった。
「…第一訓練所って今生徒が山ほどいんじゃねぇの?」
わざわざそんな所で決闘をやるのだろうか。
ともかくシエルの武装を整えるために一度部屋に戻り、きちんと用意を済ませてから第一訓練所…去年散々世話になったいつもの訓練所に三人で向かう。
途中で大勢の生徒とすれ違った。漏れ聞こえた文句を繋いで状況を察するに、訓練所を追い出されたようだ。ほとんどの生徒が学校の方へ歩いていたので、多分第二か第三の訓練所に流れ込むんだろう。
「よっ」
見慣れた巨大な鉄扉を押し開けると、訓練所の中に人影が三つ。
一人は学校長のもの。残る二人は──
「ユーリア?」
「やぁレィア。学校長に良ければ残っていてくれないかと言われて、とりあえず残ったのだが…レィアも呼ばれたのか?」
薄らと汗が張り付いたまま、いつもの様に笑顔で俺にそう言うのは間違いなく《貴刃》のユーリア。
「あー、いや呼ばれたってーか、どっちかってーと問題事の渦中ってーか」
「なんだ、またレィアか。君といると本当に飽きないな」
「多分、俺のここ一年を読み物として文字に起こしてみるととんでもない長さになるぞ?」
まぁ魔族のアレコレ、勇者のアレコレも言えないし、随分と短くなるだろうが…それでもかなりだろう。
もしそれも全部を知る様な奴がいたら?そうだな、物好きもいるもんだと関心するね。
さて、人影はもう一人。
一言で言うなら真っ黒黒助。
頭のてっぺんからつま先まで一部の隙もなく黒の装飾で固められており、フードを被っているために顔もよく見えない。
強いて言うなら男だろう。それぐらいしかわからん。
『誰だアレ』
わからん。見たことない。
「………。」
ふと、男の視線がこちらに向いた気がした。
………?、いや待て、どっかで見たことあるかも。
『どっちだ』
ある…いや無い?うーん、ダメだ、思い出せん。でも会ったことはある気がする。
なんにせよ学校長が人払いしてるのにいるってことは、意図してこの男を残したという事だろう。
「時間です。それではルールを確認します」
学校長が口を開いたことで俺の思考は中断される。
「試合は一本勝負。フィールドを使用し、中二級程度の怪我を戦闘続行不可能な位置に受ける。あるいは降参した時点で負けとします。また、第三者の過半数が戦闘続行が不可能と判断された時も負けとなります。よろしいですね?」
「………ん」
過半数つっても四人なんだけどな。そう思ったが口には出さない。四人でも別に問題は無いし。
「また、今年よりフィールドの仕様が少し変更されました。ダメージを衝撃に変えるのはそのままですが、一定値を超えて同じ箇所に受け続けるとフィールドがそこにだけ作用しなくなります」
つまりフィールドは見えない鎧とでも思っとけと。
「決闘で賭けるものはシエル・フィーネの教育方針変更の可否。よろしいですか?」
「………ん?………ん」
一瞬、シエルが何を言ってるのか分からないという顔をしていたが、大丈夫だと判断したのだろう。最終的には頷いた。
「それでは、始めてよろしいですか?」
堂々と立ち、構えも取らず武器も構えず、学校長がそう言う。
「………ん」
対するシエルは二振りのナイフを取り出す。対人用の、薄く切れ味の鋭いものだ。
ヴン、と一瞬でフィールドが張られ、俺達から二人を隔離する。
「いつでもどうぞ」
開始の合図は学校長がそう言った瞬間だった。
まさか学校長がシエルの決闘を受けるとは思ってもいなかった。学校長からしたら拒否して押し進めてもよかっただろうに。
「わかりました。丁度いいので受けましょう」
そう言った学校長はサッと立ち上がると「三十分後、第一訓練所で待ちます」と言って学長室から出ていった。
「…第一訓練所って今生徒が山ほどいんじゃねぇの?」
わざわざそんな所で決闘をやるのだろうか。
ともかくシエルの武装を整えるために一度部屋に戻り、きちんと用意を済ませてから第一訓練所…去年散々世話になったいつもの訓練所に三人で向かう。
途中で大勢の生徒とすれ違った。漏れ聞こえた文句を繋いで状況を察するに、訓練所を追い出されたようだ。ほとんどの生徒が学校の方へ歩いていたので、多分第二か第三の訓練所に流れ込むんだろう。
「よっ」
見慣れた巨大な鉄扉を押し開けると、訓練所の中に人影が三つ。
一人は学校長のもの。残る二人は──
「ユーリア?」
「やぁレィア。学校長に良ければ残っていてくれないかと言われて、とりあえず残ったのだが…レィアも呼ばれたのか?」
薄らと汗が張り付いたまま、いつもの様に笑顔で俺にそう言うのは間違いなく《貴刃》のユーリア。
「あー、いや呼ばれたってーか、どっちかってーと問題事の渦中ってーか」
「なんだ、またレィアか。君といると本当に飽きないな」
「多分、俺のここ一年を読み物として文字に起こしてみるととんでもない長さになるぞ?」
まぁ魔族のアレコレ、勇者のアレコレも言えないし、随分と短くなるだろうが…それでもかなりだろう。
もしそれも全部を知る様な奴がいたら?そうだな、物好きもいるもんだと関心するね。
さて、人影はもう一人。
一言で言うなら真っ黒黒助。
頭のてっぺんからつま先まで一部の隙もなく黒の装飾で固められており、フードを被っているために顔もよく見えない。
強いて言うなら男だろう。それぐらいしかわからん。
『誰だアレ』
わからん。見たことない。
「………。」
ふと、男の視線がこちらに向いた気がした。
………?、いや待て、どっかで見たことあるかも。
『どっちだ』
ある…いや無い?うーん、ダメだ、思い出せん。でも会ったことはある気がする。
なんにせよ学校長が人払いしてるのにいるってことは、意図してこの男を残したという事だろう。
「時間です。それではルールを確認します」
学校長が口を開いたことで俺の思考は中断される。
「試合は一本勝負。フィールドを使用し、中二級程度の怪我を戦闘続行不可能な位置に受ける。あるいは降参した時点で負けとします。また、第三者の過半数が戦闘続行が不可能と判断された時も負けとなります。よろしいですね?」
「………ん」
過半数つっても四人なんだけどな。そう思ったが口には出さない。四人でも別に問題は無いし。
「また、今年よりフィールドの仕様が少し変更されました。ダメージを衝撃に変えるのはそのままですが、一定値を超えて同じ箇所に受け続けるとフィールドがそこにだけ作用しなくなります」
つまりフィールドは見えない鎧とでも思っとけと。
「決闘で賭けるものはシエル・フィーネの教育方針変更の可否。よろしいですか?」
「………ん?………ん」
一瞬、シエルが何を言ってるのか分からないという顔をしていたが、大丈夫だと判断したのだろう。最終的には頷いた。
「それでは、始めてよろしいですか?」
堂々と立ち、構えも取らず武器も構えず、学校長がそう言う。
「………ん」
対するシエルは二振りのナイフを取り出す。対人用の、薄く切れ味の鋭いものだ。
ヴン、と一瞬でフィールドが張られ、俺達から二人を隔離する。
「いつでもどうぞ」
開始の合図は学校長がそう言った瞬間だった。
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