大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

休息と憶測

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とりあえずシステナを部屋に運び、汚れまみれの彼女を風呂に放り込む事にし、蛇口はここで今日はお湯の残量がどうのこうのと説明して扉を閉める。
別に今更女の裸を見た所でと言った所なのだが、単純に考える時間が欲しかった。
うーん……
『いいのかい?レィア君。せめて現状をある程度システナから聞いておくべきだったんじゃ?』
まぁ、そうなんだろうけどさ。
思ってた以上にシステナがボロボロだったもんでつい、な。
『見た所、かなり弱体化してたな。とは言え、それでもシステナは神だ。そんな相手をボロボロに出来るような奴が追っ手である可能性がある訳だ。やっぱり最初に何か聞いとくべきだったんじゃないかなぁ』
その通りなんだろうが…ま、システナが出てきてから聞くさ。
で、目下の問題はシステナをどうアーネに説明するかだ。
真夜中にアーネを叩き起すのも悪いし、この前それをやったばかりだし、明日の朝までに考えておけば良いのだが、どう言って説明しよう。
まさかアーネも(見た目は)幼い少女が自力で荒野を抜けてこの聖学まで来たと言っても信じられまい。
「………。」
微かに聞こえる水音に耳をすませ、システナが何故また戻って来たのか考えてみる。
そもそもシステナが王都に向かったのは聖女サマに用があったからだったはず。具体的にはどんな用事かは知らないが、かなり必死になっていた記憶がある。
そんなところから逃げて来たと言うのだから、余程の事だろう。
加えて二週間ほど前、王がわざわざこちらに出向いてまでシステナを探していた。王がシステナを殺す事は出来ないにしろ、何やらちょっかいをかけようとしていると言うのは何となく分かる。
だが、問題は誰がやったのかだ。
システナと言えば聖女の親神。聖女と言えば結界や復元魔法等の守りと援護に長けた特殊ユニット。当然システナもそう言う神のはずだ。
だと言うのにあの様子だ。一体何があったというのだろうか。
「『ん』」
と、シャワーの音が止まった。
湯船は既に冷えてしまっていたので多分入らないだろう。
「あ」
しまった。システナの服を用意していなかった。
どうしようか。システナが今まで着ていたボロボロのワンピースをもう一度着せるのは流石に嫌だろう。かと言っても俺の服は男物だし、アーネの服は身長的に無理がある。
少々考えた結果、シエルが着ていた服を何着か残していっていたのでそれを着せればいいという事に気づいた。
クローゼットの奥底にあったシエルの服を適当に引っつかみ、脱衣所にポイと放り込む。
「なんじゃこれ?」
「とりあえずそれ着とけ。お前の服はまた今度綺麗にして返してやる。それ着たら、直ぐにお前の現状を教えてもらうぞ」
さて、一体どんな面倒事が飛び出てくるのやら。
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