大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

知り合いと遭遇

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という一幕があった後、それなりにシエルの身体をそれとなく見ても布のようなものは無さげ。
アーネは左腕と言っていたが、もしかして右腕や足の方かもしれない。そう思って見てもやはり無い。あの子はどうも肌の露出が多めのホットパンツや軽いTシャツを好む傾向にあるため、見ようと思えば何とでもなる。が、無い。
やはり深い意味は無かったのか。俺も気にしすぎたな。と思っていた頃に、情報は思わぬ方向の思わぬ輩からやって来た。
それはある日の授業終わり、アーネとユーリアと一緒に訓練所を出て帰ろうとしていた時だった。
そいつは長い螺旋階段の上から下へ、カツンカツンと足音を響かせながらやって来た。
淡く輝く金の髪、清々しいまでに晴れた空よりも青い瞳、長身かつ細身の身体は痩せているのではなく、引き締まった筋肉がこれ以上は邪魔だと理解されて作っているから。
地下にある訓練所への螺旋階段は暗く、俺は最初誰か気づかなかった。
が、近づいてくるにしたがい、もしかしてと思って緋眼を使った所、懐かしくも余り見たくない顔であると気づいた。
「あ、レィアさん。久しぶりだね。ちょっと身長縮んだ?」
「……………………なんでお前がここにいやがる。ウィルクライン・アウラング」
俺の表情筋が出来る限界の表現を持って「嫌い」の顔を作ると、さしものウィルも「そんな顔をしなくても…」と困ったような顔をする。
「ん?レィア、まだ会ってなかったのか。一体どんな確率なんだ」
「僕も普通に学校にいるんだけどね。何故かレィアさんとは中々会えなくって」
「俺ァお前と会いたかねぇから寧ろラッキーだったんだがな。つかユーリア、お前その反応ってことは知ってたのか?」
「む?知ってたも何も、前に言ったでは無いか……うん?言ってなかったか?」
「知るか。何をだ」
「ほら、新しい先生の話を。アーネが体調崩した時か何かの時に」
………………?
いやスマン、全くわからん。
つか待て、今何つった?新しい先生?
「え、何、じゃあウィルって今先生なの?」
「そうだね。一年新クラスの副担任をやってるよ。あとはシエルちゃんの世話をしたりも」
「シエルの?」
視線をアーネに向ける。
「んじゃ、前に泊まった日に一緒にいたのはウィルだったのか?」
「私が前にシエルの部屋に泊まった時はカイル先生が一緒でしたわ。何人かで交代してるんじゃないんですの?」
「そう、アーネさんの言う通り。三人の先生が交代して泊まってるんだ」
「そうかい。まぁ、聞きたいことは山ほどあるんだが──」
「そういうのはまた今度話そうか。良かったらアーネさんも一緒に…そうだな、今度の土曜日の午後辺りはどうだい?前々から何故かレィアさんに嫌われてる節もあるし、それを解くためにも」
「!!」
そう言いながら、流れるように俺に握手を求めるウィル。
──あぁ、そういう?
「──だな。あぁ、今度また時間があったらだな。俺はちょいとこの後用事があるもんで」
「む?そうなのか?さっき暇だから──」
ユーリアを強く睨むと、それだけで黙ってくれた。その角度からは見えなかったらしいが、理解は早くて助かる。
「んじゃな」
「うん、また気軽にメッセージでも送っていいからね?」
そう言って、ウィルは俺たちとは逆に階段を下っていった。
「じゃ、行こうぜ」
さて。
俺の手の中──ではなく、髪の中。
そこにあるのは、ウィルがこっそりで俺に渡してきた小さな紙切れ。
そこには一体なにが書いてあるのやら。
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