大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

夜中と決行

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さて、そんな訳で夜。
昼間も授業のかたわら、一応色々と注意していたが全く気配なし。夕方もあちこちを一人で歩き回ったりするも、小瓶の肉片は全く反応しない。
そもそも生きてんの?と思ったりもしたが、閉め方が分からないため、確認のために開けるということも出来ない。
多分生きてんだよな、と思うしかない。
いかん、話がちょいとズレた。
という訳で誰もいない真夜中、アーネを連れて校舎の裏手に来た。理由は二つ。
ひとつは単純にから暴れても何とかなると言うこと。特に今回はアーネもいる。広いというのは非常に重要だ。
そしてもうひとつの理由は、例の肉塊が出没する(した)のは研究所の周りらしいと言う話。
校舎の裏手であるここなら、学校の中に隠し込まれるようにして存在する研究所から比較的近い。釣れる可能性が高いと考えたのだ。
「アウラング先生はどこにいるんですの?」
アウラング先生と言われ、誰の事か本気で考えた後、状況的にウィルの事だと当たりをつけて答える。
「ウィルなら上だ。何かあったらすぐに援護に入れるようにはしてあるとさ」
視界が広い学校の屋上。
ウィルはそこからいつでも参戦出来る状態で見守っているらしい。
「そうですの………もう始めてもよろしくて?」
「そうだな、そろそろ始めるか。頼む」
奴は…狭間の子は、現在身体の修復のため、魔力を欲している。
本来の身体を取り戻すためか、それとも純粋に魔力を欲しているからか、コアの周辺へ向かっていたようだが、魔力を欲しているという事実は変わらないらしい。
で、俺が昼間言った奴をおびき寄せる餌、つまり魔力の塊だが、どうやって用意するのか。
前に触れたが、魔力と言うのは肉体のような入れ物に入れておかないと、散らばって霧散する性質があるらしく、普通に魔法を使う時も、それを防ぐために杖などで魔力を収束させ、魔法を発動させているらしい。
で、だ。
逆に言うなら、魔力そのものを体外に放出するだけならどんな魔法使いでも出来る。
そしてアーネは、その霧散する魔力を《圧縮》することで散らばろうとする魔力を霧散させずにその場に留める事が出来る。
もうわかっただろう。
昼間のうちにしこたま食事魔力を溜め込んだアーネに魔力の塊を作ってもらい、奴をおびき寄せようという魂胆だ。
「いきますわ、よっ!」
気合いを入れてパチンと鳴らした指の音。同時に広がる輝く魔法陣…?
「ん?失敗?」
広がった魔法陣は何も書いて無く、ただの円でしかなかった。
「術式を書き込むと魔法が発動するから、何も無いのは当たり前ですわよ?」
…なるほど、言われりゃそうか。
と。
ボコンと音がして透明な何かが出てきたのが見える。いや、感じ取れる。
ボコンボコンボコンと、連続して魔法陣の方から何かが出てくる音がするが、目には見えない。
しかし緋眼で見ると、とんでもない濃さの魔力の塊が次々浮かんで来ているのが見えた。
「お前…溜め込んだな。この後戦うんだからな?あんまり使いすぎるなよ?」
と言ってみると。
「これぐらい大したことありませんわよ。このペースであと三十分ずっと魔力塊を出し続けても枯れませんわ」
と言われた。やっぱり化物だな…
『レィアさん、気づいてる?』
唐突なメッセージ。いや、最初から繋がっていた。相手ウィルがずっと黙っていただけだ。
「来たか」
『下から…これは…地中を掘って来てる?』
ウィルが疑問混じりにそう言った瞬間。
アーネの魔法陣を砕きながら、真下から奴が現れた。
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