大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

本編

復帰と確認

さて、一晩明けて翌日昼過ぎ。
保健室の先生がヴィクターの意識が戻ったとメッセージを入れてくれたので、アリアンにその事を伝え、手早く昼食を済ませてから保健室へ向かう。
「よぉヴィクター。元気してるぅ？」
「んな訳あるかよ。元気じゃないから保健室にいるんだろ？」
ややぐったりとした顔のヴィクター。とは言え、明らかに体調が悪そうな感じはしない。強いて言うなら疲れていると言った感じか。
「ついさっきまでアリアン達が居てよ、散々喋り倒してからさっさと帰りやがった。何しに来たんだあいつら」
「お前の様子を見に行くとは言ってたけどな…」
「なら本当に見ただけだな。『大丈夫？』の一言もなかった」
なんつーか…本当に一応様子を見に来ただけだったみたいだな。
ははは、とどう返したらいいか分からない話に微妙な笑いで返しつつ、どう本題に入ろうか迷っていると、ヴィクターの方が話を変えた。
「つか俺、なんで倒れたんだ？」
「あん？お前原因聞いてないのか？先生とかから」
「先生なー、なんか用事あるらしくって今日居ないんだよ。しかも、ちょうど先生が出てくタイミングで起きたから、俺なんも聞けてない」
「ほー。んじゃ言っとくと、魔力欠乏症らしいぞ」
「は？俺が？ヤバいじゃん。つーかなんで魔力欠乏症？」
「知るかよ。つっても本当に空っぽになった訳じゃなくて一気に魔力が出てったせいで同じ症状が出たらしい。お前何したんだよ」
「なんもしてねぇよ。部屋でずっと寝てたよ。アリアンあたりから聞いてないか？俺、昨日は体調悪くしたって」
「そりゃ知ってるさ。でもそう言われてもな。俺も先生からそう聞いただけだし、怪我したってんなら多少は分かるが、風邪とか毒とかなんか気分が悪いから云々みたいなのは流石にわからん」
「俺のカルテ的な何かってどこにあるかしらない？ちょい見たいんだけど」
「知るわけあるか。十五号室の奴らは普通は保健室に来ないし尚更」
二人部屋だから頑張ってどうにかしろって言うのは本当に雑だと思う。もうちょい何とかならんかったんか。
「とりあえず、仮にお前が魔力欠乏症だったとして。もう具合はいいのか？」
「もういいぜ。ただ、さっき言ったみたいに先生が今日いなくってよ。休みがてらシエルちゃんの面倒を見といてくれって」
「おいおい大丈夫なのか？いつ帰ってくるんだ、先生」
「夜だと。こんな何も無い荒野の中のクソ狭い学校の中で随分と長いこと外出すんだな」
そりゃ確かにそうだ。先生って戦えたっけ？大丈夫かね。
「用事の内容知らねぇから何も言えねぇな。ところで、そのシエルの様子は」
「問題なしだ。基本的に起きて飯食って寝てを繰り返してるらしいが…まぁ、体型が気になるならダイエットをすることを勧めるのを考えといた方がいいかもな」
「身体に悪そうだな…ところでヴィクター、ちょいと俺、お前の部屋に入った時に落し物したかもしれなくってさ、後でちょっと部屋入っていい？」
「あぁいいぞ。鍵は…ほい」
「あー、あぁうん、助かる。ありがと」
部屋の戸を吹き飛ばしたから鍵はいらないんだけど…言えねぇよな。
まぁ、借りとくだけ借りとこう。