大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

暗闇と接触

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飛びかかると同時に相手を確認する。
真っ赤なヒール、スラリと伸びた生足、特徴的な真っ白の白衣を着た背中は小さく、後ろから見ても女性的なフォルムなのが分かる。
髪は暗くて少し分かりにくいがくすんだ黄緑っぽい色。それを短く雑に切っているのだから、美人にしては少し勿体ない。
あぁそうだ。顔が美人なのだ。

つまり──どういうことかと言うと、梟のように、ぐるぅりと半回転程回った女の頭部。俺の目と女の目が、直接正面から見つめ合った。
「ッ!?」
「おォ、本当に来てたカ」
女が、ヒトではまず有り得ない方向に首を回したままそう呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
「お前、知って──」
「けケッ!」
飛びかかった俺に対し、女がその体勢のまま、俺を抱きしめようとする。
捕縛する気か?
させるか。
「マキナッ!」
『サポート・します』
そう言った瞬間、時間にして一秒の半分以下で俺の両拳に、分厚い手甲ができ上がる。
「ちょっと寝てろッ!」
振り抜いた拳は容赦なく。しかし衝撃はマキナによって大半は打ち消され、相手を気絶させるのに過不足ない威力へと変換される。他の誰かと手加減してやる時によく使うモードなのだが。
女は抵抗もせず、俺の拳は手応えもなく女の背中を貫いた。
「!?」
「ちょっとびっくりしたカ?」
しかも女は飄々とした顔。ダメージはない?
いや、それは当たり前なのか。
殴った所をよく見ると、その周りだけパズルのピースのようになっている。当然血は出ておらず、受けた女も冷や汗ひとつかいていない。
自身の身体をピース状にしてバラして避けた?
ほんの一瞬、一秒もない程度なのだが、あまりの予想外のことに、身体が止まってしまった。
「はっハー!」
その瞬間を女は逃がさず、左手で素早く手首を掴んで俺の顔を右手で捕え、そのまま勢いをつけて膝蹴りを顔に叩き込んで来やがった。
回避しようにも頭も手も抑えられていては反応できない。
鈍い音と共に額を蹴られる。かろうじて鼻は回避したが、これぐらいしか出来ない。手を入れようにも、左手が何かに押さえられ、動かせない。
「しゃア!」
二度、三度、四度蹴り、五度目で手を離して横っ面をボールかなにかのように蹴飛ばされ、距離を強制的に取らされる。
「クソが!」
額が切れ、つぅと血が一筋滴る。痛てぇ。だが頭は割れていない。
手加減…された?
いや、考えている場合ではない。
ニタニタと笑いながら、女がゆらぁりと間合いをもう一度詰めてきた。
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