大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

疲弊感と書き置き

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『おはよう・ございます。気分は・いかがですか』
「あー、えー…そうだな…気分は悪かないが…」
むくりと身体を起こし、バリバリと頭を掻く。
頭がクラクラして喉がカラカラ乾いている。よっぽど深い眠りに落ちていたのか、かなり寝たという実感があるにもかかわらず、まだ寝足りないと思ってしまう。
というか、なんもしてないのにもう疲れた気さえする。
昨日のことは朧気ながら記憶が残っている。確か、なんとか歩きで高壁まで行ったが、着いたのは真夜中だった。
で、すげぇ返り血とかだったから、警備の人達が使うシャワー借りて、血とか肉片を洗い流したら黒い川が出来て、それでまた軽い騒ぎになったのはまぁ覚えてる。
その後は…後は?
自力で帰った記憶もないし、マキナをテーブルの上に置いた記憶もない。そもそもこの宿に泊まったと誰かに教えた覚えはない。
「…おいマキナ、なんで俺がここにいる?」
『その前に・書き置きが・あります』
「あぁ?」
ひょいと髪でテーブルの上にあった羊皮紙を拾うと、確かに何か書いてある。
「つーか暗いな。明かり明かり…」
カーテンが閉まっているので、血を出して後ろの壁にある明かりのスイッチを入れる。別にわざわざ緋眼を使うほどのことでもないし。
しかし魔導具って本当に便利だよな。魔力があれば。
「えーっと何々…」
羊皮紙自体はそこまで大きくはなく、また書いてある事も短い。だが…
「字ィ汚ぇな、オイ」
こいつの長文とか読みたくねぇわ。
それはさておき、何とか読んでみると、どうやらニケがここまで運んでくれたらしい。ちなみに道案内はマキナがしたそうで。
で。
「あ?」
最後に一言、後で話がしたいとあるが……
「よし、ニケにメッセージだ。マキナ、いいか?」
『その前に・マスターが就寝中・メッセージがありました。どうなさい・ますか』
「あ?誰から?」
『アゼロス様・ニラルケ様・不明が四種類です。総メッセージ数は・百十一件です』
「は?百十一?」
そんなにかかっていたのにマキナが起こさなかったということは、余程疲れていたらしい──じゃなくて。
慌ててベッドから降り、閉まっていたカーテンを開くと、空には月が昇っている。
だが、月の形が記憶と違う。もっと細かったはずだ。
「…おいマキナ、俺はどんだけ寝てた。んでもって今何時だ」
『睡眠時間・二十二時間十三分。現在時刻は・十二時・三十三分です』
「なる、ほど…」
ほぼ丸一日寝てたのか。そりゃあんな泥沼から起きるような独特の眠さがあった訳だ。
というか、貴重な一日を寝過ごしてしまった。ちょっとまずいな。
『マスター』
「なんだ」
『新しく・メッセージが来ました。出ますか』
「誰だ。とりあえず出る」
『ニラルケ様です』
その直後、メッセージが繋がった。
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