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本編
虫と処置
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普通に考えて、虫に寄生されたらどうしようもない。
一番手っ取り早いのは、寄生した虫も寄生された宿主も纏めて焼き殺してしまうことだろう。
実際、ニケもそれを理解していたからこそ俺に相談した面もあったはずだ。彼女は優しい。優し過ぎるのだ。
だからこそ、彼女は救おうとした。可能性が僅かでもある俺に頼った。
「いいか、絶対に誰も部屋に近づけるなよ。んでもって、俺が呼ぶまで部屋に入るな」
「わかりました!ちなみに理由をお聞きしても?」
「そいつは秘密。だが、すすんで血溜まりを見る趣味はないだろう?そういうこった」
そう言って部屋をひとつ借りた。やや手狭だが、綺麗に片付いている上にベッドまである。
「始めるか」
手足を縛った隊員三名をベッドに寝かせ、うち一人を部屋の中央にうつ伏せに寝かせる。
「第三血界……《血刃》」
ずっ、と手から出てきたのは本日二度目の登場である第三血界。きっとこれでないと失敗する。
そして嫌々ながら、緊急事態故に仕方なく、俺の髪を寝かせた隊員の口に噛ませる。所謂猿轡だ。
こうでもしておかないと絶対にうるさい。何よりうっかり舌でも噛まれたらたまらん。
「痛いぞ。歯を食いしばれ」
「──!──!!──っ!!」
そこまで来て、ようやく何をする気なのか気づいたらしい。虫が寄生して意識がないであろうに隊員が暴れようとする。
しかし、手足は既に縛ってあるし、固定もしてある。動くのは頭ぐらいだが、それも今髪で適当に押さえつけた。
「動くな。危ないだろうが」
緋眼を凝らし、異質な魔力の塊である寄生虫をじっと睨みつける。
長さは四十…五十はあるか。それがクルクルと螺旋を描き、何かにしがみつくようになっている。太さとこの長さからして、背骨に絡みついているのはほぼ間違いないだろう。
問題はそれをどう引きずり出すか。
残念ながら俺には普通の魔法は使えない。加えて、こういう時にどうするのがいいかと言う知識もない。
あるのは、何がどこにあるのか程度の人体の知識と、恐ろしく器用な手先ぐらいだ。
「大体この辺から…ここか」
手にある刃は絶対切断の概念を持つ最強の刃。加えて俺は技術ということであれば、そう並び立つ者もいない。
失敗は許されないが、出来ない訳じゃないはずだ。
「──!」
刃の先が肌に触れ、一気に切り裂いた。
第一に気にすべきことは精度だ。今後もこの人達はこの都市を守り続けていくだろう。その時に支障になってはならない。
次に気をつけるべきは時間。一人あたり十分で虫を引っ張り出したい。それ以上かかると、血が流れすぎてしまう。
「いた」
所要時間三分弱。開くだけならそこまで難しくはない。だが問題は、絡みついたこの寄生虫。
とりあえず素手で剥がそうと引いてみるが、背骨が軽く浮きそうになった。余程がっちり絡んでいるらしい。
頭を千切り、虫の活動を停止させてから引き抜く方が確実か。そう判断し、虫の頭を探すが、首のさらに上の方にあるらしい。
更にそこまで切り開き、頭をつまみ上げ──咄嗟に手を引いた。
「──こいつ」
『危ねぇな…』
凄まじい勢いで俺に噛み付いてきやがった。そこから体内に潜り込む気だったのだろうか。恐ろしい話だ。
しかし、今の交差で逆に頭を掴み返せた。そのまま頭を潰し、少しずつ解くようにして無視を剥がす。
最後に一応軽く縫って一人目終了。ここまでで約二十分かかった。
残り二人か。出来るだけ早く仕上げてやりたいな。
一番手っ取り早いのは、寄生した虫も寄生された宿主も纏めて焼き殺してしまうことだろう。
実際、ニケもそれを理解していたからこそ俺に相談した面もあったはずだ。彼女は優しい。優し過ぎるのだ。
だからこそ、彼女は救おうとした。可能性が僅かでもある俺に頼った。
「いいか、絶対に誰も部屋に近づけるなよ。んでもって、俺が呼ぶまで部屋に入るな」
「わかりました!ちなみに理由をお聞きしても?」
「そいつは秘密。だが、すすんで血溜まりを見る趣味はないだろう?そういうこった」
そう言って部屋をひとつ借りた。やや手狭だが、綺麗に片付いている上にベッドまである。
「始めるか」
手足を縛った隊員三名をベッドに寝かせ、うち一人を部屋の中央にうつ伏せに寝かせる。
「第三血界……《血刃》」
ずっ、と手から出てきたのは本日二度目の登場である第三血界。きっとこれでないと失敗する。
そして嫌々ながら、緊急事態故に仕方なく、俺の髪を寝かせた隊員の口に噛ませる。所謂猿轡だ。
こうでもしておかないと絶対にうるさい。何よりうっかり舌でも噛まれたらたまらん。
「痛いぞ。歯を食いしばれ」
「──!──!!──っ!!」
そこまで来て、ようやく何をする気なのか気づいたらしい。虫が寄生して意識がないであろうに隊員が暴れようとする。
しかし、手足は既に縛ってあるし、固定もしてある。動くのは頭ぐらいだが、それも今髪で適当に押さえつけた。
「動くな。危ないだろうが」
緋眼を凝らし、異質な魔力の塊である寄生虫をじっと睨みつける。
長さは四十…五十はあるか。それがクルクルと螺旋を描き、何かにしがみつくようになっている。太さとこの長さからして、背骨に絡みついているのはほぼ間違いないだろう。
問題はそれをどう引きずり出すか。
残念ながら俺には普通の魔法は使えない。加えて、こういう時にどうするのがいいかと言う知識もない。
あるのは、何がどこにあるのか程度の人体の知識と、恐ろしく器用な手先ぐらいだ。
「大体この辺から…ここか」
手にある刃は絶対切断の概念を持つ最強の刃。加えて俺は技術ということであれば、そう並び立つ者もいない。
失敗は許されないが、出来ない訳じゃないはずだ。
「──!」
刃の先が肌に触れ、一気に切り裂いた。
第一に気にすべきことは精度だ。今後もこの人達はこの都市を守り続けていくだろう。その時に支障になってはならない。
次に気をつけるべきは時間。一人あたり十分で虫を引っ張り出したい。それ以上かかると、血が流れすぎてしまう。
「いた」
所要時間三分弱。開くだけならそこまで難しくはない。だが問題は、絡みついたこの寄生虫。
とりあえず素手で剥がそうと引いてみるが、背骨が軽く浮きそうになった。余程がっちり絡んでいるらしい。
頭を千切り、虫の活動を停止させてから引き抜く方が確実か。そう判断し、虫の頭を探すが、首のさらに上の方にあるらしい。
更にそこまで切り開き、頭をつまみ上げ──咄嗟に手を引いた。
「──こいつ」
『危ねぇな…』
凄まじい勢いで俺に噛み付いてきやがった。そこから体内に潜り込む気だったのだろうか。恐ろしい話だ。
しかし、今の交差で逆に頭を掴み返せた。そのまま頭を潰し、少しずつ解くようにして無視を剥がす。
最後に一応軽く縫って一人目終了。ここまでで約二十分かかった。
残り二人か。出来るだけ早く仕上げてやりたいな。
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