大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

憤怒と都市長

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爆音と共に豪華な扉が砕け散る。
「なっ、何事じゃ!」
部屋の中からは男の声。覗いてみると中には二十後半ぐらいの男が。結構背が小さいから、ほぼ間違いないな。
「初めまして都市長さん。俺ん名前はレィアだ。顔は知ってるかもな。…いや、前の指名手配のビラで名前も見たか?」
コッッツ、と俺は靴音を立てて、金がかかってそうなピカピカの床を叩きながら部屋に入る。
「糞野郎の見本みてぇなテメェに一つ、用があって来た」
俺の後ろからアーネがスッ、と中に入って来た。
「儂にその態度、ふざけておるのか!?第一なんの事だ!」
あぁ、腹が立つ。
「彼女の事だ」
俺は背中に隠すようにして、髪でそっと抱えていた彼女を、目の前の男に見えるように隣に立たせる。
「なっ…!」
彼の目が見開かれる。
「この子について、何か弁解は?」
「な、なんだそのガキは!みすぼらしく、血に濡れて!汚らしい!早くお前達も出てゆけ!」
「あァん?」
ギィン!と銀剣が床に突き刺さる。
「お前が、地下に、わざわざ、特注の、牢屋を、作って、そこに、放り込んだ!ん、だ、ろ?」
一語一語、強調して喋っていく。
「彼女が!人と話せず!ほっとんど!喋れなくなるほど!ずっっっっっと!あの地獄に!お前が!閉じ込めてたんだろ!」
銀剣がもう一度床に立ち、二度目の音を鳴らす。
「ひっ!」
「彼女がどんな思いをしていたか貴様は知っているのか!?光が一切差さない闇のみの世界で!食糧も水も与えられず!ただひたすらに孤独が隣にいた!そんな終わりのなかった地獄を!あまつさえ!」
銀剣を床から引き抜き、目の前の男の所へズカズカと歩いていく。
そして零距離。胸元を掴んでデコをくっつけるほどの距離に持ってくる。
「ひぃっ!」
「彼女の母親であり、貴様の娘を身内の恥だと言い切り、炙り殺したお前が、彼女を騙して鉄の地獄に放り込んだお前が。お前が何を知っている?」
都市長の目が見開かれる。「どうしてそれを…」なんて言ってやがるが、答えは簡単。ついさっき夢で見たことを確認したら、彼女は頷いて肯定したから。
俺はそこから先を少しばかり妄想しただけだ。
教会の宗教を愛してやまない都市長サマが、未婚の娘が出かけた先で行方不明になり、数年後に子を作って帰ってきたら。
ましてやその子が、教会の教義に背くような子だったら。
──彼女の髪は真っ白で、肌はほかの人より浅黒い。ただ、目だけは人であると主張するかのように金色だった。
「たかがだからってよぉ?」
しかも、彼女の元の名前を棄てさせてまで名前を押し付けてやがった。
昔の名前は忘れてしまったらしいが、今の名前はこの糞野郎につけてもらったんだと。彼女、語ってたよ。
「彼女にシンsinなんて名前、つけさせてんじゃねぇよ…!!」
その名前がsinだってことも知らずにな…!
「黙れ!コレは魔族とヒト種との間に産まれた禁忌の子!正しく悪魔!絶対に外に出してはいかんのじゃ!」
「ほざけ」
ゴッ、と鈍い音が響く。
俺の拳が全力で目の前の汚物をぶん殴った音だ。
「子供にそんな事を言う時点でお前の方が悪魔だろうがよ」
そして。
その悪魔の手から子供を助けるのは。
──勇者の仕事だろう?
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