大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

散策と説明

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そんな訳で、二人で森の中を散策。
家を出てふらふらと俺が行く先にセラが着いてくる形だ。
「ここら辺も随分変わったな…」
激しい戦闘があったのだろう。なんとなくの地形は分かるし、そこまで大きくは変わらないが、木々が一度折れて生え直したのか、雰囲気がガラリと変わっている。
とりあえず、軽く家からどの辺がどうなっているかを把握したくて来たのだが、思った以上に形が変わっているらしいのは間違いなさそうだ。
俺の記憶だともっと開けてたんだがなぁ…
「…ねぇ先輩。先輩ってこの森で育ったんですよね?その時から三人でこの森で暮らしてたんですか?」
「んー?いや、三人じゃ──ん。うん、三人だ。三人で暮らしてた」
「なんですかその反応」
「なんでもない。三人で暮らしてた。それがどうかしたか?」
うっかり三人じゃなくて二人だ、と言おうとした。危ねぇ。そんな話をしたらこんがらがるに決まってる。
「なんでこんな所にたった三人で住んでるのかなぁ、と思いまして」
「あぁー…んー……」
どう説明するよ。
少し考えた末に、俺は即興で作った多少の嘘を混ぜて話す事にした。
「昔はここらに村があってな。今はもうないんだが、俺たちはそこの生き残りだ」
「こんな所に村が…?」
「そ。まぁ、なんだ、この森ってか土地が、どうも聖女の結界と相性が悪いらしくてな。結構な頻度で突破されるんだが──っと?」
………ふむ。
進路方向をちょいと変更し、そのまま進み続ける。
「あー、えっと、突破されるんだが、それを食い止めてたのが俺達だったって訳だな」
「なるほど…」
「それも残ったのはヤツキと俺ぐらいか。後は全員木の養分になっちまった」
「あっ…」
「まぁ変に気にすんなよ。そういう所があったと覚えといてくれりゃいい」
なんなら今すぐ忘れてくれてもいい。結構適当についた嘘も交じってるし。
「ところでセラ、お前ここに来て何と戦った?」
「え?そうですね……一部ちょっと名前わかんないんですけど、大体でいいですか?」
「まぁ構わんが…お前魔獣学何点?」
「点数は言えません。あんまり良くないとだけ」
なるほど。まぁ、この森に来る魔獣だから、中々レアな奴もいるのだが。
「えっと、火車とメドゥーサ、あとはグリフォンとなんかでっかいライオンみたいなやつですね」
「有名どころばっかじゃねぇか。ライオンのたてがみは何色だ?あと、見た目は完全にライオンか?」
「金色でそのまんまデッカイライオンです」
「ネメアリオンじゃねぇかな。どの道有名どころだが。っつーかよく生き残ってんな」
木で囲まれた森の中では火を纏う火車は恐怖でしかないし、メドゥーサは目を合わせた時点でほぼアウト、巨大な体躯で空を飛ぶグリフォンはそれだけで脅威だし、ネメアリオンにいたってはそもそも武器が通用しない。
昨日、全く魔獣を倒せなかったと聞いたので、恐らくヤツキがどうにかしたのだろうが、一体どうしたのか。
「ま、だいたい分かった。なら任せても大丈夫そうだな」
「はい?何の話で──」
そこまで言って、セラもようやく気づいたらしい。
木々が折れ爆ぜながらなぎ倒され、奥から何かが無理矢理進んで来ている事に。
「数は三、か…一体任せる。いくぞ!」
「っ、はい!」
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