大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

確認と解剖

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さて翌日。
本当なら今日の昼にでもここを発つつもりだったが、予定が変わった。もう一日二日程度はここにいることを覚悟しなくてはならないようだ。
というのも、ヤツキに俺が聞きたい話を全く聞けていないからだ。
予定ではセラがいなかったので、適当に顔を合わせたタイミングでちょくちょく聞いたりするつもりだったのだが…まぁ、いるものは仕方がない。
シャルに聞けって?聞けたら苦労はない。
今の奴は勇者時代のシャルレーゼとしての記憶の多くが消え、ナナキとしての記憶を多く持っている。その消えた記憶の中に、魔王についての記憶があったようで、どうにも本人に聞いても歯切れが悪い。
だがヤツキなら。
ホムンクルスである彼女なら、記憶ではなく記録として勇者時代の記憶を保存していてもおかしくない。むしろ、魔王との戦闘記録など最高峰に重要なデータだろう。今はシエルの中で目覚めかけている魔王をどうにかするため、その情報が最優先で欲しい。
「まぁ、そんなことは今は置いといて、だな」
ゴーグルとマスクと手袋、そして汚れてもいいボロ切れを縫い合わせたエプロンを身につけ、細身で黒剣並に鋭い特別な刃物の切れ味を少し確認…よし。その他様々な器具を用意し、準備完了。
何をしているのかと言うと、昨日地下に放置した死体の解剖作業、その準備だ。
ヤツキは俺に解体を任せて見回り。セラは実力向上のためにヤツキについていった。ヤツキの傷は既にほぼ完治しており、本人曰く「昼頃には治る」とこのこと。凄まじい回復力だこと。
しかし、生まれてから十年以上この森で戦ってきて、ヒトガタの魔獣は数多く居た。しかし、こんな見た目の魔獣は見たことがない。
そして、何故か知らんが経験則的に、ヒトガタの魔獣程厄介なものが多い。今は少しでも情報が欲しいので、このクソ汚い地下室を少し片付けて調べることにしたのだ。
「まずは重量から…えーっと」
天井から吊るした縄に死体を結び、もう片方の縄の端にマキナを結ぶ。
自重を自由に変えられるマキナを利用して、この簡易天秤が釣り合うように重さを調整していく。
「…ん?」
はて、今の音は上から…?もしかして天井が若干軋んだか?まさか。
「釣り合ったか、マキナ、何キロだ」
『百二キロです』
「…随分と重いな」
とはいえ、ありえない数字ではないか。そもそもこんな雑な作りなんだから、多少は間違っているかもしれない。
「身長百六十九…いやめんどくせぇ、百七十。太ってもないっつーかむしろ細いなこれ。しかし見た感じやっぱ外傷ないし、あのサナギが全部ダメージ打ち消したのか?」
『そういや生殖器もないな。股の所がツルツルだ』
「一応前後に穴はあるから排泄は出来るのか?それとも尻の方の穴が生殖の穴か?いや、言ってても答えは出ん。とりあえず身体開くか」
縄を解いてベッドに寝かせる。さて、頑張って調べますか。
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