大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

友人と確認

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翌日、俺が目覚めたと聞いて、ユーリアがすっ飛んで来た。
「君が何かしているとは知っていたが、まさか瀕死になって帰ってくるとは思いもしていなかったぞ!」
と言いつつ、特段心配しているような口ぶりではない。どちらかと言うと、バカやった友人をドヤしている感じだ。
「…ん?帰ってくる?担ぎ込まれたとかじゃなくて?」
「え?自分の足で歩いてきていただろう?鎧まで纏って」
「…あー、おー、なるほどぉ?そうだな」
最後のタイミングでマキナに血がかかったのだろうか。別にあれだけ派手にやっていれば何らおかしくは無いか。
「しかし俺の治療が出来たって事はアーネが居た訳だろ?どうやって連れてきた?」
「あぁそれか。君は『アーネ・ケイナズを頼む』とだけ言って倒れたものな。ほら、この前リューズニルに行った時にいた兵士を覚えているか?瞬間移動の。彼にお願いして、ゼランバまで飛んで行ってもらった」
なるほど。彼なら容易にアーネを連れてくることが出来るだろう。しかしマキナ、ナイス判断だ。
「で、アーネはすぐ帰ったのか」
「何でも、ゼランバの方でやらなくてはならない事があるらしくてな。君の治療を終え次第、すぐにまたゼランバに戻ったよ」
その辺の事情も多分書いてあったんだろうなぁ…書いた部分を入れ忘れてるけど。
「ふーん…そういや、聖女サマってあれ以降来たのか?」
「いや、来てない。何かあったか?」
「いや何も?」
なるほどなぁ。大体分かった。
「ところでレィア、少し聞きたいのだが、身体の調子は…?」
「生活する分にゃ問題はねぇな。ただ、しばらく激しい運動は禁物だ。肺は繋がってるが鎖骨がまだ少し、って感じだ」
安心しろという意味を込めて笑って言うが、ユーリアは顔を顰めて聞いてきた。
「…鎖骨と肺をやられて、しかも生きて帰ってくるなんて相当だぞ…?誰にやられた?」
「そいつは悪いが言えねぇなぁ」
「とはいえ、何とか生きて帰ってこれたという事は、その相手も捕まったんだろう。ありがとうレィア」
「お前は俺が正しい事をしたって疑いもしねぇんだな」
そう言うと、ユーリアは大真面目な顔で「間違ったことをしたと確信を持って言うのか?」と聞いてきた。それを笑って流し、
「あぁそうだ、一個訂正だ。そいつは別に捕まってねぇ」
「………とすると、もしかして殺…」
「んにゃ、殺せてもねぇなぁありゃ。多分大した怪我もしてねぇ。足折れたぐらいか。騒ぎから逃げただけだろうな、あいつも」
瀕死の俺にトドメを刺し、それを見られてヒトに捕まる可能性。
瀕死の俺を放置し、その場から逃げ、やがて俺が死ぬに任せる。
天秤にかけて後者を選んだ訳だ。
《勇者》の本質はヒトの味方。俺を殺した罪で捕らえられた場合、余程のことが無ければ手を上げる事すら出来ないだろう。
「ま、それでもしばらくは大人しくするだろうさ。多分」
「多分って…本当に大丈夫なのか?」
「普通なら無害だしな。俺と敵対してるってだけで」
「どういう関係なんだそれ…」
「どういう関係…?うーん…」
言われて考える。
「そもそも初対面だし、名前も知らんしなぁ…」
「それでそんな深手を負うような事になるのか…?」
「強いて言うなら…兄妹?が一番近いか」
「兄妹が一番近い…?君にはそう言う縁者はいなかったと記憶しているが…厳密に言うと?」
「血を分けた存在?」
「兄妹じゃないか」
「産みの親が違うんだがな」
「腹違いか。なるほど拗れる訳だ」
…ふむ、どうもこれ以上言っても話がこんがらがるだけのようだ。
『お前分かってやってるだろ。情報そのものはかなりスレスレだから気をつけろよ』
おっと、シャルに釘を刺されてしまった。
「あ、そうだユーリア」
「何だレィア」
「俺、明日か明後日あたりにここ出るわ。例の件よろしく」
そろそろ、この家から出るかな。
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