大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

雑談と散策

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「非常にくだらなくてどうでもいいし、お前に話してもどうしようもないってことは分かるんだが、暇つぶしに聞いてくれ」
『俺も暇だし聞いてやる。なんだ?』
ベルの小屋から追い出され、そう言えばあそこはどうなったのだろうと、ふらふらと街の外れにまで出向くことにした。
特に急ぐ理由もないので、知らない道を適当に歩いたりしながら、シャルに向かって話しかける。
「デートってなんだ?」
『うん?そりゃお前…仲のいい男女がさらに親睦を深めるために色んなところに行く事じゃないか?』
「あーいや、そうじゃなくて。定義がよく分からん」
『定義って…』
「いやほら、俺がヒトとこんなに関わりを持つようになったのってまだ一年ちょっとだし…」
『あぁ、そういう?まぁ環境的に分からんのも理解できるが…』
ん、ここら辺だったっけ。もうちょい行ったところだっけ。
如何せん、一年前の朧気な記憶を頼りに歩いているものだから、大雑把にしか分からない。
とはいえそれなりに目立つ建物のはずなのだが…はて。
「俺とユーリアがこの前、王都で演劇見たりしたけど、あれはデートに含まれるのか?」
『含まれ…るんじゃないか?』
「ならベルはそういう意味で言ったのか?」
『いや、あれは間違いなくもっと深い意味のデートだろ。ガチの方だ』
「ガチの方って何だよ」
『要は恋する乙女って奴だな』
「…ベルが?」
『アイツだって女だろうよ』
生物学上は女だろうが、ほとんど男みたいなもんだと思うが…口には出さんが。
「じゃあ逆説的に、俺とユーリアのアレは別にデートじゃないんじゃないか?」
そう言うと、シャルは『うーん』と唸る。
『ぶっちゃけ、そういうのって当人達が言っちまったもん勝ちみたいな所あるしな。他人との関係はどっちかってーと逆だが。口に出して「お前今日から俺の友達な」って言ったりしないだろ?』
「そりゃそうだが」
『あぁでも、よく考えりゃ恋人とかはまた別か。ありゃ合意の上に成り立つもんだし。ま、要は言ったもん勝ちだ。で、それがどうかしたのか』
「いや、深い意味は無いんだが。強いて言うなら、他のヒトが好きって言う状況…状態か?が、よく分からんくってな」
『《勇者》の弊害…と言えば弊害だな。元々生殖する相手がいない関係上、恋愛とかそっち方面に関心が薄い。色々教えてくれる《亡霊》も当然ほぼ無いだろうな』
「ほぼってのは?」
『根っこが真似られて作ってあるんだ。そりゃ当然、間違いはゼロじゃない。というか、それなりにいたらしいな』
「ちなみにお前の場合は?」
『ほぼ無い理由は誰も喋りたがらねぇからだよ。俺も当然そっち側だ。あっても言わねぇ』
「そーかい…ん?」
はて、ここは確か…さっき来たな。
多分ここら辺だったはずなんだが見当たらん。
「うーん?」
首を傾げていると、マキナが俺を呼んだ。
「あ?なんかあったか?」
『アーネ様がお呼びです』
「…なんか俺したっけ?」
『知らね』
とりあえずメッセージに出ると、開幕怒鳴られた。まぁいつもの事か。
「あーうん、悪い。今?ちょっと街の外れの方に…で、なんかあったのか?……あぁ。なるほど。別に構わんが。いつ行く?…わかった」
そう言って切ると、どうしたとシャルが聞いてくる。
「デートのお誘いだ」
肩を竦めてそう言うと、シャルが茶化すように口笛を吹いた。
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