大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

夢の世界と記憶の傷

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ぐにゃぐにゃと曲がりくねる黒と白の世界。
音はなく、視覚と触覚しか今は役に立たない。
──いや、それすらも役に立たない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
気持ち悪い!ひたッすら気持ち悪い!!
こう、頭の中がぐっちゃくちゃにかき混ぜられ、三半規管が異常を訴える。
目が捉えた物はあやふや、今さっきまで床だったモノは既に天井になり、溶けて消えていく。
目が捉えたものだけではなく、手で触れたものですら触っていながらにして触っていないという謎の感覚。それが全身を這い回るようにしてピッタリと絶え間なく続く。
そんな世界に放り込まれ、足元すら覚束無い。
が、それらが全て急に途絶える。
「おおおおおおおおおおおおおおおお…お、お…お?」
床に足がつき、身体中を這い回っていた不快感は全て綺麗に消える。
「…なんだここ?」
身体のあちこちに異変がないか確認しながら周りも見渡す。異変は…例の変な文字を身体に書かれたまんまってことぐらいか。
辺り一面、乳白色…とでも言うのだろうか?やや濁った白の世界だった。
それが果てしなく広がっている。
「ここが…夢の世界ねぇ…」
なんとも夢がない世界だが。
今更だが、今回使ってもらった特級魔法を説明しよう。
今回使ったのは、《夢の中の不思議な世界ドリームワンダーランド》とか言う魔法。
内容は、『術者が対象者の夢の中に入る魔法』となる。
この魔法、本来は対象者のトラウマ解消、失った記憶の発掘など、記憶の改竄関連に使う魔法らしい。
え、何それ、それじゃあ腐屍者に近づけないじゃん!って思うだろ?
正直、これ以上魔法使い達、アーネサイドに無理言っても失敗する可能性が高過ぎたから辞めたのもあるが、この魔法でも腐屍者に近づけると──接触できると判断したため。
腐屍者は恐らく、何らかの方法でリーザにマーキングをしているはずだ。
そしてそれは、背中に受けた外傷が由来でありながら、その外傷が理由ではないと判断がつく。
理由は単純に、既に治った怪我からどうやってマーキングを付けろという話。
それに、そんな外傷のわかりやすいマーキングとかなら、他の魔法使いが気付くだろうってのがシャルの見解。
なら、どこにマーキングをしたのか。
俺達の予想は記憶。
怪我をしたという記憶そのものがマーキングになっているという予想。
そして、そこへ手を出せば確実に敵は釣れる。
──さて。
どうすればいいかよく分からんが、記憶を漁り始めるとするか。
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