大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

話とルール

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その翌日。俺はこっそり学校長の所に出向き、アーネが出たら少し良くしてやって欲しいと軽く言ってきた。
「あなたがそういう手段に出るとは思っていませんでしたが…まぁいいでしょう。それに元々、彼女にはこちらから声をかけるつもりでしたから」
まぁたしかに、アーネは元からこの聖学の中で一、二を争う魔法使いキャスターだったし、魔力も多いし観客から見て派手。さらに本人の見た目も良いとくれば、むしろ学校側から声がかかってもおかしくはないか。
「そうか、んじゃま、頼んだぜ」
「えぇ、そのぐらいは構いませんよ。ところでひとつ忠告です」
「あ?何だってんだ」
部屋から出ていこうとする俺に、学校がそう声をかけた。
「現在ルールの細部を詰めているところなのですが、現時点のルールだと、魔導具の使用が禁止されるかもしれません。気をつけてください」
「魔導具ぅ?俺ァそんなモン持ってないが?」
「何を言うんですか。あなたの持つ武器も防具も、それに、見る人が見れば今着ているコートも。全てが魔導具じゃないですか」
と言われて「うん?」と小首を傾げる。
言われりゃ確かに、どれも魔法の力を帯びている。黒コートに関してはほぼ能力が死んでるが、それでも元は相当な魔導具だったはずだ。いや、もしかしたら魔力を通せば…あぁでも、確か最初の燃費が異様に悪いんだっけか。
「ん?て事はもしかして他の奴らもただの鉄の剣とかで戦うのか?」
「まだルールを詰めているところですから断言は出来ませんが、武器などはこちら側が公平にするため用意するかもしれません」
「へぇ、なるほどね。でもそれって戦技アーツ出なくならない?あと、見た目が地味になりそうなんだけど」
特に剣士同士の戦いだ。知ってる側からすれば面白い点も多いのだが、先にアーネのような魔法使いの派手な戦いを見たあとでは正直迫力に欠ける。
それに、使い慣れない武器は戦技アーツの不発を招く。例を挙げるなら、俺の前の《音狩り》が黒剣のような軽い双剣でなければ出なかったりという話と同じだ。
だが、普通を逸脱した魔法の道具があれば、ただ剣が打ち合うだけの地味な戦いの中で明確に栄える場面が生まれるだろう。
「その辺が難点でもあります。最終的には申請すれば、一人につきひとつ程魔導具を使用出来るようになると思われますが…」
それでも俺の場合は金剣銀剣で二種類、マキナでひとつ、コートでひとつで計四つ判定。当然アウトだ。
コートは脱げばいいから問題ないとしても、普通に普段通りに武器を使うとアウトか。こちらの理由で金剣銀剣は使えないのだから、選ぶならマキナだろうか。
「普通なら魔導具にあたる武器や防具は個人の生徒では一つあればいい方、二つは過剰なぐらいなのですが…」
「まぁ、能力がショボいから装備で補ってるようなモンだしな。否定はしないし文句も言わんさ」
しかしそうか…
「武器の持ち込みは可なんだろ?」
「現状は。今日中に色々と終える予定です」
そういや生徒全体への聖学祭の連絡もまだか。ルールが確定してから出すつもりだろうが大丈夫なのだろうか。
「ん…?」
メッセージが来たらしく、マキナがクイクイと学校長に見えない角度から俺の服を引っ張っている。
「邪魔して悪かったな。こっちもルールに引っかからないようどうにかしとくわ」
「お願いしますよ《緋眼騎士》」
そう言って今度こそ学長室を出る。
「繋げ」
誰かは知らんが。そう思いながらマキナを耳に当てると、聞こえてきたのは元気そうなユーリアの声。
『やぁレィア、おはよう。早速で悪いが暇だろう?少し手合わせを願いたいんだが。いや、そうでなくてもアドバイスを貰いたいんだ』
またか。いやまぁ、ユーリアも選ばれて張り切ってんだろうし、顔を出さねばなるまい。
「分かった。どこにいるんだ?」
『第一訓練所だ。今ちょうど皆揃ってるから、レィアも来たらいい』
「あ?皆?」
そう聞き返したが、既にメッセージは切れている。まぁ、かけ直すほどのことではないか。
アーネもいるんだろうか。と思いつつ、そちらの方へと向かう。
さて、武器どうすっかなぁ…
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