大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
1,651 / 2,021
本編

緋眼と剣姫 終

しおりを挟む
間に突立つ剣を斬り砕きながら進む。
何十本の刃を、柄を粉砕し、その刃は《剣姫》へ届く。
しかし、突如死角から突っ込んできた俺に対して何も反応できない《剣姫》では無い。予測していたのか、あるいはそれを誘ったのか。手には短剣と周りには二本ほどの長剣。
戦技アーツの挙動中のため、俺は回避出来ないが、相手の剣が俺に届くより先に、俺の剣が相手に届く方が先だ。
「取った」
左右に振り抜いた剣。
そして、それに割り込まれた小さな短剣。
直後、ガギィィン!!と壮絶な音がして俺の持っている剣が折れた。
「ッッッ!?」
思わず目を見開く。《剣姫》の作る剣はどれも大した耐久力はないはず。いくらユーリアの剣も脆いとはいえ、これまで問題は無かった。
「貴方、剣というものが分かってませんね」
「っぐ!?」
戦技アーツの反動。それも剣が途中で折れたことにより、戦技アーツそのものが失敗したという判定が下され、いつもより強烈な硬直が発生する。
この状態から戦技アーツを繋げることはもちろん、回避も不可能。咄嗟にマキナが自動反応して《剣姫》に攻撃を仕掛けようとするが、その瞬間に薄くなった装甲部分に剣を当てられた。
不味い。これでは──
そしてそのまま、《剣姫》は長剣をトン、と俺の肩に乗せて「私の勝ちですね」と言った。
戦技アーツの硬直が消え、身体が自由になったと同時に溜め息をつく。
「ダメだったか…もっと早く戦技アーツを切るべきだったか。つかユーリア、やっぱ結構脆いじゃねぇか」
そう文句を言うと、ユーリアが壁から降りてそれを否定する。
「いやいやいやいや。今回ばかりはレィア、君の剣の扱いが悪いと言わざるを得ないぞ。何本彼女の剣を砕いた?多少なら耐えられるが、十本二十本と砕いて耐えられるような剣の方が稀だぞ。寧ろそこまで良くもった方だと褒めるべきろう」
「あ?」
どうするか迷ったが、とりあえず折れた柄を返却すると、顔を顰められた。
「完全に根元から逝ったな…スペアが丁度二本だから、また父に頼まなくてはな…」
「あー…悪い。今度詫びに何かするわ」
「いや、いい。どうせこうなりかねないと薄々勘づいてはいたし」
今思えば、俺が握る銀剣等はロクな手入れをしたことが無い。精々が血や脂と言った汚れを拭き取る程度のことしかしていない。折れた事も無いし、どれだけ雑に扱っても傷がついた事も数えるぐらいしかない。もちろん今の黒剣は例外としてだが。
…ふむ、もしかしたら変な話、俺の戦い方は剣に相当悪いのかもしれない。
「…そうだ、なぁルーシェ、お前のスキルで剣って作れないのか?さっきの短剣、明らかに手応えが他のより硬かったが」
「んー…あれはねぇ…ちょっとだけぇ…特殊な短剣だからぁ…無理かなぁ…それにぃ…《ザ・セイバー》のぉ…発動中しかぁ…作った剣はぁ…使えないしぃ…」
「何、どうせ近いうちに王都へ行くんだ。その時に回収するさ。ところで《剣姫》はこのまま連戦でも構わないか?」
「うーんとねぇ…」
さて、となると俺は俺で剣が壊れないような扱い方を学ばなくてはならないのか。うーむ…
しおりを挟む

処理中です...