520 / 2,040
本編
肉塊と勇者
しおりを挟む
どちゃり、どちゃどちゃ、ぐちゃり、どちゃっ。
そんな音を立てて空間の割れ目から次々落ちて来る。
「ふむ、まぁこれでいいでしょう」
その数──十二。
「行きなさい。私は──ふむ、どうせ時間がありますから、見ていきますか」
神父がそう言うと、十二の肉塊が同時に俺へと殺到する。
「おあわ、おぉ「おぉああああ!お「お、お、ぉあああああぁあぁあぁあぁ!!、「ああお、あ、おああぉあ!「おぉおおおあぁ、あああああああああぁ、あぉあぉあぉ!!「おおおおお、──
「気持ち悪ッ!!」
真っ正面から突っ込んで来るそれらに対し、その先頭にいる個体の額にあたる部分に銀剣を叩き込む。
予想したのは、手が痺れるような強烈な衝撃。
しかし、手に伝わったのは、柔い肉──いや、水の入った皮袋を叩いたような感触。
「なんっ──」
だと、と驚くより先に殴られた。
左の脇腹を塗りつぶすような、強過ぎる一撃はわずか一撃で俺の肋骨を半分以上へし折り、軽い身体を吹き飛ばす。
「──がッ!!」
『レィア!!』
風切り音が聞こえる。
凄まじい勢いで吹き飛ばされている証拠だ。
銀剣の先を地面に突き立て、さらに髪も地面に突き立て、ガリガリと地面を削ってもなお止まらず、ようやく止まった頃には地面に巨大な三本爪が十メートル近く付けられていた。
息を吐き、顔を上に上げると、肉塊が醜く這いつくばりながら、どちゃどちゃ、ぐちゃぐちゃと音を立てながらこちらに猛然と走ってくる。
しかし、距離が空きすぎたらしく、まだ暫くかかりそうだ。
「ガハ、がふっ!!」
気道に違和感があり、むせると口からは赤いものが混じった咳が出、同時に鋭い痛みが左の胸から走る。
肋骨が肺に突き刺さり、穴が空いたらしい。
『馬鹿!穴が空いたらしい、じゃねぇよ!!そんな身体で戦えんのかよ!?』
無理。
「けどな──」
スキルで肋骨を形だけ元の位置に戻し、髪の毛を二本ばかり飲み込む。
表現し難い異物感が気道から肺に抜け、一つは穴を通り、肋骨を縛って固定し、一つは肺に空いた穴を強引に縫う。
「俺がやらなきゃ誰がやるよ。アーネか?聖女サマか?エルストイか?」
もう一度咳き込み、血を吐き出す。
反射的にやった手のひらには、べったりと血がついていた。
「違ぇだろ。俺しかいねぇだろよ。たとえ──」
強く握り締めた銀剣の力を、より一層強く引き出しながら。
一歩踏み出す。
目の前には、例の肉塊。
「骨を砕かれようと──」
すれ違いざまに一撃。
今度こそあった手応えは、身体に響く程に強力な手応え。
それを受けた肉塊は、逆に吹きとばされる。
しかし、突っ込んできた肉塊どもはまだまだいる。
「肺に穴ァ空けられようと──」
それら全てにカウンタ気味の一撃をぶち込み、ぶっ飛ばす。
何度も、何度も、何度でも。
「血反吐吐こうとも──」
歯を、食いしばる。
肉塊の波は一度引いた。
まるで、一度も引かない俺に恐れをなしたかのように。
「進んで、進んで、進んで。その先にあるのがたとえ、屍の山でも進む。それが《勇者》なんだろ?なら、今日ばかりはそんなのに乗ってやるよ」
そんな音を立てて空間の割れ目から次々落ちて来る。
「ふむ、まぁこれでいいでしょう」
その数──十二。
「行きなさい。私は──ふむ、どうせ時間がありますから、見ていきますか」
神父がそう言うと、十二の肉塊が同時に俺へと殺到する。
「おあわ、おぉ「おぉああああ!お「お、お、ぉあああああぁあぁあぁあぁ!!、「ああお、あ、おああぉあ!「おぉおおおあぁ、あああああああああぁ、あぉあぉあぉ!!「おおおおお、──
「気持ち悪ッ!!」
真っ正面から突っ込んで来るそれらに対し、その先頭にいる個体の額にあたる部分に銀剣を叩き込む。
予想したのは、手が痺れるような強烈な衝撃。
しかし、手に伝わったのは、柔い肉──いや、水の入った皮袋を叩いたような感触。
「なんっ──」
だと、と驚くより先に殴られた。
左の脇腹を塗りつぶすような、強過ぎる一撃はわずか一撃で俺の肋骨を半分以上へし折り、軽い身体を吹き飛ばす。
「──がッ!!」
『レィア!!』
風切り音が聞こえる。
凄まじい勢いで吹き飛ばされている証拠だ。
銀剣の先を地面に突き立て、さらに髪も地面に突き立て、ガリガリと地面を削ってもなお止まらず、ようやく止まった頃には地面に巨大な三本爪が十メートル近く付けられていた。
息を吐き、顔を上に上げると、肉塊が醜く這いつくばりながら、どちゃどちゃ、ぐちゃぐちゃと音を立てながらこちらに猛然と走ってくる。
しかし、距離が空きすぎたらしく、まだ暫くかかりそうだ。
「ガハ、がふっ!!」
気道に違和感があり、むせると口からは赤いものが混じった咳が出、同時に鋭い痛みが左の胸から走る。
肋骨が肺に突き刺さり、穴が空いたらしい。
『馬鹿!穴が空いたらしい、じゃねぇよ!!そんな身体で戦えんのかよ!?』
無理。
「けどな──」
スキルで肋骨を形だけ元の位置に戻し、髪の毛を二本ばかり飲み込む。
表現し難い異物感が気道から肺に抜け、一つは穴を通り、肋骨を縛って固定し、一つは肺に空いた穴を強引に縫う。
「俺がやらなきゃ誰がやるよ。アーネか?聖女サマか?エルストイか?」
もう一度咳き込み、血を吐き出す。
反射的にやった手のひらには、べったりと血がついていた。
「違ぇだろ。俺しかいねぇだろよ。たとえ──」
強く握り締めた銀剣の力を、より一層強く引き出しながら。
一歩踏み出す。
目の前には、例の肉塊。
「骨を砕かれようと──」
すれ違いざまに一撃。
今度こそあった手応えは、身体に響く程に強力な手応え。
それを受けた肉塊は、逆に吹きとばされる。
しかし、突っ込んできた肉塊どもはまだまだいる。
「肺に穴ァ空けられようと──」
それら全てにカウンタ気味の一撃をぶち込み、ぶっ飛ばす。
何度も、何度も、何度でも。
「血反吐吐こうとも──」
歯を、食いしばる。
肉塊の波は一度引いた。
まるで、一度も引かない俺に恐れをなしたかのように。
「進んで、進んで、進んで。その先にあるのがたとえ、屍の山でも進む。それが《勇者》なんだろ?なら、今日ばかりはそんなのに乗ってやるよ」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる