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本編
肉塊と勇者
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どちゃり、どちゃどちゃ、ぐちゃり、どちゃっ。
そんな音を立てて空間の割れ目から次々落ちて来る。
「ふむ、まぁこれでいいでしょう」
その数──十二。
「行きなさい。私は──ふむ、どうせ時間がありますから、見ていきますか」
神父がそう言うと、十二の肉塊が同時に俺へと殺到する。
「おあわ、おぉ「おぉああああ!お「お、お、ぉあああああぁあぁあぁあぁ!!、「ああお、あ、おああぉあ!「おぉおおおあぁ、あああああああああぁ、あぉあぉあぉ!!「おおおおお、──
「気持ち悪ッ!!」
真っ正面から突っ込んで来るそれらに対し、その先頭にいる個体の額にあたる部分に銀剣を叩き込む。
予想したのは、手が痺れるような強烈な衝撃。
しかし、手に伝わったのは、柔い肉──いや、水の入った皮袋を叩いたような感触。
「なんっ──」
だと、と驚くより先に殴られた。
左の脇腹を塗りつぶすような、強過ぎる一撃はわずか一撃で俺の肋骨を半分以上へし折り、軽い身体を吹き飛ばす。
「──がッ!!」
『レィア!!』
風切り音が聞こえる。
凄まじい勢いで吹き飛ばされている証拠だ。
銀剣の先を地面に突き立て、さらに髪も地面に突き立て、ガリガリと地面を削ってもなお止まらず、ようやく止まった頃には地面に巨大な三本爪が十メートル近く付けられていた。
息を吐き、顔を上に上げると、肉塊が醜く這いつくばりながら、どちゃどちゃ、ぐちゃぐちゃと音を立てながらこちらに猛然と走ってくる。
しかし、距離が空きすぎたらしく、まだ暫くかかりそうだ。
「ガハ、がふっ!!」
気道に違和感があり、むせると口からは赤いものが混じった咳が出、同時に鋭い痛みが左の胸から走る。
肋骨が肺に突き刺さり、穴が空いたらしい。
『馬鹿!穴が空いたらしい、じゃねぇよ!!そんな身体で戦えんのかよ!?』
無理。
「けどな──」
スキルで肋骨を形だけ元の位置に戻し、髪の毛を二本ばかり飲み込む。
表現し難い異物感が気道から肺に抜け、一つは穴を通り、肋骨を縛って固定し、一つは肺に空いた穴を強引に縫う。
「俺がやらなきゃ誰がやるよ。アーネか?聖女サマか?エルストイか?」
もう一度咳き込み、血を吐き出す。
反射的にやった手のひらには、べったりと血がついていた。
「違ぇだろ。俺しかいねぇだろよ。たとえ──」
強く握り締めた銀剣の力を、より一層強く引き出しながら。
一歩踏み出す。
目の前には、例の肉塊。
「骨を砕かれようと──」
すれ違いざまに一撃。
今度こそあった手応えは、身体に響く程に強力な手応え。
それを受けた肉塊は、逆に吹きとばされる。
しかし、突っ込んできた肉塊どもはまだまだいる。
「肺に穴ァ空けられようと──」
それら全てにカウンタ気味の一撃をぶち込み、ぶっ飛ばす。
何度も、何度も、何度でも。
「血反吐吐こうとも──」
歯を、食いしばる。
肉塊の波は一度引いた。
まるで、一度も引かない俺に恐れをなしたかのように。
「進んで、進んで、進んで。その先にあるのがたとえ、屍の山でも進む。それが《勇者》なんだろ?なら、今日ばかりはそんなのに乗ってやるよ」
そんな音を立てて空間の割れ目から次々落ちて来る。
「ふむ、まぁこれでいいでしょう」
その数──十二。
「行きなさい。私は──ふむ、どうせ時間がありますから、見ていきますか」
神父がそう言うと、十二の肉塊が同時に俺へと殺到する。
「おあわ、おぉ「おぉああああ!お「お、お、ぉあああああぁあぁあぁあぁ!!、「ああお、あ、おああぉあ!「おぉおおおあぁ、あああああああああぁ、あぉあぉあぉ!!「おおおおお、──
「気持ち悪ッ!!」
真っ正面から突っ込んで来るそれらに対し、その先頭にいる個体の額にあたる部分に銀剣を叩き込む。
予想したのは、手が痺れるような強烈な衝撃。
しかし、手に伝わったのは、柔い肉──いや、水の入った皮袋を叩いたような感触。
「なんっ──」
だと、と驚くより先に殴られた。
左の脇腹を塗りつぶすような、強過ぎる一撃はわずか一撃で俺の肋骨を半分以上へし折り、軽い身体を吹き飛ばす。
「──がッ!!」
『レィア!!』
風切り音が聞こえる。
凄まじい勢いで吹き飛ばされている証拠だ。
銀剣の先を地面に突き立て、さらに髪も地面に突き立て、ガリガリと地面を削ってもなお止まらず、ようやく止まった頃には地面に巨大な三本爪が十メートル近く付けられていた。
息を吐き、顔を上に上げると、肉塊が醜く這いつくばりながら、どちゃどちゃ、ぐちゃぐちゃと音を立てながらこちらに猛然と走ってくる。
しかし、距離が空きすぎたらしく、まだ暫くかかりそうだ。
「ガハ、がふっ!!」
気道に違和感があり、むせると口からは赤いものが混じった咳が出、同時に鋭い痛みが左の胸から走る。
肋骨が肺に突き刺さり、穴が空いたらしい。
『馬鹿!穴が空いたらしい、じゃねぇよ!!そんな身体で戦えんのかよ!?』
無理。
「けどな──」
スキルで肋骨を形だけ元の位置に戻し、髪の毛を二本ばかり飲み込む。
表現し難い異物感が気道から肺に抜け、一つは穴を通り、肋骨を縛って固定し、一つは肺に空いた穴を強引に縫う。
「俺がやらなきゃ誰がやるよ。アーネか?聖女サマか?エルストイか?」
もう一度咳き込み、血を吐き出す。
反射的にやった手のひらには、べったりと血がついていた。
「違ぇだろ。俺しかいねぇだろよ。たとえ──」
強く握り締めた銀剣の力を、より一層強く引き出しながら。
一歩踏み出す。
目の前には、例の肉塊。
「骨を砕かれようと──」
すれ違いざまに一撃。
今度こそあった手応えは、身体に響く程に強力な手応え。
それを受けた肉塊は、逆に吹きとばされる。
しかし、突っ込んできた肉塊どもはまだまだいる。
「肺に穴ァ空けられようと──」
それら全てにカウンタ気味の一撃をぶち込み、ぶっ飛ばす。
何度も、何度も、何度でも。
「血反吐吐こうとも──」
歯を、食いしばる。
肉塊の波は一度引いた。
まるで、一度も引かない俺に恐れをなしたかのように。
「進んで、進んで、進んで。その先にあるのがたとえ、屍の山でも進む。それが《勇者》なんだろ?なら、今日ばかりはそんなのに乗ってやるよ」
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