大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

聖女と確認

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少しショックを受けたが、まぁそれは仕方ない。
諦めの境地に片脚突っ込んでるから。
「まぁいい。んで、聖女サマはどこに?」
「い、いいんですの?いつもなら拳握り締めて殴り込みにいくとおもったのですけれど…」
「流石に聖女サマを殴るわけにゃいかんだろ」
が、いずれ何らかの方法で仕返しはするつもりだ。
「聖女様は今、自分のお部屋で朝のお祈り中ですわ。多分、今の音を聞いてすぐに来ると思いますれど…」
「………おかあさん」
「ん?……あぁ、来たか」
「はい?何がですの?」
「………「聖女サマ」」
開いたままのドアの横からそーっと様子を見ようとしたらしい聖女サマの頭を俺とシエルが指さす。
「…な、なぜ分かったのです?」
「………足音がしたから」
「だな。途中までドタバタ走ってたけど、急停止して、しばらく呼吸整えた後に静かに歩き出して。んで、そーっとドアに近づいてた所で俺たちに言われたな」
「……ぜ、全部わかって…?」
「だな。結構派手な音立ててたし。途中で『せ、聖女らしくしなくては…!こんなに汗だくになってははしたないですから…!』なんて呟きも全部──」
「にょわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「何事ッ!?」
唐突に聖女サマが顔を真っ赤にしてのたうち回り始めた。
これがあの聖女サマだと言っても誰も信じまい。こんなの、ただの女の子…いや、女の子は奇声を発して転げ回ったりはしないか。
まぁ、いずれにしろいつもの凛とした聖女サマは面影もない。
と、急に止まった。
「み、見苦しい所を…失礼しました…」
まだ顔は赤いが、ひとまず奇声を発して転がるのは止めてくれたらしい。
「気にすんな。もっとひでぇ所を山ほど見てるから」
「………はい?な、何のことですか?」
あれほど赤かった顔が次はどんどん青くなっていく。
…どうしようか。あの祭りでの痴態を言うべきか…それとも言うまいか。
少し悩んだ結果、黙っていることにした。
「…まぁいい、俺の治療をしてくれたのは聖女サマだよな?感謝する」
「いえ、傷ついた人がいれば治療をする。それが当然の事ですから」
どうやらいつもの状態に戻ったらしい。よかった。
「右腕そのものと、あなたの右腕が酷く損傷していたので、治癒魔法も使った後、少々強引に復元魔法で繋ぎましたが…他に体調などでも不具合はありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ。まぁ最悪、繋がってさえいれば腐らないだろうし、手足はスキルで動かせるから。問題はないよ」
変に痛んだりもしないし、動かないなんてことも無いし。
……ん?
「治癒魔法、通ったのか?」
「はい?どういう事ですか?」
「…いや、いい。気にしないでくれ」
魔法返しは強力な魔法には作用しきらない。
なのに魔法が効いた…と言うことは多分、聖女サマの魔力が俺の想像を絶する程にバカ高く、強力であるという事だろう。
「では、お願い出来ますか?」
「あ?何を」
「とぼけないで下さい!神父を亡きものにしようとしたこと、その理由についてです!」
…聖女サマ、意外と怒ってたのな。
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