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本編
得物と対処
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聖女サマには初日に渡した大ナイフ、シエルは前から渡してあった二振り一対のナイフ。
どちらもナイフと言えば一言で片付けられるが、もちろん同じものではない。
聖女サマのナイフは刃渡り三十センチ、柄は二十センチ程もある、両手で扱うことも出来る、分厚い頑丈なもの。
片刃でほとんど反りはなく、元からやや切れ味は悪いが、多少無茶に扱っても壊れないものだ。
一方、シエルのナイフは刃渡りは三十センチ。しかし、柄を含めた全長もほぼ三十センチ。
俺の金剣銀剣の柄と似たような形になっており、刃の背側の途中から分かれるように柄が伸び、柄尻と刃の終わりがほぼ同じ長さ。
片刃なのは同じだが、刃は緩く反り返っており、繊細な扱いが必要なものの、切れ味は抜群、薄く鋭い剃刀を彷彿させるような得物だ。ちなみに、柄は両手で持つほどの長さはない。
つまり、聖女サマの得物は攻撃を受け止める事が比較的簡単な物なのに対し、シエルの得物は下手に受ければ即座に折れる。
当然、回避と防御なら回避の方が難しい。
さて、長々と、一話分の約半分もダラダラと話したが、俺の言いたいことはただ一つ。
『動きトロいなぁ…』
「あなたが速いのです!!」
聖女サマが思った以上に動けなかったと言うことで。
怪我でズタボロと言うことは流石に無いのだが、転がり回ったり軽く吹き飛ばされたりした結果、黒い服装でもひと目でわかるほど泥があちこちについている。
『うーん?午前中に俺とやった時、あの時よりも遅いのにほとんど防げないのはちょっとなぁ…?』
『あれか?殺気的なモノが足りないのか?』
『あー、火事場の馬鹿力的な…』
「誰が馬鹿ですか!!」
「………アリス…ばか?」
『いやいやシエルー?いくらホントの事だって、言っていいことと悪いことがあるんだぞー?』
「私は馬鹿ではありません!!」
『つってもなぁ…シエルは軽々と避けてるのに、アンタが一切避けられないどころか、防御もほとんど出来てなかったってのは流石になぁ…』
『恐怖で身がすくむのはよくあるだろうが…土壇場で動きが良くなるってのはその逆と比べたらその億倍マシだわな』
ま、そう考えるか。
『一応聞くが…見えてはいるんだよな?』
「え、えぇ、はい。ただ、どうしても身体が──」
不意打ちで、ノーモーションで拳を繰り出してみた。
顔面鼻っ面骨折コース、手加減手抜きは全くもって皆無。
鎧を纏っているため、軽い凶器となった拳は聖女サマの顔に突き刺さる──直前で大振りなナイフで叩き落とされた。
『なんだ、出来るじゃん』
「し、心臓に悪いです!!顔に当たったらどうするつもりだったんですか!!」
『別に?ここに治せるヤツいねぇから、アーネが帰ってくるまで我慢だろ』
真顔で──まぁ、当然見えないが──答えると、それが雰囲気で伝わったらしい。溜め息が返ってきた。
さて、残り一日…無いのか。
どちらもナイフと言えば一言で片付けられるが、もちろん同じものではない。
聖女サマのナイフは刃渡り三十センチ、柄は二十センチ程もある、両手で扱うことも出来る、分厚い頑丈なもの。
片刃でほとんど反りはなく、元からやや切れ味は悪いが、多少無茶に扱っても壊れないものだ。
一方、シエルのナイフは刃渡りは三十センチ。しかし、柄を含めた全長もほぼ三十センチ。
俺の金剣銀剣の柄と似たような形になっており、刃の背側の途中から分かれるように柄が伸び、柄尻と刃の終わりがほぼ同じ長さ。
片刃なのは同じだが、刃は緩く反り返っており、繊細な扱いが必要なものの、切れ味は抜群、薄く鋭い剃刀を彷彿させるような得物だ。ちなみに、柄は両手で持つほどの長さはない。
つまり、聖女サマの得物は攻撃を受け止める事が比較的簡単な物なのに対し、シエルの得物は下手に受ければ即座に折れる。
当然、回避と防御なら回避の方が難しい。
さて、長々と、一話分の約半分もダラダラと話したが、俺の言いたいことはただ一つ。
『動きトロいなぁ…』
「あなたが速いのです!!」
聖女サマが思った以上に動けなかったと言うことで。
怪我でズタボロと言うことは流石に無いのだが、転がり回ったり軽く吹き飛ばされたりした結果、黒い服装でもひと目でわかるほど泥があちこちについている。
『うーん?午前中に俺とやった時、あの時よりも遅いのにほとんど防げないのはちょっとなぁ…?』
『あれか?殺気的なモノが足りないのか?』
『あー、火事場の馬鹿力的な…』
「誰が馬鹿ですか!!」
「………アリス…ばか?」
『いやいやシエルー?いくらホントの事だって、言っていいことと悪いことがあるんだぞー?』
「私は馬鹿ではありません!!」
『つってもなぁ…シエルは軽々と避けてるのに、アンタが一切避けられないどころか、防御もほとんど出来てなかったってのは流石になぁ…』
『恐怖で身がすくむのはよくあるだろうが…土壇場で動きが良くなるってのはその逆と比べたらその億倍マシだわな』
ま、そう考えるか。
『一応聞くが…見えてはいるんだよな?』
「え、えぇ、はい。ただ、どうしても身体が──」
不意打ちで、ノーモーションで拳を繰り出してみた。
顔面鼻っ面骨折コース、手加減手抜きは全くもって皆無。
鎧を纏っているため、軽い凶器となった拳は聖女サマの顔に突き刺さる──直前で大振りなナイフで叩き落とされた。
『なんだ、出来るじゃん』
「し、心臓に悪いです!!顔に当たったらどうするつもりだったんですか!!」
『別に?ここに治せるヤツいねぇから、アーネが帰ってくるまで我慢だろ』
真顔で──まぁ、当然見えないが──答えると、それが雰囲気で伝わったらしい。溜め息が返ってきた。
さて、残り一日…無いのか。
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