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本編
死者と剣
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シャル曰く、《腐死者》の魔法は、魔法の作りとしては非常に特殊らしい。
詳しい理屈はよく分からなかったが、耳長種の魔法を斬る剣術でもダメらしく、《腐死者》の飛ばす手なり死体なりを完全破壊しなくては止まらないそうだ。
しかしこの黒剣は違う。
ただそこにあるだけで、触れたものを全て切り裂くという尋常ではありえないこの剣は、物理的に斬るのみではなく、斬ることさえ出来れば魔法すら切り裂いた。
そしてそれは《腐死者》の魔法であっても変わらない。
『つっても端を斬る程度じゃダメだ。物理的にも魔法的にも「致命傷」の斬撃を入れていけ』
「了解」
「──ふぅむ」
《腐死者》が悩ましげに口を開いた。
「成程、先程の魔獣もその剣の前ではただの屑となるのも致し方ない。言わばその剣は形ある物全てに対して──いや、ともすればただの概念であっても切り裂くことの出来る、文字通り最強の剣か。面白い」
だが。と、《腐死者》が続ける。
ゆっくりと、そのフードの下の笑みを深めて。
「それに特化した故、どうやら防ぐ事は出来ぬな」
「どれか一個でも当たれば勝ちってか?当てれるもんならやってみろよ。全部叩き切ってやる」
「良い大口だ。死ねば駒にしてやろう」
《腐死者》がコン、と地面を杖で叩く。するとその地面を割りながら無数の死者が現れた。
「──さて、何処まで耐えられる?」
「っ」
少なくとも数十体分の死体はあるだろう。それらが一度に押し寄せる。俺の最も苦手とする、質より量の面による攻撃。
行けるか。やれるか。
一度迷い、それを振り切った。
「斬れ。《連》」
名を呼びつつ剣を握ると、同時に不思議な脱力感に襲われた。普段なら大した問題ではないが、不意のことに思わず困惑する。
しかしそれをなんとか持ちこたえ、剣を引き抜く。
瞬間、両の双剣から抜き放たれたのは大銀剣の形を模した黒い刃。
「オォッ!!」
一、二、三、四──連撃を重ね、一振り事に死体をただの死体へと還していく。
相手の攻撃自体は単調な部類。攻撃を避け、こちらの剣で首を断つなり身体を両断すればあっさりと動きを止める。
「──ふむ成程、面倒だ」
不意にそう《腐死者》が言ったのが聞こえた。
一瞬だけそちらに目を向けると、禍々しい魔力が彼を中心に渦巻いていた。
「ならば残念だが、《勇者》の死体を回収するのは諦めるか。その術者の魔法を撃たれる方が此方としては被害が大きいのでな。纏めて死ね」
心底残念そうに。あるいは極めてどうでもいいように《腐死者》が溜息をつき、杖で三度地面を叩いた。
その瞬間、背筋が凍るような悪寒がした。
「《悲愴の歌、嘆きの怨嗟、焚べる薪は死者の骨。踊る炎は青く燃ゆる》」
『詠唱!?ジェルジネンが!?』
シャルがそう言った瞬間、反射的に第四血界を発動していた。
「《デッドリー・クラッシュ》」
魔術にさえ対抗出来る《勇者》の鎧。それを発動していたにもかかわらず。
《腐死者》が詠唱を終えた瞬間、身体が後ろに吹っ飛ばされた。
詳しい理屈はよく分からなかったが、耳長種の魔法を斬る剣術でもダメらしく、《腐死者》の飛ばす手なり死体なりを完全破壊しなくては止まらないそうだ。
しかしこの黒剣は違う。
ただそこにあるだけで、触れたものを全て切り裂くという尋常ではありえないこの剣は、物理的に斬るのみではなく、斬ることさえ出来れば魔法すら切り裂いた。
そしてそれは《腐死者》の魔法であっても変わらない。
『つっても端を斬る程度じゃダメだ。物理的にも魔法的にも「致命傷」の斬撃を入れていけ』
「了解」
「──ふぅむ」
《腐死者》が悩ましげに口を開いた。
「成程、先程の魔獣もその剣の前ではただの屑となるのも致し方ない。言わばその剣は形ある物全てに対して──いや、ともすればただの概念であっても切り裂くことの出来る、文字通り最強の剣か。面白い」
だが。と、《腐死者》が続ける。
ゆっくりと、そのフードの下の笑みを深めて。
「それに特化した故、どうやら防ぐ事は出来ぬな」
「どれか一個でも当たれば勝ちってか?当てれるもんならやってみろよ。全部叩き切ってやる」
「良い大口だ。死ねば駒にしてやろう」
《腐死者》がコン、と地面を杖で叩く。するとその地面を割りながら無数の死者が現れた。
「──さて、何処まで耐えられる?」
「っ」
少なくとも数十体分の死体はあるだろう。それらが一度に押し寄せる。俺の最も苦手とする、質より量の面による攻撃。
行けるか。やれるか。
一度迷い、それを振り切った。
「斬れ。《連》」
名を呼びつつ剣を握ると、同時に不思議な脱力感に襲われた。普段なら大した問題ではないが、不意のことに思わず困惑する。
しかしそれをなんとか持ちこたえ、剣を引き抜く。
瞬間、両の双剣から抜き放たれたのは大銀剣の形を模した黒い刃。
「オォッ!!」
一、二、三、四──連撃を重ね、一振り事に死体をただの死体へと還していく。
相手の攻撃自体は単調な部類。攻撃を避け、こちらの剣で首を断つなり身体を両断すればあっさりと動きを止める。
「──ふむ成程、面倒だ」
不意にそう《腐死者》が言ったのが聞こえた。
一瞬だけそちらに目を向けると、禍々しい魔力が彼を中心に渦巻いていた。
「ならば残念だが、《勇者》の死体を回収するのは諦めるか。その術者の魔法を撃たれる方が此方としては被害が大きいのでな。纏めて死ね」
心底残念そうに。あるいは極めてどうでもいいように《腐死者》が溜息をつき、杖で三度地面を叩いた。
その瞬間、背筋が凍るような悪寒がした。
「《悲愴の歌、嘆きの怨嗟、焚べる薪は死者の骨。踊る炎は青く燃ゆる》」
『詠唱!?ジェルジネンが!?』
シャルがそう言った瞬間、反射的に第四血界を発動していた。
「《デッドリー・クラッシュ》」
魔術にさえ対抗出来る《勇者》の鎧。それを発動していたにもかかわらず。
《腐死者》が詠唱を終えた瞬間、身体が後ろに吹っ飛ばされた。
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