大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

方法と否定

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「やっと着いたな…」
『長かったな、オイ』
悪かったな。
いつもよりもかなり余分に時間を浪費して着いたのは、ベルがいる武器や防具を売っているあの通り。
だが、今回はベルに用がある訳では無い。
カランコロンと鐘の音を鳴らしながら近くの店内に入る。
「……ん?なんだ、久しぶりじゃねぇか。嬢ちゃん」
ひょいとカウンターの向から、かなり渋い顔をした強面のオッサンがこちらへ視線を投げる。
「よぉ、オッサン。元気してるぅ?」
俺が入った店は、約一週間前…ってのは俺の主観か。
ほぼ一月前にシエルと共に怪しいオッサンを尾行した時に入った武器屋だ。
「あと、俺を嬢ちゃんって呼ぶのやめろよな」
「嬢ちゃんを嬢ちゃんって呼んでなぁにが悪いってんだ。一ヶ月ぶりに顔出すって事はどうした?嬢ちゃんの武器はそうそう壊れるようなモンじゃなかったはずだが?」
「嬢ちゃんじゃねぇから悪いんだよ。…いや、ここ最近ちょっと体調崩して寝込んでてな。リハビリがてら、少し…あぁ、平均よりほんの少しだけ重いような長剣を貸してくれねぇ?貸出レンタル料金はしっかり払うからさ」
「は?寝込んでた?そんな病弱なのに剣を振り回してんのか?」
『おい今代の。この店主、お前が病気か何かで寝込んでたと勘違いしてるぞ』
うーん………ま、いいか。
『良かねぇだろ…』
「ま、その辺りはあんまり気にするな。要は身体を出来るだけ早く戻したいから、剣握って筋肉とか付けたいんだよ」
俺の持っている金剣銀剣じゃあ駄目なんだよな。
金剣を使うと、自分の身体が軽くなる。
そうなると、擬似的な強化が身体にかかったようになり、身体が鍛えられない。
銀剣に至っては論外。
重さが羽毛より軽いので、無いとほぼ同じ。
やはり鍛えられない。
という訳で、普通の剣で鍛えなおそうと思ったのだが…。
「嬢ちゃん、アンタはあの見事な剣を使ってどれだけになる?」
「うん?………そーだな、十年近くは握ってるな」
銀剣だけだが。
金剣はここ数ヶ月から使い始めたモノだが、問題なく扱えている。
「なら辞めときな。そこまで扱った武器なら、それを握った方が百倍マシだ。それに、ウチの剣を握って鍛え直したなら、その剣用の身体が出来ちまう。そうなると、今までの剣に違和感が出ちまうだろうし、そうなると戦技アーツすら出ないことだってあるんだぞ?」
なる…ほど。
それはたしかに困る。
「そうか…じゃあ、代わりに何かいい方法無いか?」
「ゆっくり元の身体に近づけて行くしか無いだろう」
やっぱりオッサンも同じ答えか…。
「まぁ、わかったよ。ありがとう」
「悪いな。力になれなくて」
その後、オッサンとしばらく話し合った後、店を出てアーネの家に戻った。
うーむ、どうするか。
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