大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
601 / 2,040
本編

スキルと寝起き

しおりを挟む
一晩明けて、俺はベッドから天井を見上げつつ、一人昨日の考察について思い出していた。
…結局、というか。
情報が少なすぎた。
どれだけ頭を捻っても、《臨界点》の黄色がかった液体を使った爆炎は、予想しか出来なかった。
個人が尋常じゃない練習を経て習得した技術や、あるいは魔法ならギリギリ分からないこともないかも知れなかったが、不確定要素であるスキルが絡んでくる可能性が非常に高いため、どうしてもかなり不確定な予想しか出来ない。
そもそもこの学校で、スキルに一切頼らずにいる生徒を、俺はクアイちゃんぐらいしか知らないし、それ以外の生徒はどんな形であれスキルの恩恵を受けている。
大雑把に分けると。
ほぼ常に使っているが、戦闘などに応用も出来る、俺のような常時発動型。
アーネやシエル…あるいは《雷光》のような、戦闘において、それを軸にバトルスタイルを確立させた戦闘型。
あとはラウクムくんのようなここぞと言う場面で力を出せる切り札型などか。
他にも多岐に渡るだろうが、切り札をそう簡単に俺に見せる訳もないだろうし、切り札型はないだろう。
だが、逆に言うとそれ以外ならなんでもあり得そうだ。
極論、触れたものをすべて爆弾に変える、どこかで有名になっていそうなラスボスのみたいなスキルの可能性も無きにしもあらずな訳で。
つまりは、俺達の頭は結局、思考放棄を選んだ訳だ。
出来る事なら、あの《臨界点》が誰かと戦っている所…いや、そこまでは言わないにしても、あいつがもう一度あの試験管を使う所を見ることが出来れば……。
が、意図しての事だろうが《臨界点》についての情報は非常に…というか異常に少ない。
もはや俺と《臨界点》が敵対しない事を祈るしかない。
「…やっぱり情報が少なすぎん…よっ!!」
未だ寝ているアーネとシエルを起こす意味も込めて一気に跳ね起きると、アーネの抗議の声がしたが、気にしない気にしない。
ちなみにシエルは静かに用意を始めていた。
さて、俺も早く着替えて支度を…。
「……昨晩は遅かったんですのね…」
「…!?」
「…なんで驚いているんですの?」
「…いや、お前が朝、マトモに起きているのって見たことなかったからな」
いつもなら、明らかにヒトの言葉じゃない音を口から漏らすことはあった。が、こうして喋るというのは軽く異常事態。
「口から心の声が漏れてますわよ。異常事態とは酷いですわね」
だらしなく着崩れたパジャマの裾を直そうともせずにアーネがそう言う。
「おっとすまん。まぁ、隠す気は無いんだがな。むしろ、羞恥心とかそう言ったものを覚えて、これから俺の手を煩わせないようにしてくれ」
俺が知りうる限り、女子ってのは男子がいればその裾を正したりするモンだと思っているんだが…。
………いや、よく考えれば、俺が知ってる女子ってのはナナキしかいない訳で、彼女もよく考えればこんなモンだったか。
「あの子…シエルは寂しがってましたわよ」
「…あぁ」
そうか、自分のことだけ考えてちゃダメだったな…。
夜練…どうするかな…。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

処理中です...