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本編
名と火
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似たような事をアーネん時もやってたよなぁ、と思いつつ、謝り倒すベルと気にしていないヴァルクスの会話をしばらく眺め、落ち着いてから口を開く。
「で、こっちに呼んだ理由聞いてんのか?」
「……一応な。マキナ壊れてんろ?あとアンタの眼玉も見えるようなの作れとか。ちょい見せてみ。右眼やっけ」
そう言うベルに右眼を見せると、「うわ、グロ」と言って顔を顰めて後ろに下がる。
「キッモ。ちょっとやる気失せたわ」
「お前が見せろっつったんだろが。で、どうだ?」
そう聞くと、しばらく俺の方を見、手元のマキナを見、もう一度俺の方を見てから口を開く。
「出来るで。多分な」
「流石ベル。そう言ってくれるって信じてた」
「はっ。言うだけなら誰でも出来るわ。ただ条件あるわ。まずはマキナ作り直すためのオリハルコンとミスリル。次に諸々の道具と火がある作業場」
「お前ん家に戻るのじゃダメなのか?」
「目も鎧もアンタに合わせて調整したいし、面倒やけどウチも王都におるわ。やから、最低限この二つ欲しいんやけど」
と、言われても。
俺にそんなもの用意できるはずがない。というか、王都にそんな鍛冶場なんかあったか?
「グローゾフの炎を借りる気か?」
しかし、一方ヴァルクスは驚いたようにそう言った。
「グローゾフの……炎?」
「借りるんやな…じゃなくて、返してもらうんです。ウチを追い出した馬鹿親父から」
ベルがそう言い、不敵な笑みを浮かべる。
「英雄様にお願いしたいのは、場のセッティングだけです。あとはウチと親父でケリをつける」
「それは大したことではないし構わんが……君の言う親父とは、ハルマ・グローゾフの事で間違いないかのう?」
「あっと……合ってます。どうせ多分、今も家で転がって暇してるんで、すぐにでもそこらに呼び出してください」
「んむぅ……まぁ分かったが」
何か引っかかるようなヴァルクスだが、結局何も言わずにメッセージを飛ばし始める。
「そんでレィア、アンタいつまでここにおるんや?」
「一週間だな。今日を含めて」
そう言うと、ベルが険しい顔をした。
「眼の完成だけできっと五日……早くても三日はかかるわ。 マキナの修理になると、多分それ以上かかるな」
「分かった。頼む。眼と鎧でいくら払えばいい?」
「今回は特別にタダでええわ。代わりに今更やけど今後グローゾフの名前は隠しといてくれ。どうしても答えんなん時はアインドラって名乗ってるから、そっち頼むわ。英雄様もお願いできますか?」
「了解」「うむ、分かった」
そう言うと、ベルは一度頷き、大教会から出ていこうとする。
「おい、どこに──」
「ちょっと外の空気吸うだけや。すぐ戻る」
そう言ってベルが出ていく。
「……師匠的には、アイツは本物のグローゾフだと思うか?」
「どうじゃろうか。ただ、少なくとも眼を作ると聞いて、あっさりと出来ると言い放つという事は、それに近しい技量があるのは確かじゃ。それに家紋入りの鎚も見た。あれは正式なグローゾフの証じゃ」
英雄のお墨付きね。ふむ。
「もう一個聞いていい?グローゾフの炎って何よ」
「この王都にある、たった一つの鍛冶場の名じゃよ。槌人種の中でも……いや、グローゾフの中でも指折りの実力者しか入る事すら許されん所じゃ」
「ほお…」
なるほどね。まぁ、鎧とついでに眼が出来るのならなんでもいいか。
とりあえず、俺はしばらくどうすればいいんだろうか。
「で、こっちに呼んだ理由聞いてんのか?」
「……一応な。マキナ壊れてんろ?あとアンタの眼玉も見えるようなの作れとか。ちょい見せてみ。右眼やっけ」
そう言うベルに右眼を見せると、「うわ、グロ」と言って顔を顰めて後ろに下がる。
「キッモ。ちょっとやる気失せたわ」
「お前が見せろっつったんだろが。で、どうだ?」
そう聞くと、しばらく俺の方を見、手元のマキナを見、もう一度俺の方を見てから口を開く。
「出来るで。多分な」
「流石ベル。そう言ってくれるって信じてた」
「はっ。言うだけなら誰でも出来るわ。ただ条件あるわ。まずはマキナ作り直すためのオリハルコンとミスリル。次に諸々の道具と火がある作業場」
「お前ん家に戻るのじゃダメなのか?」
「目も鎧もアンタに合わせて調整したいし、面倒やけどウチも王都におるわ。やから、最低限この二つ欲しいんやけど」
と、言われても。
俺にそんなもの用意できるはずがない。というか、王都にそんな鍛冶場なんかあったか?
「グローゾフの炎を借りる気か?」
しかし、一方ヴァルクスは驚いたようにそう言った。
「グローゾフの……炎?」
「借りるんやな…じゃなくて、返してもらうんです。ウチを追い出した馬鹿親父から」
ベルがそう言い、不敵な笑みを浮かべる。
「英雄様にお願いしたいのは、場のセッティングだけです。あとはウチと親父でケリをつける」
「それは大したことではないし構わんが……君の言う親父とは、ハルマ・グローゾフの事で間違いないかのう?」
「あっと……合ってます。どうせ多分、今も家で転がって暇してるんで、すぐにでもそこらに呼び出してください」
「んむぅ……まぁ分かったが」
何か引っかかるようなヴァルクスだが、結局何も言わずにメッセージを飛ばし始める。
「そんでレィア、アンタいつまでここにおるんや?」
「一週間だな。今日を含めて」
そう言うと、ベルが険しい顔をした。
「眼の完成だけできっと五日……早くても三日はかかるわ。 マキナの修理になると、多分それ以上かかるな」
「分かった。頼む。眼と鎧でいくら払えばいい?」
「今回は特別にタダでええわ。代わりに今更やけど今後グローゾフの名前は隠しといてくれ。どうしても答えんなん時はアインドラって名乗ってるから、そっち頼むわ。英雄様もお願いできますか?」
「了解」「うむ、分かった」
そう言うと、ベルは一度頷き、大教会から出ていこうとする。
「おい、どこに──」
「ちょっと外の空気吸うだけや。すぐ戻る」
そう言ってベルが出ていく。
「……師匠的には、アイツは本物のグローゾフだと思うか?」
「どうじゃろうか。ただ、少なくとも眼を作ると聞いて、あっさりと出来ると言い放つという事は、それに近しい技量があるのは確かじゃ。それに家紋入りの鎚も見た。あれは正式なグローゾフの証じゃ」
英雄のお墨付きね。ふむ。
「もう一個聞いていい?グローゾフの炎って何よ」
「この王都にある、たった一つの鍛冶場の名じゃよ。槌人種の中でも……いや、グローゾフの中でも指折りの実力者しか入る事すら許されん所じゃ」
「ほお…」
なるほどね。まぁ、鎧とついでに眼が出来るのならなんでもいいか。
とりあえず、俺はしばらくどうすればいいんだろうか。
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