大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

防衛準備と鍵

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「という訳で頼みました」
「おう、任せとけ」
学級委員長がクラスメイトを引き連れ、南第一都市へと帰ってゆく夜九時頃。
この時間になると防衛、あるいは攻略するメンバーのみ王都に残り、それ以外は一度寮に戻らなくてはならない。
防衛、攻略で一度に出られる人数はそれぞれ一クラスにつき最大五人まで。それ以上は王都に住む住人の邪魔になるので、禁止なのだそうだ。代わりに、多少の騒音は我慢してくれる…というか、向こうも楽しんで見てくれるそうだ。
ちなみに、強奪できるのは聖学祭の当日、日が登るまで。それまでは何度チャレンジしてもいいし、何度奪われて、奪い返してもいい。
もっとも、用意が間に合うのかどうかはまた別の話になるだろうが。
そんな訳で、今晩この店で俺は夜を明かす事となった。
まぁ、元より一年新クラスの用心棒みたいな所はあったし、シエルの件の後、改めて任されたので仕方はないが。
だが、一人で防衛する訳では無い。
たとえば緊急事態が起きた時。
本来ならあってはならない事だが、不慮の事故などで大怪我したり、あるいはさせたりした場合、回復魔法もメッセージも使えない俺一人では正直どうしようもない。
そこで、回復役兼メッセンジャーとしてアーネが。
さらに、敵が二手に分かれて侵入する、あるいは西学のクラスか聖学のクラスが同時に二クラス以上来られた場合、俺一人では対処しにくいであろう、という理由でラウクムくんが。
さらにさらに、そうなった場合のラウクムくんのサポートとしてクアイちゃんが、この店に残った。
ぶっちゃけ、一班のほぼ全員である。
「それでは《緋眼騎士》さん、これをどうぞ」
そう言って渡されたのは、少し古いデザインの鍵。
「あいよ。これを首にかけときゃいいんだよな?」
「です」
今日の朝知ったのだが、この鍵を持っている者が店の所有者扱いとなるらしい。
で、それを代表者は目に見えるところに持っておかねばならないのだそうだ。
まぁ、そうじゃないと泥沼になるわな…。
そんな事は全く知らず、考えもしなかった俺に代わって、初日に鍵を回収したラウクムくんに感謝。
鍵を受け取り、首にかけると、服の下に首にかけてある金剣銀剣とぶつかり、カチャリと音を音をたてた。
「さて、これでいいかね……んじゃ、アンタらはさっさと帰って寝て、明日に備えてくれ。流石に俺も、明日は二つ名向こうの方に行かなくちゃならんだろうから、防衛も任せる事になる。万全の体調と万全の体制にしてくれ」
「分かってますよ。ここまでしてくれた事に感謝しています。それでは」
いかにも疲れたと言った足取りで去っていくクラスメイトを見送り、振り返って一班のメンバーに一言。
「んじゃ、俺ここで寝るから」
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