大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

昼食と注文

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興奮した群衆って怖いよな。
いくら怪我させないようにルト先輩が気を配ってるからと言っても、当然ある程度の怪我はする。
なのにガンガン攻める戦闘経験など無いであろう民衆。
ぶっちゃけ俺と《雷光》要らないんじゃね?と思うぐらい。そのぐらい凄かった。
さて、そんな訳でヒュドラことルト先輩が見事ウィルのド派手な攻撃(と言っても、魔法で巨大な光の剣を形作るだけなので実は一番無害)で倒され、俺が再び着替えて喫茶店に戻り、三十分ほどウェイトレスをしてからまたお昼の部をするために屋根を飛び歩く。
劇の時間は一回あたり三十分程、さらに移動着替えも入れるとさらに三十分。
二回目の公演は十二時三十分なのですぐに移動しなければならない。
あ?俺の飯?食ってねぇよ馬鹿野郎。
そして喫茶店に帰ってくれば、今さっき一緒になってルト先輩を叩いていた観客が腹を空かせて喫茶店に流れ込んでくる。
狙いは多分割引きの方だも思う。というかそうだと思いたい。
断じて野郎共の視線が俺を執拗に追っているという事などはない。
単にウェイトレスのことを見ているだけだ。俺個人を見ている訳では無い。絶対に。
絶対に。
と言うか。
喫茶店って!普通!軽食だとか飲み物を楽しむ場所だって!アーネから聞いてたんだけど!?
『…なーんでハンバーグセットとかステーキセットがあるんだろうな』
ホントに!!これ喫茶店って言うのか!?
「おーい、そこの銀髪のねーちゃん!注文いいかー?」
「はい!少々お待ち下さい!!」
大急ぎで呼ばれたテーブルに走って…は、怒られるので、早歩きで向かう。
注文を受けつつ、ちらりと時計を気にする。
一時十分…次は午後四時半のため、まだしばらく時間はある。
「レィアさん、これ二の六に持ってって!」
「はーい!」
注文を受けた料理と飲み物をトレイに乗せ、階段を急いで上がる。ちょうど他のウェイトレスとすれ違ったが、階段がキツイのか泣きそうな顔をしていた。まぁ、気持ちは分かる。
「お待たせしました、ホットドッグセットです!」
軽食と飲み物が一緒になったセットメニューをテーブルに置き、伝票を素早く食器の端に噛ませる。
「ではごゆっくりと!」
心の中では欠片も思っていないセリフを吐きつつ、急いで下の階へ向かう。
「ありがとうねぇ」
それは何気ない感謝の言葉。
しかし、背筋を伝ったのは冷たい汗。
思わず振り返るとそこには数ヶ月前、東のとある都市で出会ったアイツが。
《豹》がいた。
「あら、これ美味しいわねぇ」
非常に呑気だったが。
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