713 / 2,040
本編
素性と対策
しおりを挟む
なんつーか…あの男、常習犯だったらしい。
二年前は《不動荒野》に声を掛け。
一年前は《雷光》に声を掛け。
そして今年は俺に声を掛けに来た。
「…なんかメンツが二つ名しかいない気がするんだが…」
「私達の」「先輩の」「二つ名持ちも」「声掛けられてたよ」
「マジか」
「うん、本当の話だよ。ちなみに百パーセント全員二つ名持ち…あるいは将来的に二つ名持ちになった人ばっかりだったよ。ウチのシオンもそうだったし」
そうなると、もしかするとあの男、何らかのスキルを持っているのかもしれないな。こう…戦闘力的なものを視覚化するようなスキルを。
「彼奴の事は既に調べていてな。ギルド所属のBランク冒険者だ。ルックスを利用して実力ある冒険者…主に女性に取り入り、美味い汁を啜る所謂下衆だ。私達に声を掛けたのも将来的に唾を付けたかったのだろうな」
つまり──と、《雷光》がまとめる。
「ヒモだ」
「ヒモか」
「ヒモだね」
「「ヒモ」」
なんだ、変質者じゃなくて屑だったか。
「で、ちなみに先輩方はどうやって対処したんだ?」
「私達は」「店に一切近寄らせなかったよ?」「ほら、「ルト君いたから」」
なるほど、最強の門番がいた訳だ。
「シオンの時はどうしたっけ?」
「はい、初日からずっといましたが、当時私達の店は現一年旧クラスと同じような催しでしたので、分からないように全力で攻撃しました。風の噂ですと、全治一ヶ月の骨折になったそうです」
旧一年クラスと言うと…モンスターハウスか。
なんだろう、《雷光》って意外と黒いよな…。
というか、あの男が二つ名持ちの出し物の方に来なかった理由がそれか。わざわざ鬼がいるような所には行きたくないと。
…三人の意見は参考にはなったが…。
「ウチにゃそんな門番もいねぇし、《雷光》の店みたいな事は出来ねぇしな。ついでに学級委員長は荒事を控えたがってるし。俺が暴れられたら楽だったんだろうが…」
店にいる間は客と店員。これは覆せないし、外に出て一方的にボコっても外聞が悪い。
「さて、どうしたもんか…」
溜め息を吐くと、ちょいちょいと俺をつつく手が二つ。
「んあ?」
「えっとー」「方法は無くは無いよ?」「というか──」
《不動荒野》が俺の後ろを指さす。
何気なく振り返ると、そこには大鬼ですら裸足で逃げ出すこと間違い無しな怒気を纏ったルト先輩…というか《逆鱗》がいた。
「なるほど、話は分かった。私がどうにかしてやろう。双子も手伝え」
「「えーっ……了解」」
「どうにかってどうすんだよ……っつーか」
俺は空中でクルリと身体を捻る。
「なんで二つ名持ち全員が俺の店来るんだよ!!」
屋根を蹴る六人の影は、声を揃えてこう言った。
──今日休みだし。
二年前は《不動荒野》に声を掛け。
一年前は《雷光》に声を掛け。
そして今年は俺に声を掛けに来た。
「…なんかメンツが二つ名しかいない気がするんだが…」
「私達の」「先輩の」「二つ名持ちも」「声掛けられてたよ」
「マジか」
「うん、本当の話だよ。ちなみに百パーセント全員二つ名持ち…あるいは将来的に二つ名持ちになった人ばっかりだったよ。ウチのシオンもそうだったし」
そうなると、もしかするとあの男、何らかのスキルを持っているのかもしれないな。こう…戦闘力的なものを視覚化するようなスキルを。
「彼奴の事は既に調べていてな。ギルド所属のBランク冒険者だ。ルックスを利用して実力ある冒険者…主に女性に取り入り、美味い汁を啜る所謂下衆だ。私達に声を掛けたのも将来的に唾を付けたかったのだろうな」
つまり──と、《雷光》がまとめる。
「ヒモだ」
「ヒモか」
「ヒモだね」
「「ヒモ」」
なんだ、変質者じゃなくて屑だったか。
「で、ちなみに先輩方はどうやって対処したんだ?」
「私達は」「店に一切近寄らせなかったよ?」「ほら、「ルト君いたから」」
なるほど、最強の門番がいた訳だ。
「シオンの時はどうしたっけ?」
「はい、初日からずっといましたが、当時私達の店は現一年旧クラスと同じような催しでしたので、分からないように全力で攻撃しました。風の噂ですと、全治一ヶ月の骨折になったそうです」
旧一年クラスと言うと…モンスターハウスか。
なんだろう、《雷光》って意外と黒いよな…。
というか、あの男が二つ名持ちの出し物の方に来なかった理由がそれか。わざわざ鬼がいるような所には行きたくないと。
…三人の意見は参考にはなったが…。
「ウチにゃそんな門番もいねぇし、《雷光》の店みたいな事は出来ねぇしな。ついでに学級委員長は荒事を控えたがってるし。俺が暴れられたら楽だったんだろうが…」
店にいる間は客と店員。これは覆せないし、外に出て一方的にボコっても外聞が悪い。
「さて、どうしたもんか…」
溜め息を吐くと、ちょいちょいと俺をつつく手が二つ。
「んあ?」
「えっとー」「方法は無くは無いよ?」「というか──」
《不動荒野》が俺の後ろを指さす。
何気なく振り返ると、そこには大鬼ですら裸足で逃げ出すこと間違い無しな怒気を纏ったルト先輩…というか《逆鱗》がいた。
「なるほど、話は分かった。私がどうにかしてやろう。双子も手伝え」
「「えーっ……了解」」
「どうにかってどうすんだよ……っつーか」
俺は空中でクルリと身体を捻る。
「なんで二つ名持ち全員が俺の店来るんだよ!!」
屋根を蹴る六人の影は、声を揃えてこう言った。
──今日休みだし。
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる