大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

素性と対策

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なんつーか…あの男、常習犯だったらしい。
二年前は《不動荒野》に声を掛け。
一年前は《雷光》に声を掛け。
そして今年は俺に声を掛けに来た。
「…なんかメンツが二つ名しかいない気がするんだが…」
「私達の」「先輩の」「二つ名持ちも」「声掛けられてたよ」
「マジか」
「うん、本当の話だよ。ちなみに百パーセント全員二つ名持ち…あるいは将来的に二つ名持ちになった人ばっかりだったよ。ウチのシオンもそうだったし」
そうなると、もしかするとあの男、何らかのスキルを持っているのかもしれないな。こう…戦闘力的なものを視覚化するようなスキルを。
「彼奴の事は既に調べていてな。ギルド所属のBランク冒険者だ。ルックスを利用して実力ある冒険者…主に女性に取り入り、美味い汁を啜る所謂下衆だ。私達に声を掛けたのも将来的に唾を付けたかったのだろうな」
つまり──と、《雷光》がまとめる。
「ヒモだ」
「ヒモか」
「ヒモだね」
「「ヒモ」」
なんだ、変質者じゃなくて屑だったか。
「で、ちなみに先輩方はどうやって対処したんだ?」
「私達は」「店に一切近寄らせなかったよ?」「ほら、「ルト君いたから」」
なるほど、最強の門番がいた訳だ。
「シオンの時はどうしたっけ?」
「はい、初日からずっといましたが、当時私達の店は現一年旧クラスと同じような催しでしたので、分からないように全力で攻撃しました。風の噂ですと、全治一ヶ月の骨折になったそうです」
旧一年クラスと言うと…モンスターハウスか。
なんだろう、《雷光》って意外と黒いよな…。
というか、あの男が二つ名持ちの出し物の方に来なかった理由がそれか。わざわざ鬼がいるような所には行きたくないと。
…三人の意見は参考にはなったが…。
「ウチにゃそんな門番もいねぇし、《雷光》の店みたいな事は出来ねぇしな。ついでに学級委員長店長は荒事を控えたがってるし。俺が暴れられたら楽だったんだろうが…」
店にいる間は客と店員。これは覆せないし、外に出て一方的にボコっても外聞が悪い。
「さて、どうしたもんか…」
溜め息を吐くと、ちょいちょいと俺をつつく手が二つ。
「んあ?」
「えっとー」「方法は無くは無いよ?」「というか──」
《不動荒野》が俺の後ろを指さす。
何気なく振り返ると、そこには大鬼オーガですら裸足で逃げ出すこと間違い無しな怒気を纏ったルト先輩…というか《逆鱗》がいた。
「なるほど、話は分かった。私がどうにかしてやろう。双子も手伝え」
「「えーっ……了解」」
「どうにかってどうすんだよ……っつーか」
俺はでクルリと身体を捻る。
「なんで二つ名持ち全員が俺の店来るんだよ!!」
屋根を蹴る六人の影は、声を揃えてこう言った。
──今日休みだし。
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