大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

ラストオーダーとミス

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「あと十五分です!申し訳ありませんがラストオーダーでお願いします!また、お待ちになっているお客様、心苦しいのですが、お帰りください!」
学級委員長のよく通る声が一階と二階、両方に響き渡る。
「あ?まだ早くね?」
そう思って時計を見てみると、閉店時間の一時間程前、ちょうどあと十五分すれば、六時だった。
「あぁ、最終日は少し早く終わるんだ。──はい、分かりました。…その後に閉会式と…まぁ、お楽しみの時間だ。──あ、お客様、会計にはこの伝票を持っていってください!…貴様は初日の開会式を休んでいたから知らなかったか」
複数の客の相手をしながら答えてくれたのは《雷光》。そんなのが初日にもあったのか。
「へー、閉会式って何すんだ?」
「すいませーん、誰かいいですかー?」
「あ、はーい!」
しまった、昨日今日の癖で反射的に答えちまった。
呼ばれたテーブルに急いで行き、注文を取ってから一階へ降りると、ウェイター姿がやけに似合うウィルが四つ全てのテーブルを一人で捌く姿が見えた。それも苦もなく。
「…なぁ、俺らいらなくね?あ、これ注文な」
「そうでもないですよ。彼、おっちょこちょいなのかうっかり屋なのか分かりませんけど、ミスをちょくちょくするんです…ほら」
言われて見てみれば。
「…すいません、これ私達頼んでないんですけど…」
「え?あっ、ホントだ…すみません」
女二人組のテーブルに、何故か巨大なパフェが四つも置いてあった。つーか厨房も注文聞いた時に気づけ馬鹿。
「うーん…どうしましょうか…ラナさん」
「はい、何でしょうかウィル先輩」
呼ばれた学級委員長が返事をすると、ひょい、とウィルが何かを一つ放り投げる。緩く弧を描いて飛んでくるそれは…硬貨コインか。
「あ、無理だ。レィアさん、キャッチしてください」
「へ?」
咄嗟に俺が髪で絡めとると、やはりそれはコイン。
「ありがとうございます。私、運動神経というものが存在していないレベルで皆無なので」
「どうやって入学した。つーかどうやって戦うんだ」
物放り投げて取れないとか生物として致命的な欠陥だろ。
魔法使いキャスターですよ」
なるほど、似合うな。
それはそうと、ウィルが投げたのはやはりコイン。それも金貨。
「僕の奢りです。……足りるかな?」
「過剰です。パフェ四つどころかその三倍でもお釣りが来ます」
「うん、この人達だけじゃなくて、一つのテーブル、カウンターに一つぐらい贈ろうかと思って。ダメかな?」
「ふむ、分かりました。……厨房!今の聞こえましたね!?すぐに作ってください!!」
すぐさま元気のいい返事が返ってくると、厨房がにわかに慌ただしくなる。
「…とまぁ、こんなミスとかですね。で、レィアさんが受けた注文は…」
「あぁ…」
俺も学級委員長も思わず苦笑する。
「パフェ一つ…合計二つですね」
あのテーブル、一人だったけど大丈夫なのかね?
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