大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
833 / 2,021
本編

結末と別れ

しおりを挟む
フェンリル騒動はとりあえずの収束を迎えた。
《臨界点》は《シェパード》に所属したまま、そして《剣姫》は無謀にも《キャット・シー》と《シェパード》に喧嘩を吹っかけ、もしもどちらにも勝利したら無所属にさせろと持ちかけたらしい。
結果は《キャット・シー》の双子にコテンパンにやられ、所属は《キャット・シー》になったそうな。
そして《フェンリル》の噂は流れることはなくなり、ひっそりと話題に乗ることもなくなって行った。
また、この件については《剣姫》と一緒に学校長の所へ赴き、彼女を証人として俺が《フェンリル》など作っていないこと、本当は《剣姫》がやったことであると言ってもらった。
これにより学校長は俺が一応どこの所属でも無いと認識しなおしたらしく、ギガースの件を謝罪。
こうして《フェンリル》は文字通り幻の獣となったのだった。
………表向きは。
裏で言ってしまうと、誰にもバレないように《フェンリル》は存在しているらしいが、そんな事は俺に関係ない。無所属サイコー。
そんな訳で次に待っていたのは──期末試験。
しかしまぁ、こちらも特に難なくクリア。直前までドタバタしていたが、二日もあれば班のみんなからの押し込みでなんとか赤点回避程度はなんとかなった。実技の方は言うに及ばず。今回の試験で、ほかの班には何人か脱落…つまり冬季補習の餌食になった者達がいたらしいが、ウチの班はなんの問題もなかった。シエルもなんとかクリアしたしな。
そんな訳で──冬季休暇の始まり。
期間は約ひと月。年末年始の間に実家へ帰ってもいいと言うもの。
普通の家なら年の暮れや年明けを家族と祝ったりするらしいが…俺の家はそんな訳が無い。というか年末年始という概念すらつい最近聞いたものだしな。
アーネが「自宅ウチに来ますの?」と前誘ってくれたが、俺はそれを丁重に辞退。紅の森の自宅に帰る。
シエルにもその事を伝え、冬の間はアーネの自宅と俺の家、どちらにいることにするか聞いてみた所、かなり迷ったようだがアーネの家に行くことにしたらしい。
俺としては少々寂しいが、最近アーネとよく一緒にいたし、俺にベッタリでは無くなったというのが少し嬉しくもあった。
少しみんなに聞いてみると、どうやらどの生徒も一度家に帰るらしく、夏季休暇の時は帰らなかったリーザやクアイちゃんも一度家に帰るようで、ユーリアも二つ名持ちになった事を親に報告するために帰るらしい。
「じゃあな。みんな。また来年」
「うん、レィアさんも元気で」
「あの、その、レィアさん!また来年!です!」
「じゃーねー。今年はありがと。レィア」
各々が帰路へとつき、やがてアーネの家の馬車も聖学についた。
「じゃあな。二人共。また来年」
「………ん。おかあさん、いってきま、す」
「おう、あんまり迷惑かけるなよ?」
シエルの頭をくしゃりと撫でてから、小指の先ほどの小さなダイヤモンドを渡す。少しぐらい小遣いをあげてもいいだろう。
「貴方も。くれぐれも死なないように気をつけるんですのよ?」
「そうそう死にゃしねぇよ」
その言葉を言ってすぐ、アーネ達の乗った馬車が動き始める。
すぐに勢いにのり、みるみるうちに小さくなっていく馬車を見て、ようやく俺は歩き出す。
日が暮れないうちに少しでも進もう。
目的地はヒト種最東の地、紅の森だ。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,558pt お気に入り:1,653

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:206,917pt お気に入り:12,102

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:67,149pt お気に入り:23,305

食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:223

おっさん探訪記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:1

かっぱかっぱらった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:207pt お気に入り:0

処理中です...