大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

第九夜と攻防

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ついに第九夜が始まった。
結局ヤツキは夜になる直前まで寝ていて、剣のことについては全く聞けなかった。余程疲れていたと見るべきか、あえてこの時間まで寝ていたと見るべきか…まぁ、ここは好意的に取ろう。
で、日が落ちた途端にモンスターパレードだ。話す暇もない。
「アーネ!!」
と、俺が叫ぶだけでアーネが意図を理解。鋭く絞られ、さらに圧縮された魔法が俺の頬を掠めながら通過、俺の目の前に立つ二つ首の鬼型魔獣の心臓部分に大穴を開ける。
が、しかしそれでも魔獣は倒れない。
それどころか、手にしていた俺の胴体よりも太い棍棒を突き出し、殺しにかかってくる。
「チッ」
それを《千変》をつけた左手の甲でいなし、一歩踏み込む。
さらに一歩踏み込み、俺の領域まで入ったところで右の《千変》に装着された黒剣を起こす。
今まで右に握っていた白剣を引き締まった腹へ突き刺すが──その締まった筋肉が鎧と大差ない働きをし、白剣はほとんど刺さらない。
すぐさま右手が握った黒剣を大きく振りかぶる。
「せあぁっ!!」
白剣よりも圧倒的に重い黒剣の刃がズグリ、と左の胸から入り、アーネの開けた穴まで到達、そこから真横に跳ねて右の胸から飛び出る。
『『ゴグォォォォ…』』
「ッ!」
黒剣をしまい、突き刺した白剣を逆手で握り直して軽く跳躍。
『『グ、ゴオオ──!!』』
まだしぶとく生きる双頭の鬼。完全に切断したはずなのに、どうやってかまだ進み、俺を捕まえようとしてくる。
「ッ、落ちろ!!」
空中で身体を小さく縮めながら捻り、両の足の裏を魔獣の鎖骨あたりに向ける。
ゴッ、キッ──と。
強靭な骨が白剣の能力で超重量化した蹴りで砕かれる感触、それに遅れて足が魔獣を蹴っているという抵抗感が無くなる──否、抜ける。
胸から下だけ残し、それより上は結界付近に吹き飛ばされ──ほかの魔獣達の間に紛れていく。
最後までは見えなかったが、恐らく何十もの魔獣に踏み潰され、肉塊となったのだろう。
「アーネ!魔力はあんまり消費するなよ!ハーフのチビ!私と交代だ!」
「………ちび、っていう、な!!」
地面が爆ぜる音と共に小さな弾丸が魔獣の群れに突入する。
直後、吹き上がる血、そしてそれは重力に従って落ちるのではなく、空中で形を取る。
取った形はシエルがよく握るようなナイフ型の刃。
それが音もなく魔獣の群れに潜り込み、次々魔獣の身体を切り刻んでいく。
その身体から溢れる血もまた刃になるのだろう。
「シエル!無茶すんなよ!!」
「………だい、じょうぶ!」
第九夜はまだまだこれから──
唐突に飛んできた魔法を、自前の魔法返しのみで掻き消しつつ剣を構える。
「今俺に魔法撃ってきやがった糞野郎はどこだ!!」
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