大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

被害確認と意識

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何はともあれ魔獣進行モンスターパレードは終息、何をしたかったかは分からなかったが魔族二人共が大人しく結界の外に帰っていった。目的はさっぱりだったが、結果は大きく残った。
まず第一に森への被害。
森の木の約四割がなぎ倒され、真上から見たら森は大きく欠けて見えるだろう。
次に森の様々なところに配置していたナナキの人形。
端的に言ってしまうと、ナナキの作った人形は全て破壊されてしまった。
しかし人形達は仕事を全うしたらしく、彼らの周りには何十もの魔獣の死骸が転がっていた。
問題は第何夜で彼らが果てたかだ。ここを突破した魔獣が居ないことを願うが…少し確認してみると、第七夜の魔獣までなら確認できた。それ以降はサッと見た限り分からなかった。
最後に人的被害。
アーネは魔力の枯渇で気絶、シエルはスキルを使用しすぎた結果疲労が溜まって気絶、他にはアーネが肩を強く打っていたが、まぁ骨折ほどではない。シエルは身体の至る所に擦り傷切り傷があったが、やはりその程度。二人は軽傷な方だった。恐らく一日も放っておけばそれなりに元気になるはずだ。アーネの魔力枯渇は最悪の場合また俺が補給しなければならないが…その時はその時だ。
ヤツキは左肘と左肩の骨折、及び胃袋、肺へのダメージがあった。いつの間に負ったのか全く分からないが、とりあえず救護キットで応急処置はして、痛み止めも飲んでいるため、本人は至って楽そうだ。
で、俺。
右の踵と股関節、あといつの間にか肋もやってたらしい。あとはちょっと熱。ちょっとヤバい。
どのぐらいヤバいかと言うと、帰りに自力で帰れず、マキナを起動して俺をおぶって貰ったほどだ。ちなみにマキナは俺の他にアーネとシエルも担いでた。
つまり自力で帰ることが出来たのはヤツキただ一人と言う事だ。先程の人形のところへ行く時もずっと背負われていた。
『情けないなぁ、お前』
やかましい。もはや声を出すのも億劫だ。
あぁくそ、熱のせいで思考も視界もぼんやりする。金属でできたマキナの身体が冷たくて気持ちいい。寒いと思っていた風もむしろ心地いい。
吐く息が真っ白なのをぼんやり見ていると、ヤツキがこちらに声をかけてきた。
「おい、大丈夫か?かなり顔が赤いが」
「大丈夫な訳がないだろ。今にも意識が飛びそうだよ」
「それだけ言えるなら大丈夫そうだな」
「大丈夫じゃねぇっつってんだろ」
今だって大丈夫そうに見せてるだけだ。スキルで身体をガチガチに縛って辛うじて意識を保ってる程度。
クソ、悪寒が酷くなってきた。震えそうな身体を押さえつける。
それでも意識を保っているのは二人きりになりたかったからだ。マキナ?ありゃ俺だ。ノーカン。
「どうして俺を庇った?」
「うん?」
「産獣師が来た時、どうしてお前が《勇者》だって嘘をついたんだ?」
口から滑り落ちたのはそんな疑問。
彼女がよく言う命の価値の問題だろうか。それにしたってあまりにもそれに固執するのは──なんというか、同じであるはずのナナキの思考からはかけ離れているように思える。
「それは──」
あ、ダメだ。意識が落ちる。
クソ、返事を聞きたかったのに──
『まぁ、なんだ、お疲れ』
シャルのそんな一言が頭に響いた。
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