大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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どうやら《黒法師》は俺より随分と真面目に調べていたらしい。
『──という訳で無名の生徒として可能性が高いのは今言った一年の生徒二名、二年の生徒四名、三年の生徒三名が。先生方の中では二名。二つ名持ちの中では…やや言いにくいですが、《臨界点》が怪しいと私は睨んでいます』
「はン、なるほどねぇ」
朝食を軽く済ませ、何もすることが無くなれば必然、話は例の話になる。
話を聞いてみたところ、どうやら俺が学校で色々と騒ぎながら過ごしている裏で、彼女はかなり頑張っていたらしい。それも、長期休暇の時も学校に泊まり込んで。
謎の魔法陣を描く生徒を(力ずくで)止めたり、ヘドロのような魔獣を人知れず一人で倒したり、ある時は直接校舎に大魔法を放とうとした生徒達がいた事もあったらしい。
その誰も彼もが半ば意識を奪われた人形のような状態で魔法陣を描いたり大魔法を放とうとしたらしいのだから、明らかに異常だ。
「その報告ってのはどうやってたんだ?」
『ハウナ様から、その月の最後の日のみ夜零時から十分だけという厳しいルールがありますが、近距離メッセージを繋ぐことが出来る魔導具をお借りしています』
「へぇ」
便利だな。羨ましい。
「で、問題は《臨界点》の方なんだが。何でこいつも疑ってるんだ?」
『彼ほど疑わしい人物もいないでしょう。素性素顔出身実力、どれも不明。辛うじて分かっているのは彼が魔法を使う魔法使いマジックキャスターであろうという事ぐらいです。そしてその行動の殆どは誰も知らないのですから』
そう言われるととんでもなく不審な人物だな。というか性別間違われてんぞ。わざわざ指摘はしねぇけど。
…そうか、言われてみればそうだな。しかも第三派閥とか作ってるしな。何かやらかしそうなヤツナンバーワンじゃないか。
「ふーん…他の無名の生徒達は確か」
『はい、全員一度以上事件を起こした者達です。
《黒法師》がによると、いくら魔族と言っても、人をコントロールするのは一苦労らしい。一人ひとり個性が強く、抵抗も強いのだとか。
しかし。
『それは裏を返すと、何度もコントロールを繰り返せば非常に馴染むという事です。長い時間をかけて馴染ませ、意のままに操れるようになったヒト。そうなったを、奴らは手放しません。むしろ、多少のリスクがあっても何度でも使うでしょう』
ふぅん、長い時間をかけて馴染ませて……ねぇ。
「……あれ、てことはもしかして、あいつも該当すんのか…………?」
ポツリとそう言った。
言ってしまった。
「あ」
今ここに誰がいるのか。それがどんな奴なのか、つい昨晩身をもって体験したばかりじゃないか。
『誰ですか?』
笑顔すら浮かべて《黒法師》が聞いてくる。
嫌な予感しかしない。
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