1,000 / 2,040
本編
魔獣と乱戦
しおりを挟む
緩い傾斜を駆け下り、右手で胸の上で跳ねている金剣に触れ、それを勢いよく首から引きちぎる。
具現化した金剣は夕焼けを反射し、燃え上がるように輝く。それを右手で握りながらさらに加速──
『さっきの狙撃手は!?』
『大猿の親玉みたいなやつ。ああほら、今振りかぶって──』
どいつだ?
ざっと見渡すと…いた。
視界の太ったオランウータンのような外見の巨大な猿。首周りからは直に生えているのだろうか、鉄塊がいくつもなっていた。
『見つけた!!』
超高速で投げられた鉄塊をワンステップで回避、勢いを殺すことなく、むしろさらに加速して──
──そして跳躍。
ドゴンッ!!と砂を散らし、一直線に大猿の所目掛けて矢の如く跳ぶ。
『ゴガアアアアアアアアアアアアアア!!』
大猿が首の周りにブドウのようになっていた鉄塊を一つもぎ取り、投石機のように勢いをつけて投げる。
『銀、剣!』
金剣を持ったまま銀剣を左手に握り、真っ向から鉄塊を叩き砕くように破壊。
さらに回転を加え、大猿の上に着地すると同時に顔面へ銀剣を叩き込む。
ぶごじゅっ、と手応えが伝わる。肉と骨、さらに脳が一緒くたに叩き潰される手応えだ。
まずは一匹。だが──団体様のド真ん中に着地したのだ。狙われない訳がない。
今はまだ戸惑っているらしく、魔獣から何かをしてくることは無いが、四方八方を魔獣に囲まれて何もされない訳が無い。今のうちに──
『血界は!?』
『偶数番だけ解禁な。つっても実質《血呪》だけだが』
『そんだけありゃ充分だ!!』
背中が熱を持ち、ざわめき、脈打つ。
『第二血界《血呪》、血海併用、全開放だ!!』
たった今死んだ猿の魔獣からも血を吸い上げ、身体に《血呪》の紋様を刻み始める。
『無茶はするなよ』
ズルズルと黒い紋様が身体の表面を這いずり回る。やがて、自我を持っているかのようなそれらは自分が気に入った場所を各々見つけたのか、そこに定着する。
それが全身に回った瞬間──爆発でも起こったような雄叫びが上がる。
『遅ぇ!!』
金剣と全力血呪を併用している今。
俺より早い存在はこの場にいない。
戦技は不要。使う手間すら惜しい。
『オ──オォッ!!』
金剣の横薙ぎで鹿を狩り、一歩踏み込んで背後の蟹の一撃を回避、真上に跳躍して膝を巨人の顎に叩き込み、後頭部を掴んで半回転。首をへし折りながら着地。それと同時に金剣の能力をもう一度引き出す。
真横に飛び退き、左から迫る小さな象の魔獣の額に銀剣の切っ先を突き入れる。
『後ろ蜂。右から熊』
『正面!』
象から剣を引き抜き、逆手に握って前に突っ込む。
『ゴオオオガアアアアアアアア!!』
正面から両手を組んでハンマーのように振り下ろすオーガの一撃を、銀剣で少しだけ逸らしてステップ。
金剣が大した抵抗も許さずにオーガの首を切り裂き、ころりと落ちた首を後ろから迫ってきていた一メートル越えの蜂に蹴飛ばして当て、怯んだ所を真っ二つにする。
日が沈み、夜がやってこようとも。
俺は戦い続けた。
具現化した金剣は夕焼けを反射し、燃え上がるように輝く。それを右手で握りながらさらに加速──
『さっきの狙撃手は!?』
『大猿の親玉みたいなやつ。ああほら、今振りかぶって──』
どいつだ?
ざっと見渡すと…いた。
視界の太ったオランウータンのような外見の巨大な猿。首周りからは直に生えているのだろうか、鉄塊がいくつもなっていた。
『見つけた!!』
超高速で投げられた鉄塊をワンステップで回避、勢いを殺すことなく、むしろさらに加速して──
──そして跳躍。
ドゴンッ!!と砂を散らし、一直線に大猿の所目掛けて矢の如く跳ぶ。
『ゴガアアアアアアアアアアアアアア!!』
大猿が首の周りにブドウのようになっていた鉄塊を一つもぎ取り、投石機のように勢いをつけて投げる。
『銀、剣!』
金剣を持ったまま銀剣を左手に握り、真っ向から鉄塊を叩き砕くように破壊。
さらに回転を加え、大猿の上に着地すると同時に顔面へ銀剣を叩き込む。
ぶごじゅっ、と手応えが伝わる。肉と骨、さらに脳が一緒くたに叩き潰される手応えだ。
まずは一匹。だが──団体様のド真ん中に着地したのだ。狙われない訳がない。
今はまだ戸惑っているらしく、魔獣から何かをしてくることは無いが、四方八方を魔獣に囲まれて何もされない訳が無い。今のうちに──
『血界は!?』
『偶数番だけ解禁な。つっても実質《血呪》だけだが』
『そんだけありゃ充分だ!!』
背中が熱を持ち、ざわめき、脈打つ。
『第二血界《血呪》、血海併用、全開放だ!!』
たった今死んだ猿の魔獣からも血を吸い上げ、身体に《血呪》の紋様を刻み始める。
『無茶はするなよ』
ズルズルと黒い紋様が身体の表面を這いずり回る。やがて、自我を持っているかのようなそれらは自分が気に入った場所を各々見つけたのか、そこに定着する。
それが全身に回った瞬間──爆発でも起こったような雄叫びが上がる。
『遅ぇ!!』
金剣と全力血呪を併用している今。
俺より早い存在はこの場にいない。
戦技は不要。使う手間すら惜しい。
『オ──オォッ!!』
金剣の横薙ぎで鹿を狩り、一歩踏み込んで背後の蟹の一撃を回避、真上に跳躍して膝を巨人の顎に叩き込み、後頭部を掴んで半回転。首をへし折りながら着地。それと同時に金剣の能力をもう一度引き出す。
真横に飛び退き、左から迫る小さな象の魔獣の額に銀剣の切っ先を突き入れる。
『後ろ蜂。右から熊』
『正面!』
象から剣を引き抜き、逆手に握って前に突っ込む。
『ゴオオオガアアアアアアアア!!』
正面から両手を組んでハンマーのように振り下ろすオーガの一撃を、銀剣で少しだけ逸らしてステップ。
金剣が大した抵抗も許さずにオーガの首を切り裂き、ころりと落ちた首を後ろから迫ってきていた一メートル越えの蜂に蹴飛ばして当て、怯んだ所を真っ二つにする。
日が沈み、夜がやってこようとも。
俺は戦い続けた。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。
「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」
と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる