1,027 / 2,040
本編
獣と剣
しおりを挟む
『いいか?三大魔候の中で、直接的な戦闘で最も弱いのが産獣師だ。これは間違いない』
「へぇ、直接的な戦闘でってのはどういう意味だ?」
『文字通りだな。剣ぶん回すとか、ゼロ距離で殴りあったりとか、魔法とか魔術で戦ったりとか。まぁ、そう言う本人が出張って戦うなら間違いなく産獣師が一番弱い』
だと言うのに俺は軽くあしらわれたのだが……まぁ、疲れていたからだということにしておこう。
『あいつの真骨頂は、キマイラミストって呼んでるあの黒い霧だ。あれが変幻自在に変化してあらゆる魔獣に変化する。さらにあれその物が魔法や魔術のサポートをする杖の役割も兼ねてる。この二つを組み合わせて使う攻撃は、お前が見たことない技を見せてくれるだろうよ。初代の言葉を信じておくなら、産獣師にお前を殺す気は無いはずだが、一応教えておく』
「ってーとどんな?」
『そうだな──』
そこまで思い返した所で、俺の頬を掠めて鋭い爪が通過、一拍遅れて爪が描いたその軌道上が燃え上がる。
「これか」
『あぁ。産獣師のオリジナル魔法』
魔法獣。
魔法を込めた獣を生成し、その獣は魔獣を超える身体能力と尋常ではない威力の魔法を使う。
能力としては比較的単純だが、それ故に突破も困難。
「あら、余裕ね。あなた、今どんな状況かわかってるのかしら?」
「分かってるさ。充分」
俺を囲む三体の猛獣。赤の獅子、青の狼、緑の虎。
それぞれの行動そのものに魔法がかかっている、いや──起こす行動全てが魔法となっているのか。
「殺す気はないんじゃなかったのかよレイヴァーさんよぉ…!」
込められた魔力は尋常じゃない。もし受けても、多少は軽減されるだろうが──それでも魔法返しで相殺しきれる威力を超えている。
繰り出される攻撃を全て避け、逸らし、決して正面からぶつかり合うことはしない。
「どうしたの?まさかあれだけ格好いい事言っておきながら、全部ハッタリだったのかしら?」
「舐めんなよ…!」
三匹の獣の攻撃、その合間を突いてありったけの力を込めて右の黒剣を投擲。狙いはダルそうに立ち尽くしている──産獣師!
「あらこわァい」
しかしそれを、青狼が神速の勢いで咥えて止める。
そう、咥えて止める。
黒剣を──
『!?』
直後、ガジャアン!!と盛大な音を立てて青狼が頭を床に叩きつける。
「何っ!?」
赤獅子と緑虎が産獣師の声に反応してそちらを見る。当然──攻撃は一度止む。
「スキあり、だ」
反応したのは緑虎。
俺の右手には既に抜かれた金剣──
「《音狩》!」
ドッ、と。
謁見の間に広がった音は一度だけ。
俺の発動した戦技が緑虎の巨大な首を断ち切り、ごろりと転がって黒い霧になる。
「まずは一体」
「へぇ、直接的な戦闘でってのはどういう意味だ?」
『文字通りだな。剣ぶん回すとか、ゼロ距離で殴りあったりとか、魔法とか魔術で戦ったりとか。まぁ、そう言う本人が出張って戦うなら間違いなく産獣師が一番弱い』
だと言うのに俺は軽くあしらわれたのだが……まぁ、疲れていたからだということにしておこう。
『あいつの真骨頂は、キマイラミストって呼んでるあの黒い霧だ。あれが変幻自在に変化してあらゆる魔獣に変化する。さらにあれその物が魔法や魔術のサポートをする杖の役割も兼ねてる。この二つを組み合わせて使う攻撃は、お前が見たことない技を見せてくれるだろうよ。初代の言葉を信じておくなら、産獣師にお前を殺す気は無いはずだが、一応教えておく』
「ってーとどんな?」
『そうだな──』
そこまで思い返した所で、俺の頬を掠めて鋭い爪が通過、一拍遅れて爪が描いたその軌道上が燃え上がる。
「これか」
『あぁ。産獣師のオリジナル魔法』
魔法獣。
魔法を込めた獣を生成し、その獣は魔獣を超える身体能力と尋常ではない威力の魔法を使う。
能力としては比較的単純だが、それ故に突破も困難。
「あら、余裕ね。あなた、今どんな状況かわかってるのかしら?」
「分かってるさ。充分」
俺を囲む三体の猛獣。赤の獅子、青の狼、緑の虎。
それぞれの行動そのものに魔法がかかっている、いや──起こす行動全てが魔法となっているのか。
「殺す気はないんじゃなかったのかよレイヴァーさんよぉ…!」
込められた魔力は尋常じゃない。もし受けても、多少は軽減されるだろうが──それでも魔法返しで相殺しきれる威力を超えている。
繰り出される攻撃を全て避け、逸らし、決して正面からぶつかり合うことはしない。
「どうしたの?まさかあれだけ格好いい事言っておきながら、全部ハッタリだったのかしら?」
「舐めんなよ…!」
三匹の獣の攻撃、その合間を突いてありったけの力を込めて右の黒剣を投擲。狙いはダルそうに立ち尽くしている──産獣師!
「あらこわァい」
しかしそれを、青狼が神速の勢いで咥えて止める。
そう、咥えて止める。
黒剣を──
『!?』
直後、ガジャアン!!と盛大な音を立てて青狼が頭を床に叩きつける。
「何っ!?」
赤獅子と緑虎が産獣師の声に反応してそちらを見る。当然──攻撃は一度止む。
「スキあり、だ」
反応したのは緑虎。
俺の右手には既に抜かれた金剣──
「《音狩》!」
ドッ、と。
謁見の間に広がった音は一度だけ。
俺の発動した戦技が緑虎の巨大な首を断ち切り、ごろりと転がって黒い霧になる。
「まずは一体」
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる