大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

部屋と経過

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どうやら馬車に乗ってからすぐに意識がトんだらしい。途中から記憶がない。
最後に覚えているのは、馬車に揺られて「あー疲れたー」とか思いながら背中が壁につかないよう気をつけて肩で寄りかかっていたら……うん、思い出せるのはここまでだ。半ば気絶するように寝てしまったのだろう。お陰で軽く騒ぎになったらしい。
話に聞いたところによると、血塗れの背中を見てラウクムくんが騒ぎ、リザが慌て、クアイちゃんが騒ぎを大きくし、アーネが治癒にかかり、シエルが何故か俺の頭を撫でていたらしい。
「全く…怪我をしていたのなら言えば良いんですのよ!」
気づいたら部屋のベッドの上。手際はいつも通り上々。後で風呂の鏡で背中を見てみたところ、背中が広範囲にわたって皮やら肉がベロンと剥けていたらしい。肩甲骨のあたりから腰の辺りまでが剥けたピンクの皮膚に新調され、その上から…いや、下から浮き出るようにして《勇者紋》が薄らと見えてきていた。
で、進級の話だが、結果までまだ暫くかかるそうな。俺に関しちゃ首をかなりの量ぶち込んだから多分大丈夫。丸二日ほど試験を投げたが、それでも初日の終わりに屍でひと山できそうな程度には狩ったし。こっちは不安じゃない。
アーネ達に関しては、一人あたり四個から五個程度の首級を取ったそうな。どんな魔獣だったかは聞いていないからなんとも言えないが、五人パーティで四から五となると、二十体以上は倒したという事になる。実力はかなりあると言って良いだろうが…仮にタッグを組んだペアが本気で三日取り組んだ場合、同じく二十体狩ったとするなら取り分は単純に考えて十ずつ。他の所がそんな事ばかりしていたら…と考えると割とピンチなのかもしれない。
今は結果を待つだけ。ちなみに、首の数は口外しないように言われている。それで判断基準を知られたくないからだそうな。
基本的に口約束だから効力はほぼ無い、こっそりみんな言い合うんだろうなー、なんて思っていたら、なんと生徒証に書いてあった。反故した場合、試験の結果に響くかもよと示唆してあった。抜け目ない。
さて、最後にシステナの今後の扱いだが、ひとまず来客者として学校長が身元を一時的に預かるのだそうだ。本来なら、一刻も早く親を探して帰すべきなのだろうが、この神サマに親など当然いるはずも無い。居ないはずの親を探して、遠距離メッセージを何度も何度も往復させることになるだろう。
何も無い所だから、気難しい神サマは随分と文句を垂れるかと思っていたのだが、いろんなクラスに顔を出して楽しんでいるようだ。システナ曰く。
「天界よりも退屈な所など存在せぬわ」
とのこと。
そして大南下から丁度今日で──三日経った。
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