大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
38 / 2,040
本編

不動とタイマン2

しおりを挟む
戦技アーツってのは、基本的に、なぞられた動きしかできない。これは、戦技アーツが何十回、何百回、何千回と繰り返した動きから発生する動き、攻撃だからだ。
動かせるのは、せいぜい数センチ程度。だから、タイミングを完璧に合わせるだとか、もしくは今現在自分がそうなっているように、相手が動けないようにして撃つことが多い。
基本的に人ってのは空中にいたら、回避行動もクソもないし、《不動》のナイトランスを自分の双剣で受けるのはまず無理だろう。
大剣なら身体隠せたからなんとか防げたかもしれないけどさ。
「『ストライク・スラスト』!」
明らかに人を殺す勢いの戦技アーツ
この双子、熱くなるとやりすぎる傾向にあるみたいだな。
このまま落ちると、喉元から背骨をかするようにして背中へ突き抜ける形になりそう。
ふと、串刺し公とかいう単語が頭の中をよぎったが、そんなことをしているうちに当たる直前まで来た。
自分の手の位置は弾かれたときにバンザイになったまま。ここから引き戻すのはもう無理だ。
まぁ、多分《荒野》の方がさっきの《不動》の時みたいに止めてくれるだろう。多分。

――たとえ模擬戦だろうと、負けたらその場で死ぬんだ。死人には話す価値もないよ。いいか?よく覚えとけよ?だから絶対負けるな?
絶対に…絶対に死ぬなよ。

そんな言葉が頭の中をよぎった。
あぁ、これは友達の言葉だ。相変わらず辛辣なセリフだ。
そうだ、負けるのは…死ぬのは嫌だな。
槍が当たるまであと指一本分ってところ?なら、まだ間に合う!
体をひねり、さらに髪を槍に絡ませ、槍を自分に引き寄せ、槍を踏み台にして、そのまま相手に突撃する。
相手の槍はまだ戦技アーツの途中。中断することも、ましてや軌道を変えることもできない《不動》は、盾で防ぐしかない。
予想通り、盾を構えた《不動》。
その構えは二つ名らしく、一切動かせる気がしない。
けど、関係ない。
その盾ごとぶった斬らせてもらう!
「っアァァァ!」
突っ込んだ勢いそのままに盾に右の剣を突き立てる!
「「!?」」
驚きの声は両方から。
自分は剣が貫通しなかった事から。
相手は盾に剣が刺さった事からだろうか?
刺さった剣に向けて蹴りをさらにぶつけて、距離を取りつつ、刺さったままにしておく。
というか、一センチ刺さったかどうかの刺さり具合なのに、抜けない。
結局不利なのはこっちか…。
それに気づいた《不動》の口が裂けんばかりに持ち上がる。
不味いな。けど、負けたくもない。今度友達に会ったときに笑われるのだけは避けたいし…それに。
「準英雄級の片割れ程度のやつに負けていられるか!」
腹の底から叫んだ。
その声を聞いた《不動》の顔が一転、無表情になる。
「なら、限りなく英雄に近い力を見せてあげるよ…!」
その一言で、《不動》のまわりの空気がガラリと変わったのがわかった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...