大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

大激突と準備

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 セラが優勝した翌日、団体戦のトーナメントも無事終わり、イベントも成功で終わると同時に司会から二つ名持ち同士のチーム対抗戦が発表された。
 タイトルは二つ名大激突。ネーミングセンスの欠片もないが、俺も無いので黙っとく。
 内容は俺が以前出した案とほぼ同じ。まぁこれも元々いつだったかの聖学祭のルールとほぼ同じだったんだが。
 さて、正式ルールは以下の通り。

 ・聖学チームと西学チームで分かれ試合を行う。
 ・選手はそれぞれ胸飾りを付け、それを破壊された場合は即時失格となる。
 ・一人だけ代表を選び、その者をリーダーとする。リーダーの胸飾りが破壊された場合はチームが敗北する。
 ・範囲は一キロ四方のフィールド。そこから出た場合は失格となる。尚、上空も同様である。
 ・試合開始から一定時間経過後、フィールドは縮小する。最終的には五メートル四方のフィールドになる。
 ・勝利したチームには優先権を与え、更に一般生徒投票で最優秀選手を決める。最優秀選手には学校が当人の希望を聞き、武具もしくは防具の贈呈をする。

 以上がルールだ。
 優先権ってのは、二つ名持ち同士の何かしら意見が衝突した場合に、一度だけ優先権を持つ者の意思が優先される権利らしい。
 現状、どちらの二つ名持ちも同等の権限を持っているので、今後を見据えての権限だ。
 間違っても何でも言う事を聞かせる権利という訳では無い。阿呆な例だが、俺の銀剣やマキナを寄越せと言って優先権は使えないということだな。
 ちなみに、このイベントは自由参加。と言っても優先権の存在がかなり不味いのは誰しも思ったらしく、ほぼ全員が参加することになるだろう。
 ……まぁ、まず間違いなく《臨界点》は来ないし、《剣姫》も若干微妙か……ユーリアは参加だろうし、しないなら師匠権限として参加させる。アーネと俺は当然参加。《雷光》もまぁ参加だろうな。四人いりゃまぁなんとかなるだろう。
 対する向こうは何人来るか不明。と言うかそもそも西学に何人二つ名持ちが居るのか、俺自身がまるで把握していないのが悪いのだが。
 多分《白虎》とこの前の《梟》は来るだろ。前者は優先権の事もあるだろうし、後者はこの前生えたばかりの因縁を付けに来るだろう。
 あとは……どうなんだろうな。
 前の聖学祭で戦った《鰐》《避役カメレオン》、あとは《豹》は前々から知ってるが、《豹》が戦うイメージってのがあんまり湧かないんだよな。アイツ情報収集専門だったりしないか?あとは元聖学生徒の《鴉》ことヴォルテール・エデルネス君とかもいたはずだが、彼は何やら大怪我をしたらしいので恐らくもう西学にも居ないだろう。
 まぁいいや。俺が把握してるのはこの辺で、他に居るのかどうかも分からんし、先日の襲撃で西学から去った者も居るだろう。
 そうすると、ひょっとして思ったより人数は少ないのだろうか。四人で何とかなる気がしてきた。
 人数差として、二つ名持ちクラスの奴が一人でも上回られると戦場が本物の地獄になりかねない。
 もし各々が互角の戦いをしている最中に、《雷光》が一人フリーになって戦場を荒し回ったら、と考えるとその地獄っぷりがよくわかるだろう。
 そう考えた結果、当日になって良いニュースと悪いニュースが判明した。
 良いニュースは、《剣姫》も参加するということ。最優秀選手の報酬に惹かれたらしい。
 悪いニュースは、西学の二つ名持ちの参戦は六名。こちらよりも多いということ。
 六人か……《白虎》《梟》《避役》《鰐》《豹》が参加するとしても、あと一人が分からん。少なくとも新顔が一人以上は居るということになる。
「情報交換をしたい。西学で二つ名持ちの中で、今回の大激突に出そうな奴って知ってるか?」
 イベント開始一時間前。チーム聖学の控え室で二つ名持ち達に声をかける。
 既に選手達は控え室で分けられ、隔離され、この時間でイベントの作戦を話し合ったりする時間になっている……のだが、あまり会話が活発でない。
 元々ウチの二つ名って派閥とかで割られてるしなぁ……仲あんまよくないんだよな。
「ん……?レィア、ひょっとして誰が参加するのか知らないのか?」
 そう思っていると、怪訝な顔をしてユーリアがそう聞いてきた。
「知らね。ユーリアは知ってんのか?」
「当然……と言うかアーネも知らないのか?」
「私は知ってますけど……貴方知らなかったんですの?」
「え……?お前知ってんの?教えてくんね?」
「寧ろ知らない方がおかしいですわよ。西学の生徒達が自分で喧伝してるんですもの」
 何それ知らねぇ。という顔をしていると、他の二つ名持ち全員が俺のことを信じられない生物を見る目で見てきた。
「いやほら、ここ数日、ちょっとあちこち居たから。偶然知らなかったんだって」
「普通にしてれば入ってくる情報だと思うがなぁ。でも、レィアが忙しそうにしてたのは知ってるから、嘘じゃないんだろうな」
 ちなみに忙しそうにしてた理由は、今回戦うこの一キロ四方のフィールドを整備するための手伝いに駆り出されていたためだ。
 学校長から「貴方が言い出したのですから、貴方も手伝いなさい。急ぎ設営を終わらせます」と、有無を言わさず労働力として強制徴収され、様々な雑用や魔獣からの護衛などをこなしていたのだ。
「で、誰が出るって?」
 俺の質問に、ユーリアがそのまま答えてくれた。
「《白虎》、《ライノ》、《イーグル》、《鰐》、《梟》、《飛蝗グラスホッパー》らしい」
 聞き馴染みのない名前が三つほどあったな。半分は新顔か。いや、戦っているところを知らないという意味では《梟》などもそうなる。前情報を得られていないというのはかなり厳しい。
「どんな戦い方をするとかどうとか知ってるヤツいるか?」
「《白虎》と《鰐》は前の聖学祭で見たから割愛するが、《犀》は《白虎》に負けず劣らずの巨漢。大盾と槍を持って突撃するらしい。《飛蝗》はひょろりとした手足の長い男だ。一回戦ってるのを見たが、よく分からなかった。試合が一瞬で終わってしまってな。得物は特に持ってなかったが、間合いが一瞬で詰められて、そのまま相手の生徒が蹴り飛ばされていた」
 つらつらとユーリアが答えてくれる。こういう所マメだよなコイツ。
「《鷹》と《梟》の鳥コンビは?」
「そっちは私も調べきれなくてな。《梟》は一部生徒に師匠や先生と言われているという話ぐらいしか分からなかった。《鷹》はそもそも姿を見ていない」
 むぅ。《梟》に狙われている俺からしたら、彼女の情報が一番欲しかったのだが。
「あ、レィくぅん……」
「どしたルーシェ」
「私ぃ……《梟》の事ぉ……少しだけぇ……分かるかもぉ……」
「お?マジで?」
「うん……あの子ぉ……刀を……使ってたよぉ……」
「刀?」
 そう言って思わず《雷光》の方を見る。
 細長く、緩やかに反っているあの独特の刃物を扱う奴など、俺は彼女しか知らない。
「な、何故私の方を見る」
「いやだって刀つったらお前じゃん。なんか知ってる?」
「刀ぐらい何処にでもある。使い手がやや少ないだけだ。それに、刀を学ぶ場もそれなりにある。それだけでは何の情報も出ないぞ」
「普通はぁ……そうなんだけどぉ……」
 と、《剣姫》が続けて話す。
「彼女ぉ……変なことやってたんだぁ……」
「変なことだ?《雷光コイツ》と同じ剣技でも使ってたのか?」
「うぅん……それはしてないんだけどぉ……多分あれはぁ……シオンちゃんの真似っこかなぁ……」
「……何?」
「《雷光》の真似事?雷魔法が使えるってことか?」
「うぅぅん……多分違うんだけどぉ、それっぽい事してたよぉ……」
 流石に《雷体化》まではないだろうが、《雷光》の剣技はそれだけで充分脅威だ。警戒せねばなるまい。
「なるほど、サンキュー。ルーシェ。誰か《鷹》を知ってる奴は……?」
 返答なし。顔すら誰も知らないらしい。余程の恥ずかしがり屋だったりするのだろうか。
「まぁ、誰も知らないならどうしようもねぇな。さて、そろそろ本題だ。誰をリーダーにする?」

 ─── ─── ─── ─── ───

 さぁ、そんな訳で開戦五分前となった。
 作戦を練ってみたは良いものの、即席のパーティでは下手に手を組むとやりにくい部分が出てくる。
 結果、互いをよく知ってる俺とアーネが組み、さらにそこにユーリアを追加した三人パーティと、《雷光》と《剣姫》でタッグを組み、《剣姫》が《雷光》をサポートするという形を取り、敵の殲滅を目指す方式にした。
 ちなみに、こちらのパーティのリーダーはユーリア。彼女なら単騎になってしまったとしても《ナイトオーダー》で複数人を相手取る事も可能だと判断されたためだ。
「そんじゃやってくか。さっきも言ったが───」
「《梟》が貴方を狙ってるんですわよね?分かってますわよ」
「本当に難儀だなぁレィアは。《雷光》、そっちは任せたぞ」
「貴様に言われずともやってみせる。そちらもしくじるなよ」
「ね、ねぇ……シオンちゃん、あんまり走らないでねぇ……?追えなくなるからねぇ……?」
 ……大丈夫だろうか。こっちのパーティ。
 少々不安を覚えつつ、軽くため息をついてマキナを装備すると同時に、イベントの開始を宣言する花火がフィールド中央から上がった。
 始まった。そう認識した瞬間、俺の頭の中で尋常ではない警告アラートが鳴り響く。
「───。」
 超弩級の殺意。息が詰まるようなそれは、鋭過ぎるが故に俺の身体が勝手に反応した。
 目にも止まらぬ早さで飛来してくる何かを、全員の数歩先に踏み出して、銀の双剣を抜剣。直後に《雷光》の身体が雷へと変化し、神速の抜き打ちを放つ。
 俺と《雷光》の得物が同時に細長く鋭いそれを切り裂き、誰にも当たることはなく左右に飛ばされ地面に突き刺さる。
 数はピッタリ五本。人数分飛ばされたそれは、非常に丁寧な作りをした矢。
「狙撃だ!まだ来るぞ!!」
 そう言うと同時に、立て続けに弓矢が飛来してきた。
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