ヒアラ・キュアー

るろうに

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2章

37話 私達も上位ランカー…?

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10人が元探検課に足を運ぶと、そこにはもう元あった探検課の姿は無くなっており、別の課が移設されていた

「これは…アカネさん?」

「いえ、これは…私も何も聞かされていません」

どういうことだろう…私達への連絡はともかく、社員のアカネさんにまで連絡が無いというのは明らかに異常事態だ

「あーらら、アカネさ~ん?何か悪いことでもしちゃったんじゃないのぉ~?♪」

「紙織さん!?そんなことしてないですよ!戦いに行ったのも室長の司令で…」

そうこうしていると、移設された課の職員がアカネに気づいて近づいてきた

「あ、元探検課のアカネさんですか?森川さんが司令本部まで来て欲しいって言ってました!」

「そうですか、分かりました。」

ビジネススマイルを華麗に向けたアカネだったが、振り返った時嬉しそうにガッツポーズしてたのを一同は見逃さなかった

…かわいい

その後、アカネに連れられて地下へのエレベーターへとやってきた

「…紙織、墨江、私達司令本部とか初めて来たよね」

「おいおい嬢ちゃん達もか?俺も結構探検課常連だったのに知らなくてビビってたんだが、同じ境遇の人がいて良かったぜ」

「私とキュアーも知らないよね。ノノとスズハさん達は?」

「俺も知らないな」

「私達は、アカネさんとパーティでしたし、色々あったので少々…」

「へぇ~!そうなの!?ねぇどんな感じ?アニメみたいに要塞みたいなメカメカした所!?司令本部だもんねー!凄そうだなぁ」

「…別に、そんな大層なものは何もありませんよ。確かにシェルターのようになっており機械類も最新となってますが、アニメや漫画ほどの設備は揃ってません。オペレーターも戦術的なサポーターはいないので、出撃指令があるだけでその後の援助等は特に見込めないのです。」

「ちぇー、そうなんだ。少し残念」

「残念ですみませんね。」

地下へ進むエレベーターはいつの間にか到着しており、扉が開くと同時に声が聞こえていたのか、森川室長が憎まれ口を漏らしながら登場した

「森川さん!色々と聞きたいことが…!」

「そうでしょうね…まぁ、長い話になりますから、奥へいらしてください。各パーティの代表の方だけで大丈夫ですので、他の方は待合室にてお待ちください。シミュレーションによるトレーニングルームも新設してます。」

「シミュレーションの!?」

「トレーニングルーム!?☆」

キュアーと紙織は名前だけで目を煌めかせノリノリで向かっていった。他の連中も待合室へゆっくり歩いていった

ヒアラとアカネ、ドーズ、筆子は森川室長に連れられ奥の部屋へと案内される

「スズハさんは来なくていいんですか?」

「スズ姉とマホロさんはヒアラさんのパーティに入りますから」

「あ、そうか」

「あら、そうなんですか?あの2人がヒアラさんのような若い方の下につくなんて珍しいですね」

「…なぁ、筆子の嬢ちゃんや、俺はあの話の詳細を寝てて聞けなかったんだが、何か知ってるか?」

「分からない。私も列車では寝ちゃってたから。」

「そうかぁ…ヒアラの嬢ちゃん、あの2人が入ったらもっと強くなっちまうな!俺も負けてられねぇぜ!」

「私達も、前を譲る気は無い。」

4人はしばらく導かれるまま歩いていたが、5分程歩いた先の部屋へ案内される

「ここが記録室です。衛星からの映像を記録し解析を行っている場所です」

部屋の中には沢山のパソコンとデスク、それに正面には大きな画面と映像が表示されていた

それはヒアラ達がソウヤ達と1体目の次元龍を倒した後、怪我人を1度避難させている時の映像だった

「これは惨い…上から見ると尚更被害のでかさが伝わりますね…ここに何が?」

森川室長が映像を出してるスタッフに指示を出すと、その時の次元の穴に向かってズームを始めた

かなり近づき画面いっぱいに穴が広がると、穴の中に何かが見えた気がした

「あっ、今何か…」

「ん、ヒアラの嬢ちゃん、何が見えたんだ?」

「いや、分かんないんですけど、何か見えた気がして…」

「そうです。ヒアラさん、よく気づきましたね。…もう少し拡大してくれる?解像度もあげてちょうだい」

スタッフが画面を拡大させ解像度を上げると、次第にその映像が見えてきた。画面には、渦の中に立つ2人の人影が映っていた

「…次元の穴の中に人が!?」

次元の穴から丁度出てきたところを見ていないアカネとドーズと筆子はとても驚いていた。次元龍だ通るだけだと思っていた3人にとって、そこを人が通れるというのは今後の戦いにとって大きな意味を持つことだったのだ

「…嘘でしょ。次元の穴って召喚する時に出るものじゃないの。もしどんな生命体にでも使えるただのゲートの役割なんだとしたら…使われ方次第では、やばいかもしれない。」

「あぁ、筆子の嬢ちゃん、俺もそれを考えていた。これまでは各地域や内容で依頼レベルを定めていたが、突発的にイレギュラーな災害が起こる可能性もあるってことだ。たとえ今回のリベレーター制度があったとしても、低ランクのリベレーター達は単体パーティじゃ行動できなくなるぞ」

「そうです。むしろその判断が出来るようにするのがこのリベレーター制度という訳です。今回の件で、次元の渦は人為的に起こされたものと判断し、今後は危機に対して確実に対応したいと思います。なので少数精鋭の高ランクパーティに同じ人数で挑みたくなる気持ちは分かりますが、残念ながら能力で劣る方々には更なる活躍の場を与えるべく、複数パーティでの合同受注を可能とします。」

…ん?どういうことだ?今後は低ランクの依頼でも不測の事態が有り得るから複数パーティで受けないといけなくなるってこと?

「そのランク付けは具体的にどうやって定めるんですか?勝手に決められたら不服を唱える探索者…リベレーターの人達もいると思うんですけど」

「そうですね。なのでランクに関しては1度皆さんまっさらな状態、Gランクにさせてもらいます。そこから分かりやすくこれまでの受注依頼のランクや回数を計算して本人たちにも目に見える形で分かりやすく点数をつけます。その合計点でランクを決定します。今後も依頼自体のランクは定めるので、そこで加点してランクを上げていくイメージです。」

なるほど…前キュアーが言ってたアニメか漫画の冒険者の制度に近いイメージか、依頼をこなすことでランクを上げる。これまでのは自分達のれっきとした結果からランクつけをするので文句を言う人も少ないだろう

「しかし、色々と納得されない方もいると思います。そこで今回前代未聞の活躍をした皆さんに先陣を切ってこの制度を浸透させてほしいのです」

「そういう事ですか…。良くも悪くも、覇王龍との戦いは全国に広がっちゃいましたしね」

「そうですね。映像の件、私達も現在漏洩元の追求を続けていますが…すみません、命を懸けて日本のために戦ってくれた皆さんの頑張りを見せ物にするような形になってしまって…」

森川室長は申し訳無さそうに頭を下げた

「いえ、そんな…ここの皆さんがやったわけでもあるまいし、大丈夫ですよ。結果勝利して英雄の凱旋になったんですから」

アカネさん、なんか少し嬉しそうに見えるな。気のせい?

「ありがとうございます。それでは、ここからが重要な点なのですが、皆さんのパーティーのランクをについてお話してもいいですか?」

ついに本題…?のランクだ!リベレーター制度を聞いてからみんな正直そこが1番気になってたところだと思う。ほかの3人も固唾を飲んで聞いている

「まずドーズさん。あなたはとても強く他のメンバーを率先して引っ張れるだけの実力があります。残りのパーティの3人が別任務から戻ってきたらAランクリベレーターとして活動してもらいます」

「おう!早速Aランクか!下がGならかなり上じゃないか?」

すごい…!今回は1人だったからその分功績も1人分で跳ねたのかな?

「続きまして、アカネさん。」

「え?私ですか!?リベレーターランクあるんですね…!?」

「はい。正直受付だけで頑張って欲しいですが、今回の活躍を見て、今後何かあった時の切り札としてあなたの実力は数値化しておく必要がありました」

「まぁ、そうですよねぇ…」

「ランクは、Sです」

「…え?」

え?S?まぁ、Aランクの上があるならそんなとこだろうとは思ってたけど、アカネさん、単身でSですか!?す、すげー!

アカネは戸惑いすぎてあわあわしながらその場をクルクルしだしていた

「次に筆子さんの習字ガールズですが、こちらもSです。3人それぞれ高い実力を持ち、リベレーター最年少パーティでありながら最高のチームワークで日本の未来を担ってくれることを期待してますよ」

「…わかった。期待されてるなら頑張る」

筆子ちゃん、ちょっとシャイだけど褒められたりしたら素直に喜ぶの可愛いなぁ…子犬みたいだ

「最後にヒアラさん」

「は、はい!!」

ついにきた!どうなるんだろう…私単体ならともかく、今はスズハさん達も加入したからSくらい行けたらいいな…でも私とキュアーとノノはまだ未熟だからバランスとってAとか?

「速さの天啓のノノさん、それに日本最強の2人と名高いスズハさん、マホロさんを率いるとは、末恐ろしいパーティになりそうですね。」

「は、あはは…なんかすみません」

「ただ、あなたとキュアーさん…特にキュアーさんは精霊?と自称しているそうですが、正直あなた達が分からないんですよね。なので…」

ドキドキ…運命の瞬間!?A?S!?
いや、周りがすごいから感覚麻痺しがちだけど冷静に考えよう。えーっと、Gからなら、F、E、D…CとかBでも凄そうだけどなぁ

「Xです。ユニークランクとして、今後のランク変動はありません。」

…?え?…え?え、X?なんで?
G、F、E、D、C、B、A…まぁ、Sはまだ分かる。強そうだから。けどそこからなんでX?

周りの皆も頭の上にはてなマークがついたような顔でこちらを見ている

「ほんとに分からない、あなた達2人の底力が未知数すぎるんです。合体とかしてましたよね?」

「え、あぁ…はい。」

「未確認生物、とは言わないですが、ほんとに初めてのケースで我々も困惑しているのです。なのでそういった意味も込めてXにさせてもらってます。依頼はSランク相当でも受けられる事になってます。」

なるほど…要は安心して見てられる存在じゃないってことか。まぁ確かに何回も繰り返したら死ぬような合体してる2人なんて未知数すぎるよなぁ…

「ひとまずあなたたちの実力を数値化出来るようになるまでは経過観察ということでお願い致します。」

「は、はい!分かりました!」

経過観察って…犯罪者じゃあるまいし、もう少し言い方は無かったのかね?

「とりあえず、ここでお話したかった事は以上です。後ほどヒアラさん達にはこの渦の中の人物についてお聞きしたいことがありますので、アカネさん達はこのまま解散で大丈夫です。ついでに待機してるヒアラさんのパーティメンバーを呼んできて貰えませんか?」

「ランクXか…未確認的な意味だとしてもかっこいいじゃねぇか!俺はヒアラの嬢ちゃん達ならこの名に恥じないパーティになると確信してるぜ!じゃあまたな!そのうちまた会えるだろ。」

「…短い間だったけど、同じ若い女の子の探索者…リベレーターに会えて良かった。今後も何かあったら前教えた連絡先に連絡して。じゃあね」

ドーズと筆子は笑顔で軽い挨拶をしてくれると先に扉から出ていった

「ヒアラさん…確かにあなた達の力は未知数です。列車の中で聞いた、もし本当なら気を付けてくださいね。危機が訪れた時はすぐに駆けつけます。だってあなた達は私の…初めての担当リベレーターなんですから!」

「アカネさん、ありがとうございます!またすぐにお世話になると思うのでそんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。」

「ふふ、それもそうですね。なんだか、近いうちに遠くに行ってしまいそうな気がして…」

「え?そうなんですか?」

「いえ、私は思い込みが激しいので、勝手に妄想してるだけです。気にしないでください。」

「はい!」

「じゃあ、また会いましょう!キュアーさん達は呼んできますので!」

「はーい!よろしくお願いしますー!」

笑顔で手を振り扉から出ていくアカネの背中は、出会った時の小さく可愛い背中ではなく、強く大きな背中に感じてとても安心感を覚えた
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