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本編 第1章

不死身の俺なら。

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駅での電車衝突事故から数日後。

生はボロアパートの自分の部屋で1人ベッドに転がってここ最近自分に起きた事を思い返していた。

「ビルから飛び降りようとするまでは普通の人間だったはずだ。だってその日の朝、アパートの階段で転んだ時は普通に痛かったもんな…」

30階建てのビルから落ちても骨折で済み、それならばと60階建てのビルから飛び降りてみればただの軽傷だった。

極め付けは走ってくる電車に跳ね飛ばされても身体は何ともなかったのだ。
あの後に「無敵の男」としてSNSアプリのTmitterのトレンド入りをしていたのはまた別の話。

「洋画とか漫画で見たキャラクターと同じで本当に俺は不死身になってしまったのか…全く、こんな死にたがりの俺が不死身なんて、相性最悪だろ。」

この時の生は、

死にたがりの自分自殺志願者
そして
不死身の力呪い

この2つがかけ合わせがどれだけ相性の良いものか、生はまだ気づいていなかった。


ベッドで転がったまま、寝てしまっていた生は、アパートの外から鳴り響くけたたましいサイレンの音で起こされた。

時刻は午後10時。

「な、なんだ!?近所で事故でもあったか?」

窓を開けて外を見ると生の住むアパートの隣の一軒家から炎が上がっていて沢山の消防隊や救急隊がその家を囲んで救助、消火活動をしている。

「隣が火事なのか!!このままだとこっちのアパートまで火が回ってくるかもしれない…貴重品持って避難しないと!」

思いつく限りの貴重品を持ち、生はアパートの外へ出た。アパートの隣の一軒家は未だ、激しい炎に包まれている。

「助けてください!!ウチの子がまだ家の中に取り残されているんですっ!!二階の自分の部屋で寝たままで…このままだとあの子は死んじゃいます!!お願いします!どうか助けてください!!!」
「分かりました、お母さん。今、消防隊が中へ助けに向かいますから!」
取り乱す母親を必死で落ち着かせる消防士の姿を生は少し遠くから見ていた。

火事になった家の女性の子どもがまだ家に取り残されている。しかし、二階から燃え上がる炎はとても激しく、消防隊もなかなか近づけない様子で、ただ放水による消火活動をするしか方法は無い状態だった。

この様子を見た時、生は思った。
「不死身の俺なら…。」
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