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プロローグ
『神隠しの山』
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「居るもん!!妖精はぜ~ったいに居るもん!!」
あやめちゃんは半べそをかきながらも力強く主張する。
「ば~か!!そんなもん居ね~よ!!ば~か!!」
「そうだそうだ!!ホントに居るならここに連れて来いよ!!見せてみろよ!!」
「やれやれ…この科学万能の世に在って未だにそんなものを信じているなんてあやめちゃんは子供だな~」
公園に集まっていた子供たちは一斉にあやめちゃんの言動を完全否定する。
中には大人ぶって難しい御託を並べて調子に乗っているガキもいる。
「分かったよ!!連れて来れば信じてくれるんだよね!?
今から捕まえて来るから待ってて!!」
あやめちゃんも一歩も退かない。
売り言葉に買い言葉、
お気に入りの麦わら帽子をかぶって虫取り網を片手に
公園から直結している林道から山の方へと入って行ってしまった。
「あやめちゃん!!待って!!オレも行くよ!!」
慌ててオレはあやめちゃんを追いかける。
「つっ君…君も私の言う事…信じて無いんでしょ…」
口をアヒルの様に尖らせていじけて言う。
つっ君と言うのはあやめちゃんだけが使うオレのニックネームだ。
「違うよ!!信じてる、オレ…実は幽霊とかUFOとか…え~と
サンタさんだって信じてるよ」
これはあやめちゃんに合わせようとして言った訳では無い。
オレ…最上九十九は
幽霊、宇宙人、UFOはもとより
ネッシー、雪男、チュパカブラ等のUMAに始まり
超能力、都市伝説、予言などありとあらゆるオカルトを信じているのだ。
妖精や精霊なんて余裕で居ると思ってる。
それを聞いたあやめちゃんはポカンとした表情でオレを見つめると
急に吹き出しおなかを抱えて笑い出したのだ。
「あはははは!!おっかしいの!!幽霊とUFOはいいけど
その年でサンタを信じてるの?あはははは!!」
「何だよ~妖精が居るって言っててサンタを信じないなんて
そっちの方がおかしいだろ~」
実に心外だ!!
「だって~…」
あやめちゃんは笑い過ぎて目尻に溜まった涙を拭っている。
良かった…さっきまではいじめっ子達に妖精を否定された悲しみで
滲んだ涙が笑い過ぎて出た涙にすり替わった。
それだけでディスられたサンタも報われるって物だ。
いやディスられたのはオレの方か!!
「ふふふ…」
今度は含み笑い。
「どうしたの?」
「ううん…何でもない…ありがとうねつっ君…」
満面の笑みを浮かべるあやめちゃん。
オレの心臓はバクバクと大きな音を立て、顔が上気していくのが分かる。
今思えばこれがオレの初恋だったのかも知れないな…
「ここ!!昨日はここで妖精さんを見かけたの!!」
暫く林道を歩いた先でとても大きく開けた場所に出た。
そこは一面のお花畑だ!!
赤、黄色、白、色とりどりの花がこれでもかと咲き誇っている。
あやめちゃんは一目散に奥へと駆け出す。
でも待てよ…
この山には友達数人と何度も入った事があるが
こんな場所有ったっけ?
そもそも山まではもう少し距離が有った筈…
そんな短時間の思考を巡らせていたら。
いつの間にかあやめちゃんを見失ってしまった!!
「あやめちゃん!!…あやめちゃん!!どこだ?!あやめちゃ~ん!!」
焦ったオレは花畑中を駆け回ってあやめちゃんを探し回った。
しかし見つからない…
いたずらに時間だけが経過する…
「あ!!」
麦わら帽子だ!!
あやめちゃんのお気に入りで遊ぶ時は必ずかぶってたあの…
オレはその麦わら帽子を拾い上げる。
もしかしたらこの近くに…?
「あやめちゃん!!あやめちゃ~ん!!」
しかし返事は無い…
自分一人ではどうしようもないと判断したオレは一度下山して
父さん母さんに助けを求めた。
近所の大人、警察の人、消防の人、自警団…
大勢の大人が山を捜索したが
一週間経ってもあやめちゃんは見つからなかった。
そもそもオレが話した大きな花畑その物が見つからなかったらしい…
そしてそのまま捜索も打ち切られてしまったのだ。
その後あの山に付いた別名が『神隠しの山』。
この時オレは親父に思い切り殴られた。
普段はとても物静かな人だったのだがこの時ばかりは激怒した。
しかも号泣して…それを見てオレも泣いた。
オレはあの時山に行こうとしたあやめちゃんを止めるべきだったのだ
オレは自分がしでかした事の重大さを心底思い知った。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ガバッと上体を勢いよく起き上がらせ目覚める。
慌てて時計を見ると
午前7時25分…今日は日曜日だから寝坊では無い
平日だったらヤバかった。
「夢か…」
あれは7~8年前の出来事だったが
さっきの夢のせいでついさっきの事の様な錯覚を受ける。
「何だって今更あの頃の夢を…」
何で高校生になった今あの夢を見る?
夢に疑問をもっても仕方が無いか。
体中不快な汗でグショグショだ…オレは額の汗を手の甲で拭う。
あ~シャワー浴びたい!!
ベッドに腰掛けたまま箪笥の上の箱に目をやる。
そこにはあやめちゃんの麦わら帽子が入っているのだ。
あの失踪事件の後、あやめちゃんの親御さんは
この帽子を見るとあやめちゃんの事を思い出して辛くなると
オレにこの帽子を預けてよその町に引っ越していった。
オレだって辛かった…
だから帽子を箱に詰めて忘れる努力をしたって言うのに…
「…そうだ…あの山へ行ってみよう…」
ふとそんな発想に至る。
何故だかその時、あやめちゃんが消えたあの山に行かなければいけない
そう思ったのだ。
オレはベッドから起きると取り急ぎ着替えを済ませ
箪笥の上から箱を下ろし中の麦わら帽子を取り出す。
あの頃から全く変わっていない。
可愛いピンクのリボンの付いた麦わら帽子…
その帽子を小脇に抱え
ショルダーバッグに諸々のお菓子やペットボトルの水、コンパス、筆記用具等を詰め込み
オレはあの『神隠しの山』を目指して歩き出した…。
あやめちゃんは半べそをかきながらも力強く主張する。
「ば~か!!そんなもん居ね~よ!!ば~か!!」
「そうだそうだ!!ホントに居るならここに連れて来いよ!!見せてみろよ!!」
「やれやれ…この科学万能の世に在って未だにそんなものを信じているなんてあやめちゃんは子供だな~」
公園に集まっていた子供たちは一斉にあやめちゃんの言動を完全否定する。
中には大人ぶって難しい御託を並べて調子に乗っているガキもいる。
「分かったよ!!連れて来れば信じてくれるんだよね!?
今から捕まえて来るから待ってて!!」
あやめちゃんも一歩も退かない。
売り言葉に買い言葉、
お気に入りの麦わら帽子をかぶって虫取り網を片手に
公園から直結している林道から山の方へと入って行ってしまった。
「あやめちゃん!!待って!!オレも行くよ!!」
慌ててオレはあやめちゃんを追いかける。
「つっ君…君も私の言う事…信じて無いんでしょ…」
口をアヒルの様に尖らせていじけて言う。
つっ君と言うのはあやめちゃんだけが使うオレのニックネームだ。
「違うよ!!信じてる、オレ…実は幽霊とかUFOとか…え~と
サンタさんだって信じてるよ」
これはあやめちゃんに合わせようとして言った訳では無い。
オレ…最上九十九は
幽霊、宇宙人、UFOはもとより
ネッシー、雪男、チュパカブラ等のUMAに始まり
超能力、都市伝説、予言などありとあらゆるオカルトを信じているのだ。
妖精や精霊なんて余裕で居ると思ってる。
それを聞いたあやめちゃんはポカンとした表情でオレを見つめると
急に吹き出しおなかを抱えて笑い出したのだ。
「あはははは!!おっかしいの!!幽霊とUFOはいいけど
その年でサンタを信じてるの?あはははは!!」
「何だよ~妖精が居るって言っててサンタを信じないなんて
そっちの方がおかしいだろ~」
実に心外だ!!
「だって~…」
あやめちゃんは笑い過ぎて目尻に溜まった涙を拭っている。
良かった…さっきまではいじめっ子達に妖精を否定された悲しみで
滲んだ涙が笑い過ぎて出た涙にすり替わった。
それだけでディスられたサンタも報われるって物だ。
いやディスられたのはオレの方か!!
「ふふふ…」
今度は含み笑い。
「どうしたの?」
「ううん…何でもない…ありがとうねつっ君…」
満面の笑みを浮かべるあやめちゃん。
オレの心臓はバクバクと大きな音を立て、顔が上気していくのが分かる。
今思えばこれがオレの初恋だったのかも知れないな…
「ここ!!昨日はここで妖精さんを見かけたの!!」
暫く林道を歩いた先でとても大きく開けた場所に出た。
そこは一面のお花畑だ!!
赤、黄色、白、色とりどりの花がこれでもかと咲き誇っている。
あやめちゃんは一目散に奥へと駆け出す。
でも待てよ…
この山には友達数人と何度も入った事があるが
こんな場所有ったっけ?
そもそも山まではもう少し距離が有った筈…
そんな短時間の思考を巡らせていたら。
いつの間にかあやめちゃんを見失ってしまった!!
「あやめちゃん!!…あやめちゃん!!どこだ?!あやめちゃ~ん!!」
焦ったオレは花畑中を駆け回ってあやめちゃんを探し回った。
しかし見つからない…
いたずらに時間だけが経過する…
「あ!!」
麦わら帽子だ!!
あやめちゃんのお気に入りで遊ぶ時は必ずかぶってたあの…
オレはその麦わら帽子を拾い上げる。
もしかしたらこの近くに…?
「あやめちゃん!!あやめちゃ~ん!!」
しかし返事は無い…
自分一人ではどうしようもないと判断したオレは一度下山して
父さん母さんに助けを求めた。
近所の大人、警察の人、消防の人、自警団…
大勢の大人が山を捜索したが
一週間経ってもあやめちゃんは見つからなかった。
そもそもオレが話した大きな花畑その物が見つからなかったらしい…
そしてそのまま捜索も打ち切られてしまったのだ。
その後あの山に付いた別名が『神隠しの山』。
この時オレは親父に思い切り殴られた。
普段はとても物静かな人だったのだがこの時ばかりは激怒した。
しかも号泣して…それを見てオレも泣いた。
オレはあの時山に行こうとしたあやめちゃんを止めるべきだったのだ
オレは自分がしでかした事の重大さを心底思い知った。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ガバッと上体を勢いよく起き上がらせ目覚める。
慌てて時計を見ると
午前7時25分…今日は日曜日だから寝坊では無い
平日だったらヤバかった。
「夢か…」
あれは7~8年前の出来事だったが
さっきの夢のせいでついさっきの事の様な錯覚を受ける。
「何だって今更あの頃の夢を…」
何で高校生になった今あの夢を見る?
夢に疑問をもっても仕方が無いか。
体中不快な汗でグショグショだ…オレは額の汗を手の甲で拭う。
あ~シャワー浴びたい!!
ベッドに腰掛けたまま箪笥の上の箱に目をやる。
そこにはあやめちゃんの麦わら帽子が入っているのだ。
あの失踪事件の後、あやめちゃんの親御さんは
この帽子を見るとあやめちゃんの事を思い出して辛くなると
オレにこの帽子を預けてよその町に引っ越していった。
オレだって辛かった…
だから帽子を箱に詰めて忘れる努力をしたって言うのに…
「…そうだ…あの山へ行ってみよう…」
ふとそんな発想に至る。
何故だかその時、あやめちゃんが消えたあの山に行かなければいけない
そう思ったのだ。
オレはベッドから起きると取り急ぎ着替えを済ませ
箪笥の上から箱を下ろし中の麦わら帽子を取り出す。
あの頃から全く変わっていない。
可愛いピンクのリボンの付いた麦わら帽子…
その帽子を小脇に抱え
ショルダーバッグに諸々のお菓子やペットボトルの水、コンパス、筆記用具等を詰め込み
オレはあの『神隠しの山』を目指して歩き出した…。
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