6 / 10
第六話 新しくなってる!
しおりを挟むアメリカ政府の偉いさんたちが見守る中。
私は透明に輝く魔石を置いて、説明を始める。
「魔石はマルデアにおいて資源という扱いですが、まあ簡単に言いますと。
この石を使えば、念じるだけで簡単な魔法を扱う事ができます」
「魔法、ですと」
私のプレゼンに、席についていたエリートな高官たちが、目を輝かせた。
やはり、地球人たちの興味はそこにあるだろう。
私が生きていた頃の地球では、創作の世界に山ほど魔法の類があったが、現実にはなかった。
憧れはするが絶対に実現できないもの。それが地球にとっての魔法だ。
「ええ、このように念じるのです。飛べ」
石を手にして呟くと、私の体がフワリと宙に浮く。
「おおっ」
「浮いたぞ!」
さすがに、政府のお偉いさんたちもこれには驚いているようだ。
「素晴らしい。それは我々地球人にも使えるものなのですかな」
「マルデアでは小さい子でも出来るので、使えると思います。
ただ前例がないのでやってみなければわかりません」
「なるほど。ならば実際に試してみてもいいかね」
「ええ、どうぞ」
私がテーブルに石を置くと、眼鏡の男はそれを手に取り、「飛べ」と口にした。
すると、彼の体がフワリと浮き上がる。
「ほ、本当に浮いた!」
「実在する魔法をこの目で見れるなんて、夢のようだわ」
「なんということだ……」
彼らはかなり驚いているようだ。
「あ、石が……」
地上に降りた眼鏡の男は魔石に目を落とす。
「石が先ほどよりも小さくなっているな」
「ええ、魔石は魔力の結晶であり、消耗品です。一定の魔力を消費したら消えてしまいます」
「なるほど……」
彼らは魔石の価値を見積もっているようだ。
魔石は他にも、数をたくさん集めれば色んな使い道がある。
軽い魔法を使えるだけの代物ではないのだ。
それを説明すれば、もっと大きな価値があるとわかってもらえるだろう。
ただ今回は、もう一つ別のものも持ってきた。そっちの方が実用性を即時に伝えられるだろう。
「次に、これです」
私はバッグの中から、大きな収納ボックスを取り出した。
「なっ……。バッグより大きなものが出てきたぞ」
それを見た高官たちは、目を見張っている。
「おわかりになったでしょうか。このバッグもそうですが、こちらのボックスにも収縮の魔術がかけられています。
実際のスペースよりも遥かに多くの物を入れる事ができます」
「そ、それは凄い。どれくらい入るんだね」
「これは百倍くらいですね。体積と同時に質量も収縮するので、ここに入れた物の重さは百分の一になります」
「百倍……。しかも、重さが百分の一だと」
「これが出回れば、物流に革命が起きるぞ!」
今度は、高官たちが騒ぎ始めた。
物流というのは、世界を支える重要なものだ。
トラックや船、飛行機などで食料や製品、荷物を運ぶ。
これをスムーズに行うために、どれだけの金をかけて道路を整備しているか見当もつかない。
また、物を置いておく倉庫にどれだけのスペースを取っているか。それを百分の一に出来るとしたら、地球にとっては革命だろう。
その分排気ガスが減ったら、環境にも良いとは思う。
ただまあ、今の私が持ってこれる量ではそんなに出回らないだろうけど。
「これ一つで、トラック二台分は入るのかしら……」
「輸送の規模が格段に変わりそうですな」
「在庫管理の概念も変わりますよ」
ボックスに群がるスーツの男女。
やはり、国を動かす高官たちである。
実用性が高そうなものに対するリアクションがいい。
まあ、今回はこれくらいでいいだろう。
「この魔石と収納ボックスを、こちらは商品としてご用意します。まあ、現状調達できる量には限度がありますが」
「素晴らしい。魔術文明の力は偉大ですな」
賞賛する高官たちだが、色々とまだ解決しなければならない問題はある。
何しろこの魔石もボックスも、私の給料で買ったものだからね……。
政府のサポートがないから、こっちはギリギリなんだよ。
ともかく、こちらの出し物は終わった。今度は向こうが貿易品を提示する番だ。
武器とか技術とか、そういうのはいらない。
マルデアの魔術文明には勝てないと思う。
私が席に戻ると、眼鏡の男性は気を取り直したように語りだす。
「それでは我々地球が提示するものになるが、先日通信させて頂いた中でマルデリタ嬢の要望によれば、珍しい娯楽品が欲しいという事で」
「ええ、そうです」
マルデアはすごい魔術世界だけど、娯楽はしょぼい。なんていうか、エンタメを作る気概があんまりないのだ。
「そこで、我々は地球の娯楽品を一通り用意させて頂いた。
我らがアメリカが誇る映画から、世界中の各種玩具まで揃えている。
地球の創意工夫が生み出した自慢の一品たちだ。
その中から、マルデリタ嬢のお眼鏡に叶うものを今回は差し上げたい。
電気が必要なものであれば、必要な環境まですべて準備させてもらう」
なるほど。料理と同じパターンか。宇宙人の趣味とかよくわかんねえから全部そろえた。好きなのもってけというやつだ。
私は用意された部屋に入り、中にあった娯楽品を眺めていく。
モニターに映し出されるド迫力の映像や、何やら未来感のある乗り物。
子ども用の玩具まである。
その中で、私の目を引いたのはやはりというか、アレだった。
「……これは、Play Static 5!? そしてこれは、Nikkendo Swits? Xbaxってなんだ!」
そう、ゲーム機だ。
私が死んだ1995年当時、PlayStaticという機種が出ていたというのは知っていたが、それが5代目にまでなったのか。
ソフトを見れば、どうやら今Final FantasiaはPlayStaticから出ているらしい。
やばい、スクエイアとエニクスが合併してる……。しかし洋ゲーが増えたみたいだな。リアルな絵の渋いパッケージが多い。
Nikkendoも立派にやっているようだ。Switsのソフトは日本産っぽく、カラフルなキャラがパッケージを彩っている。
それに、Xbaxという見慣れない名前。新しい参入もあったんだろう。
こっちは完全な洋物っぽさがある。このパワー感はきっとアメリカだろう。
どれもデザインが昔とは似ても似つかない。最新のゲーム機という感じだ。
と、近くにいた男性が声をかけてきた。
「ビデオゲームがお気に召しましたかな」
「ええ、ぜひやってみたいです。あ、ゼルド!?」
『ゼルドの伝承』は、子供時代に夢中でやっていたアクションパズルゲームだ。
Nikkendoの最新機種で起動すると、なんと3Dの立体世界を自由に駆け回るゼルドになっているではないか。
壁も登れる。木を切れる。
遠景がとってもきれいだ。しかもグライダーで飛んでいける。
すごい。これはすごいぞ。
だが、私はここで思いとどまった。
今は交渉中である。
あまり子どもっぽい所を見せてはいけない。
私はマルデアの代表として、アメリカのトップと交渉しにきたのだ。
「……。我々マルデアとしては、ビデオゲームを試しに幾つか頂きたいと思います。非常に興味深い娯楽ですね」
私はそう言って、震える手でゲームをやめた。
今ここでもっとやりたかったけど、我慢だ。
金塊をもらってもマルデアでは何の価値もないけど、ゲームなら売れるかもしれない。
ただ、市販するならマルデア向けに仕様を合わせる必要がある。
地球の家庭は電源で機械を動かすけど、マルデアは魔力でデバイスを動かしてるから。
この辺は、一度持って帰って考えなきゃいけないだろう。
そんなわけで、こちらは魔石、向こうはビデオゲーム。
今回はこんな感じで、よくわからない物々交換が成立した。
「魔石は私が地球に来る際、毎回お持ちします。もちろん、今後も地球にとって有益なものを提示できると思います」
「それはありがたい。これからも、末永くお付き合いいただきたいものですな」
「ええ、よろしくお願いします」
最後は外交官と少し談笑し、初の交渉は終わった。
でも、明日はついに世界に向けた会見があるんだよね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる