毒兵器少女と化け物王子の幸福論

千 遊雲

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化け物王子は、幸福を考える

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『主様は幸せですか?』



よく、小さな少女にそう訊かれた。

戦争に備えて作った兵器だと、俺が殺した男は言っていた。

手も足も背丈も小さく、少し力を込めれば折れてしまいそうな細さの体の少女を「兵器」だなんて虫唾が走る。

しかし、そんな国になってしまったのは俺にも責任の一端はあって、少女に「幸せか」と問われる度、俺は罪悪感から、いっそ死んでしまえたら楽なのにと思っていた。



俺はこの国の何番目かも曖昧な程遅くに、それも国王の不貞から出来てしまった、一応王子の称号を持つ者で。何故か産まれながらにして丈夫すぎる体を持っていた。

剣を渡されれば大人でも敵わない剣技を放つことが出来たし、存在を疎まれて盛られた毒も効かず、「化け物」と蔑まれながらも、俺を次期国王へと推す声も上がった。

俺を嫌う者と、俺を国王にしたい者。二者に分かれた国は荒れ始め、隣国との仲も年々悪化していくのを感じ、俺がいなければと何度思った事か。



そんな時だった。

荒れた国で、小さな林檎をたった一つ分け与えただけで嬉しそうに微笑む、誰よりも純粋な少女に出会ったのは。



体に合わないはずの毒は全身を突き刺すかの様だろう。少女が夜も眠れずに苦しむ様子を幾夜も見た。

それでも少女は涙も流さず、終いには俺の体が毒で傷つけないかと心配する始末だった。



本当の俺は「幸せ」とは何なのか、何一つとして分かっていなかったのに。

それでも「消えたい」と呟く少女の姿に胸が切り裂かれてしまうようで。

俺なんかの体を心配する少女が愛おしくて。

少女に死んでほしくなく、必死で「幸せ」の意味を分かっているかの振りをしていた。



「願う事ならばシャウラが幸せを感じられるよう」



一等星の名前を付けた少女が、笑える国となるように。その輝きを如何なく発揮できる国になるように。



俺は生まれて初めて、丈夫な体を持ったことに感謝していた。

この体ならば剣を取れる。戦場に立ち、力を存分に揮うことができるから。
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