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転生

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 日本中を震撼させた不審死事件。

 あるオンラインゲームをプレイしていた若者達が数十名、猟奇的に殺されてしまう事件が発生する。プレイ人数は全国的に相当数いたのだが、その中でトップクラスの実力をもっていたパーティの者達が亡くなっていた。

 彼等は一様に頭部を失っていた。

 頭を鷲掴みされ、そのまま巨人に引き千切られたような死体だったのだ。
 側にはプレイしていたゲームの媒体。スマホやタブレット、パソコンの画面が、まるで内側から破裂したかの如く飛び散っていた。

「ゲーム画面から魔物が出て来て彼等の頭部を喰らったのだ!」

 SNS等で面白おかしく噂が飛び交う。


 警察はゲームの運営先に話を聞こうとした。

 だが、運営は忽然と姿を消す。
 と同時にゲームも完全に抹消された。

 ゲームの名は『忘れられた世界ロスト・レルム』。

 よくある剣と魔法の世界のオンラインゲームだった。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 オレは気がつくと、真っ白な空間にいた。

 確かスマホ片手にゲームしていた筈?

 見回すとまわりにも大勢の人。大概は若者。歳いってても多分20代後半か?そういうオレも高校生。

「ここは?一体?」
「わかんない。でも…。ね、間違ってたらごめん。こんな時になんだけど…、貴方はジュピター?」

 横にいる女…の子、同じ歳位か?
 ソイツはゲームでのオレのキャラクター名を言ってきた。

「ああ。あれ?何で分かる?後キミは?ガイア?それともビーナス?」

 オレのキャラ名を知ってる以上、同じゲームのプレイヤーキャラクターだと思う。だから先ずは同じパーティの女性キャラの名を言ってみた。女性キャラ…だよね。まさかの男性メンバー?は?オレのパーティには女性キャラが2人いるけど?
 え?あれヤロウがプレイしてるの?

「ガイアよ。精霊使いのエルフキャラの」

 あ、よかった。
 でもエルフじゃなく日本人だから違和感満載。ゲーム画面では金髪碧眼で特徴的な尖り耳、スレンダーな体型だから。
 目の前の子は確かに美少女。
 ゲームなんかやりそうも無い優等生っぽい子。しかも腰は細っそりしているのに誰もが2度見しそうな程主張している胸がタンクトップから見える。
 オレがまだ寝転がってるからか?彼女も四つん這いでオレを覗き込んでいて…、ヤバい、タンクトップから溢れ出そうだよ?
 流石にガン見出来ないから、やや顔を背けて。でもチラ見してしまうのは男子高校生のサガだよね。
 彼女もそれで自分の胸元に気付いた?起き上がると少し赤い顔してさ。
「よかった。ゲームしようとログインして、気がつくとこんな処にいて、もう訳分かんなくて。貴方がジュピターって分かって、マジでホッとした。その、ごめん、悪気ないの。その…波目で」

 あぁ。確かにオレのキャラは波目って言うか糸目って言うか…。コンプレックスだけどトレードマーク。ここ変えるとオレじゃ無くなる気がするんだ。

「他の奴等は?オレ等だけがココに来ている訳じゃないよね?」
「多分…。あ、あの人等がそうじゃない?」

 そこに5人揃っていた。聞いてみたらビンゴ!同じゲームのプレイヤーキャラクターでパーティ『地上の星』のメンツだったよ。

 曰く、
 パーティの壁役重戦士。盾騎士プルート。
 頼れるリーダー。勇者マーズ。
 万能魔法使い。大賢者サターン。
 索敵・罠感知に鍵開け。義賊マーキュリー。
 奇跡の回復師ヒーラー。聖女ビーナス。

 そして精霊魔法使いのガイアと魔法戦士のオレ、ジュピター。ゲームクリア目前と評判の高い最強のパーティ『地上の星』。

 当たり前だが全員日本人。画面では皆ファンタジー世界でのイケメン揃いだからピンと来ない。

 と、その時声が響いた。

「ようこそ、忘れられた世界ロスト・レルムへ。お前達は選ばれた。生きよ。世界を変えよ。成すべき事を成せ。お前達の力が必要なのだ」

 うわぁ。ゲームのオープニングそのまんま。

 そして目の前にステイタス画面が開く。
 そこにあるのはサンプルキャラクターとなっているけど、今迄プレイしていたキャラそのもの。

 何だ、結局ゲームのやり直し?
 いや、今迄の最強キャラがあるから2周目プレイか?そう思ってサンプルキャラを使おうとして、はたと手が止まる。

 そのキャラ、ジュピターが持っているアイテムに目がいってしまった。

 『神の金貨』。

 レベルカンストしなくても転職出来る伝説…いや宝くじ的夢物語アイテム。
 せっかくの2周目。オレは魔法戦士から転職しようかなと思い始めていた。

「それじゃ、サンプル使って『地上の星』として世界レルムへ行くぞ。召喚先はベルン王国王宮だ」

 は?今の声はマーズ?

「勇者として、私は王国に呼ばれている。だから勇者として『成すべき事を成す。私達の力を必要としている処へ』」

 は?え?皆んなも何?何か使命があるの?
 オレは?オレは何も聞いてない。聞こえてこない。
 驚くオレを尻目に、皆はステイタス画面で召喚先を選択しようとしている。

「どうした?ジュピター?」
「マーズは…、呼ばれたんだね。でもオレは違う。何も聞いてない。そもそもこれはゲーム?それともガチの異世界転生?召喚?事が成せたら元に帰れるの?」
「…私達は世界に必要とされているのだ」
 マーズの言葉に他の5人も頷く。

「ごめん。オレは行けない。せっかくの2周目プレイだから。オレは転生して別のキャラで行く」
「オマエは世界を守らないつもりか?」
「何から守るって?マーズ!何を聞いたんだ!」

 ヤバい。6人がオレを囲む様に動く。クッソ!どうすれば?
 あれ?俯いているのはガイア?
 そして隣りはサターンだ。コイツは少しトロい。最速のマーキュリーは反対側!ならば!
 オレは迷わず駆け出す。
「ごめん、ガイア」
 ガイアをマーキュリーの方へ押し出す。

「な、オイ!ジュピター‼︎」

 出来たのは僅かな時間。でもオレはさっき転生新キャラを創っている。『神の金貨』も使える様にウインドウを開けて。

「転職しますか?」
「YES!」
「転生しますか?」
「YES‼︎」

 一瞬でオレを光が包み込む。

 行き先はベルン王国の反対側。グランザイア帝国の辺境の街、エラム。



「フム。自己の判断を保つ者がいたか?む?干渉したな ※※※」
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