出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ

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驚異の潜水空母

13.

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 夏島の潜水艦基地。
 第4艦隊第7潜水戦隊司令部は、潜水母艦迅鯨にある。南田艦長と前原先任は、伝令があり司令部へと赴き、他乗組員は半舷上陸となっていた。半数が迅鯨にある入浴施設で風呂に入り上陸を楽しむ。

 夜ともなると非番の者は「遊び」を楽しむ。特に勤務中は昼夜無い毎日で風呂にも入れず窮屈な艦内でひたすら任務に励む。事故や故障で場合によっては水没死も有り得る潜水艦乗組員は、ここぞとばかり派手に遊ぶ為、芸者や楼閣にとっては上客と言っていい。

 半舷上陸なので乗組員の半分は艦に残っている。
暑いんで天水サイダーでも飲もうと士官食堂に入った平松伊平は、当直明けの掌砲長木村健次郎兵曹長がうどんを啜ってるのに出会した。
 同じ様に矢上太一もやって来て、やはり天水サイダーを求めたのだった。

「砲術長は今夜はどうされます?」
「せっかくの非番だからね。皆と『南洋楼』に繰り出そうかな」
「そうこなくっちゃ。航海長は」
「私は当直だ。それに読みたい本もあるしね」
「そいつは残念。武勇伝とか聞きたかったのに」

 砲術長平松中尉にとって、航海長矢上大尉はある意味ライバルであり頼れる同僚。そして目指す上位士官と言える。
 平松も実戦~爆雷を喰らった経験の持ち主だ。
 分解するのでは、と思える程の揺れに振り回されて生きた心地はしなかった状況。砲術士官の自分は潜航中は殆ど出来る事が無かったし、また、あの状況はただ震えるだけだった。
 その同じ状況で、矢上は上位者に代わり艦の指揮を取り、駆逐艦に反撃して相手に一矢報いたと聞いている。
 見た目は童顔の、おとなしげな若者でしかないのに。

「自慢出来るモノなんてないよ。無我夢中で生き延びる為に足掻いただけだから」
「そういや、何で軍人に?」

 平松が夜半当直中、久々の海上航行時に天測の為司令塔へ上がってきた矢上が「星が綺麗だ」と、天文学者になりたかった夢を話した事があった。
 確かに、その類の方が似合っている。

「早く一人前になりたくてね。私は、早く両親を病で失ってね。姉に育てられたんだ」
「そうなんですか?」
「私が生まれて直ぐ、1番上の姉は嫁いでいてね。二回り近く離れているから、もう殆ど母親だな。甥っ子の方が歳上なんだよ」
「それはまた」
「だから早く一人前になって姉に恩を返したかった。姉婿さんも『息子も同然』って言ってくれたんだけどね。それに、幼馴染の親御さんにも示したくてね」
「それって」
「今は姑殿オヤジ殿だ」
「え?航海長って結婚してるのですか?」
「まぁ、少尉任官でやっと認めて貰えてね」

 小作農の小倅に娘はやれん。

 村の有力者地主だった妻の実家は裕福であり、チエと幼い頃から惹かれあっていたが中々認めては貰えなかった。妻の兄たる男にも散々虐められた。
 両親が他界し、姉に引き取られてから状況が変わる。姉の嫁ぎ先がそこそこ大きな呉服問屋であり、姉婿がその3代目だったから。
 早く一人前として認められる様分かり易いのは軍人だと、安直と言えばそれまでだが太一少年は軍人への道を歩む。幸い才があったのだろう。巡洋艦航海科から成績優秀な者として潜水学校へ入校を命じられた。学校を出て下士官としての初勤務が前原泰造が水雷長を勤めていたイ- 2だったのだ。
 鍛えられた矢上は、少尉任官と同時にイ- 76へ移動になり、その後中尉に昇進、航海長拝命となる。イ- 76はインド洋へ出撃し作戦行動中にイギリス駆逐艦と交戦する事になった。

 少尉任官の後「これで幼馴染チエの父上と会える」と郷里に帰り婚姻を申し出た。
 下士官でも大出世と言える状況、士官となって娘を貰い受けに来た矢上に、妻の両親ももはや否はなかった。

 息子が産まれた時には、姑殿は孫の誕生を喜ぶ只の好々爺でしかなかったし、娘が産まれた時には姉婿の呉服問屋で直ぐに晴れ着を買う程の祖父馬鹿振りを発揮したのである。

「幼馴染ですか。成る程。そうでもないと潜水艦乗りになんて嫁には来ないですよ」
 木村兵曹長が心底羨ましげに言う。
「そうか?」
「女共が求めるのは戦艦乗りです。私なんて6度も見合いをして全て断られましたわ」
 そう言いながら木村は豪快に笑う。
 平松は「いや、顔もスタイルも違い過ぎるだろ」と思ったが流石に口には出さなかった。

 そうこうしているうちに、南田艦長、前原先任が帰って来た。

「明後日には出撃。いよいよ6日にアメリカと国交を断絶するそうだ」

 事実上の戦線布告である。

「我々は単艦でパナマ湾へ向かう。パナマ運河を封鎖するのだ」
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