26 / 32
激闘!潜水戦隊
26.
しおりを挟む
「敵潜、アクティブソナー打ちました」
「スクリュー音を確認出来ないだろうからな。だが、この艦は我々と戦う気満々って事だな」
深度100。安全深度一杯。
実際は1.3程の余裕のある設計なので、130までは大丈夫の筈。とは言え、カタログデータを信じてバカを見るのが常の実戦だ。
「このまま逃げてくれれば、と思っていたのだが」
「どうでしょうね。我々は予想以上にアメリカさんの恨みを買っているのかもしれませんよ」
前原が他人事の様に言う。
「何が何でも、ですか?先任」
「此処迄奴等が庭先と思っていた太平洋で好き勝手に暴れているんだ。大統領あたりが、『絶対に沈めろ』って位は言っているさ」
「そうだな。ならば改修・補給直後の我々はツイているという訳だ」
南田艦長の軽口?皆が振り返って艦長を見る。
「とうとう私に感化されましたね」
白い歯を見せる前原に、南田もニヤリと返す。
戦闘直後の、しかも深度100という、ともすれば危険な場所で。イ- 400には余裕があった。
「しかし、問題は敵潜が直ぐに2隻になった事です。これはもしかするとライン諸島の」
「そうだな、矢上航海長。アメリカ軍基地の潜水隊だろう。近くにいたのが2隻ならはいいが」
「3隻目がいるかもしれないですね」
そう前原が言うか否かだった。
「洋上航行している船舶があります」
「駆逐艦か」
「にしては小さいと思われます。駆潜艇かもしれません」
流石に潜水艦が洋上航行してくるとは思わない。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「洋上航行の艦船あり。スクリュー音紋確認。旗艦タンボアです」
フランクス艦長はブチ切れてしまう。
「下に日本軍潜水艦がいるんだぞ?何を考えているんだ。ええい、先の敵潜の位置へ魚雷攻撃!急げ、射角左18°、調程深度最大」
「ですが、あの位置へは」
「上もそれで気付く。威嚇でいい。とにかく敵潜を動かして、あわよくば追う形に出来れば」
「旗艦タンボアより艦隊無線電話です」
「『敵潜有り』と言え!魚雷は?」
「準備OKです」
「撃てっ」
バシュッ…ゴボゴボ…。
「魚雷、目標失探、迷走している模様」
深度100までは、どうしてもいける筈が無い。
「速力6ノット、針路160、取り舵!此方も深度100まで潜る‼︎ 敵潜は?」
「失探しました。不明です」
「旗艦タンボアより艦隊無線電話、『敵潜の位置を知らせ』」
何を呑気な。だが…。
「この、これは…、スクリュー音?でも、小さい」
聴音員が首を捻っている。
「どうした?」
レアード副長が聴音員の側までいく。
「何やら別のスクリュー音らしき音響が…、でも」
「魚雷ではないのか」
「魚雷にある燃焼ガス発泡音が無いのです」
日本軍が誇る95式酸素魚雷は雷跡を出さない。
高純度酸素は水に溶け込んでしまうからだ。
だが通常、魚雷は空気を燃焼させて馳走する為に、その発泡が雷跡となって海上からも分かりやすくなってしまう。スクリュー音と共に発泡音も聴音出来るのである。
「そのスクリュー音は何処へ」
「上へ向かって…、まさか?」
ズガガガーン!ドドーン!
2発の爆発音が響く。やがて小さな衝撃が艦に伝わって来た。
「旗艦タンボア、雷撃されました!」
「何てこった!」
バーブ同様、タンボアもゆっくりと沈降し圧壊、爆発した。
「敵潜は」
「スクリュー音確認。どうやら離れていきます。左240°方向」
「雷撃音に紛れてモーターを始動したのか。それにしても、いつ浮上した」
「無音状態のまま、ベント弁を開いてでしょうね。細心なのか大胆なのか」
「此方とほぼ同時に魚雷を発射した、か。くっそ、日本潜水艦には外が見えているのか?TBCを探知出来る訳が無いのに」
「洋上航行です。スクリュー音も機関音も有りますから」
旗艦の、ランサー司令やホワイト艦長の油断が招いた撃沈。だとしても、だ。
「流石は秘密兵器を任された艦長だと言う事か」
イ- 400艦長の手並み、凄腕をまざまざと思い知らされたフランクス艦長は、念の為に、この後も30分は静止状態のまま聴音を続け、明らかにイ- 400が去ったと確信してからパルミラ島へ帰投したのだった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
アメリカ太平洋艦隊の暗号文を受信したトラック環礁の第4艦隊司令部は、第61潜水隊の2隻が撃沈された事を知った。
「これは、イ- 400か?」
「丁度、改修を終えて此方に向かっている筈です」
「南田君の手腕は素晴らしいのだがな」
「ああも頑固でなければ、と言う事ですか?」
古湊少将にしても非常に使い辛い部下であり、また特殊戦略潜水戦隊が山本五十六長官直属の秘匿艦隊である事が、命令系統を少し面倒な事にしていた。
「これを機に、あのライン諸島の攻略を上申してみるか」
アメリカ・イギリスの生命線と言える通商路。
太平洋艦隊が大人しくしている今がチャンス。
思いは、山本五十六も同じだった。
「スクリュー音を確認出来ないだろうからな。だが、この艦は我々と戦う気満々って事だな」
深度100。安全深度一杯。
実際は1.3程の余裕のある設計なので、130までは大丈夫の筈。とは言え、カタログデータを信じてバカを見るのが常の実戦だ。
「このまま逃げてくれれば、と思っていたのだが」
「どうでしょうね。我々は予想以上にアメリカさんの恨みを買っているのかもしれませんよ」
前原が他人事の様に言う。
「何が何でも、ですか?先任」
「此処迄奴等が庭先と思っていた太平洋で好き勝手に暴れているんだ。大統領あたりが、『絶対に沈めろ』って位は言っているさ」
「そうだな。ならば改修・補給直後の我々はツイているという訳だ」
南田艦長の軽口?皆が振り返って艦長を見る。
「とうとう私に感化されましたね」
白い歯を見せる前原に、南田もニヤリと返す。
戦闘直後の、しかも深度100という、ともすれば危険な場所で。イ- 400には余裕があった。
「しかし、問題は敵潜が直ぐに2隻になった事です。これはもしかするとライン諸島の」
「そうだな、矢上航海長。アメリカ軍基地の潜水隊だろう。近くにいたのが2隻ならはいいが」
「3隻目がいるかもしれないですね」
そう前原が言うか否かだった。
「洋上航行している船舶があります」
「駆逐艦か」
「にしては小さいと思われます。駆潜艇かもしれません」
流石に潜水艦が洋上航行してくるとは思わない。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「洋上航行の艦船あり。スクリュー音紋確認。旗艦タンボアです」
フランクス艦長はブチ切れてしまう。
「下に日本軍潜水艦がいるんだぞ?何を考えているんだ。ええい、先の敵潜の位置へ魚雷攻撃!急げ、射角左18°、調程深度最大」
「ですが、あの位置へは」
「上もそれで気付く。威嚇でいい。とにかく敵潜を動かして、あわよくば追う形に出来れば」
「旗艦タンボアより艦隊無線電話です」
「『敵潜有り』と言え!魚雷は?」
「準備OKです」
「撃てっ」
バシュッ…ゴボゴボ…。
「魚雷、目標失探、迷走している模様」
深度100までは、どうしてもいける筈が無い。
「速力6ノット、針路160、取り舵!此方も深度100まで潜る‼︎ 敵潜は?」
「失探しました。不明です」
「旗艦タンボアより艦隊無線電話、『敵潜の位置を知らせ』」
何を呑気な。だが…。
「この、これは…、スクリュー音?でも、小さい」
聴音員が首を捻っている。
「どうした?」
レアード副長が聴音員の側までいく。
「何やら別のスクリュー音らしき音響が…、でも」
「魚雷ではないのか」
「魚雷にある燃焼ガス発泡音が無いのです」
日本軍が誇る95式酸素魚雷は雷跡を出さない。
高純度酸素は水に溶け込んでしまうからだ。
だが通常、魚雷は空気を燃焼させて馳走する為に、その発泡が雷跡となって海上からも分かりやすくなってしまう。スクリュー音と共に発泡音も聴音出来るのである。
「そのスクリュー音は何処へ」
「上へ向かって…、まさか?」
ズガガガーン!ドドーン!
2発の爆発音が響く。やがて小さな衝撃が艦に伝わって来た。
「旗艦タンボア、雷撃されました!」
「何てこった!」
バーブ同様、タンボアもゆっくりと沈降し圧壊、爆発した。
「敵潜は」
「スクリュー音確認。どうやら離れていきます。左240°方向」
「雷撃音に紛れてモーターを始動したのか。それにしても、いつ浮上した」
「無音状態のまま、ベント弁を開いてでしょうね。細心なのか大胆なのか」
「此方とほぼ同時に魚雷を発射した、か。くっそ、日本潜水艦には外が見えているのか?TBCを探知出来る訳が無いのに」
「洋上航行です。スクリュー音も機関音も有りますから」
旗艦の、ランサー司令やホワイト艦長の油断が招いた撃沈。だとしても、だ。
「流石は秘密兵器を任された艦長だと言う事か」
イ- 400艦長の手並み、凄腕をまざまざと思い知らされたフランクス艦長は、念の為に、この後も30分は静止状態のまま聴音を続け、明らかにイ- 400が去ったと確信してからパルミラ島へ帰投したのだった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
アメリカ太平洋艦隊の暗号文を受信したトラック環礁の第4艦隊司令部は、第61潜水隊の2隻が撃沈された事を知った。
「これは、イ- 400か?」
「丁度、改修を終えて此方に向かっている筈です」
「南田君の手腕は素晴らしいのだがな」
「ああも頑固でなければ、と言う事ですか?」
古湊少将にしても非常に使い辛い部下であり、また特殊戦略潜水戦隊が山本五十六長官直属の秘匿艦隊である事が、命令系統を少し面倒な事にしていた。
「これを機に、あのライン諸島の攻略を上申してみるか」
アメリカ・イギリスの生命線と言える通商路。
太平洋艦隊が大人しくしている今がチャンス。
思いは、山本五十六も同じだった。
29
あなたにおすすめの小説
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦
そしてそこから繋がる新たな近代史へ
日英同盟不滅なり
竹本田重朗
歴史・時代
世界は二度目の世界大戦に突入した。ヒトラー率いるナチス・ドイツがフランス侵攻を開始する。同時にスターリン率いるコミンテルン・ソビエトは満州に侵入した。ヨーロッパから極東まで世界を炎に包まれる。悪逆非道のファシストと共産主義者に正義の鉄槌を下せ。今こそ日英同盟が島国の底力を見せつける時だ。
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
以上をご理解の上でお読みください
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
北溟のアナバシス
三笠 陣
歴史・時代
1943年、大日本帝国はアメリカとソ連という軍事大国に挟まれ、その圧迫を受けつつあった。
太平洋の反対側に位置するアメリカ合衆国では、両洋艦隊法に基づく海軍の大拡張計画が実行されていた。
すべての計画艦が竣工すれば、その総計は約130万トンにもなる。
そしてソビエト連邦は、ヨーロッパから東アジアに一隻の巨艦を回航する。
ソヴィエツキー・ソユーズ。
ソビエト連邦が初めて就役させた超弩級戦艦である。
1940年7月に第二次欧州大戦が終結して3年。
収まっていたかに見えた戦火は、いま再び、極東の地で燃え上がろうとしていた。
【架空戦記】炎立つ真珠湾
糸冬
歴史・時代
一九四一年十二月八日。
日本海軍による真珠湾攻撃は成功裡に終わった。
さらなる戦果を求めて第二次攻撃を求める声に対し、南雲忠一司令は、歴史を覆す決断を下す。
「吉と出れば天啓、凶と出れば悪魔のささやき」と内心で呟きつつ……。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる