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聖女となって
リーファの密かな企み
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「ですから、お嬢様!オレはお止めしましたからね」
「勿論、私もですよー。リーファ様ぁ」
中々言う事を聞かない従者達を引き連れて、私は街に繰り出す。
勿論、私達しか知らない抜け道を使って。
7つになったバルム暦812年。
前世で助けられなかった、悔いの残る出来事。
両親が視察へと赴く羽目になった事件。
領内のサイヴァ村で起こった暴動。
「でも、私は話が聴きたいの」
今はまだ、例の暴動は起きてない。
前兆はあるみたいだけど。
主街道から外れ、特に名産物も無い小さな村は本当に貧しくて。村長と村にある小さな教会の司祭の懸命な訴えは、辺り一帯を治める代官に握り潰されていたらしい。
それが私に聞こえてきたのは、懇意にしていた商人の耳打ちのお陰。偶々、司祭と同郷だった旅の商人タロンは、母好みの装飾品を扱う事もあって公爵家本宅に直接出入り出来る人材だったんだけど。
「幼いお嬢様にこの様な事をお伝えするのは、もはや藁にでもすがる溺れ人の心境。『聖女』たるお嬢様に一縷の望みをかけての事と」
確かに、7つの童女にどうしろって?
普通なら、そうだ。
でも、こちとら普通の童女じゃない。
並の大人以上の力と権力、持ってんだよ。
出会いの場は、領都アデルバーグの…スラムに近い教会。サイヴァ村の司祭の代理?出稼ぎに来ていた少年達。
「…リーファ様ぁ。愚考ですけど、この村への街道をザクセン迄伸ばせば」
「それが理想的…、でも、ココの森の存在がネックね」
村が行き止まりになってるのにはワケがあって。
その先に『魔竜の森』があるんだ。
伝説でしかないんだけど。
この森には『魔竜アグバー』が住むと言われていて。その為か、この森の魔物は、人里近い森にも関わらず上位ランクのモノがゴロゴロしていて。
その割に、それほど人的被害が無いのは、魔物達の縄張り意識が強いモノしかいないから。
森から出てこようとしないんだ。
まるで、不思議な結界でもあるみたいに。
その辺の不思議さもあって、あまり立ち入る事のない森。
…わざわざ竜の棲家を突く物好きなんていないでしょうし。
「実在するか、わかんないにしても、『アグバー』にケンカ売る気有る?」
「ごめん被りますね。万が一考えたら国亡の危機ですよ、お嬢様」
ちょい、暴力的な…無慈悲な案かもしれない。
「村には今どれくらい居るの?」
「は?リーファ様ぁ?まさか、全員を動かすとか」
少年達もざわつく。
「村を捨てろって言うのかよ!」
現実問題として、此処に人里がある理由は無い。
肥えた土地がある訳でもないし、最果てに近い立地になってるし。
「テスタ村が開拓、言ってきてた筈」
「成る程。えーと、村は」
「66名だったと。テスタ村が受け入れてくれるでしょうか?」
「アソコの村長、確か高司祭兼任。頼むの、試す価値あるんじゃない?ね、貴方?」
「あ、オレっすか?」
「名前は?」
「ピーターっす」
「司祭パイクに伝えられる?出来れば、彼に領都まで来て欲しいんだけど」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆☆★☆
コッソリ帰った私達を待っていたのは、大鬼も逃げ出しそうな表情の侍女頭テレーゼ。
「3人とも、理解しておいででしょうね」
…怖いよ。
しかぁし!
そんなんで懲りる私では無い‼︎
「懲りて欲しいです、お嬢様」
「もうやめませんかぁ?リーファ様ぁ」
翌日。
再び、私達は街に繰り出して。
昨日の教会にサイヴァ村の司祭パイクとテスタ村の村長兼高司祭エンダスを呼び出していて。
「どうかしら」
「テスタ村は受け入れ可能です。西へ開拓しつつある今、農民・働き手が増えるのは有り難い」
「我々も現状よりは、遥かにマシです。明日に望みが持てる。ですが代官が何と言うか」
「それは領主が命じるので大丈夫だと思います。お祖父様を私が説得します」
思ってた以上に話がすんなりいって。
それくらい、サイヴァ村は困窮してたんだろう。
そして、予想はしてたけどある意味残念な話。
お祖父様にとっても、サイヴァ村の廃村はどうでもいい些細な事みたいで。
代官は確かにゴネたんだけどね。たいして仕事してなかったみたいだし。可哀想だけど放逐って形になった。
そして。
「感謝するっす、リーファお嬢様」
「おいら達、お嬢様の為なら何だってやります」
出稼ぎの少年達から数名。
私の専属として仕えさせる事になった。
特に、東方の算術計算機を使い熟せるピーターって子と家事万能のミーアって娘。それに盾使いピエールと怪力ブラウン。
私の手持ちは充実していく。
いや、別に公爵家の後継って訳でもないし、そんなの目論んでもいないけど。
前世では私の側に2人しかいなかった。
でも『聖女』の現世では、私を慕ってくれる人がかなり増えてる。
…兄には面白くない状況なのか。
何やら、ランスロー殿下に近付いてるみたいな。
「勿論、私もですよー。リーファ様ぁ」
中々言う事を聞かない従者達を引き連れて、私は街に繰り出す。
勿論、私達しか知らない抜け道を使って。
7つになったバルム暦812年。
前世で助けられなかった、悔いの残る出来事。
両親が視察へと赴く羽目になった事件。
領内のサイヴァ村で起こった暴動。
「でも、私は話が聴きたいの」
今はまだ、例の暴動は起きてない。
前兆はあるみたいだけど。
主街道から外れ、特に名産物も無い小さな村は本当に貧しくて。村長と村にある小さな教会の司祭の懸命な訴えは、辺り一帯を治める代官に握り潰されていたらしい。
それが私に聞こえてきたのは、懇意にしていた商人の耳打ちのお陰。偶々、司祭と同郷だった旅の商人タロンは、母好みの装飾品を扱う事もあって公爵家本宅に直接出入り出来る人材だったんだけど。
「幼いお嬢様にこの様な事をお伝えするのは、もはや藁にでもすがる溺れ人の心境。『聖女』たるお嬢様に一縷の望みをかけての事と」
確かに、7つの童女にどうしろって?
普通なら、そうだ。
でも、こちとら普通の童女じゃない。
並の大人以上の力と権力、持ってんだよ。
出会いの場は、領都アデルバーグの…スラムに近い教会。サイヴァ村の司祭の代理?出稼ぎに来ていた少年達。
「…リーファ様ぁ。愚考ですけど、この村への街道をザクセン迄伸ばせば」
「それが理想的…、でも、ココの森の存在がネックね」
村が行き止まりになってるのにはワケがあって。
その先に『魔竜の森』があるんだ。
伝説でしかないんだけど。
この森には『魔竜アグバー』が住むと言われていて。その為か、この森の魔物は、人里近い森にも関わらず上位ランクのモノがゴロゴロしていて。
その割に、それほど人的被害が無いのは、魔物達の縄張り意識が強いモノしかいないから。
森から出てこようとしないんだ。
まるで、不思議な結界でもあるみたいに。
その辺の不思議さもあって、あまり立ち入る事のない森。
…わざわざ竜の棲家を突く物好きなんていないでしょうし。
「実在するか、わかんないにしても、『アグバー』にケンカ売る気有る?」
「ごめん被りますね。万が一考えたら国亡の危機ですよ、お嬢様」
ちょい、暴力的な…無慈悲な案かもしれない。
「村には今どれくらい居るの?」
「は?リーファ様ぁ?まさか、全員を動かすとか」
少年達もざわつく。
「村を捨てろって言うのかよ!」
現実問題として、此処に人里がある理由は無い。
肥えた土地がある訳でもないし、最果てに近い立地になってるし。
「テスタ村が開拓、言ってきてた筈」
「成る程。えーと、村は」
「66名だったと。テスタ村が受け入れてくれるでしょうか?」
「アソコの村長、確か高司祭兼任。頼むの、試す価値あるんじゃない?ね、貴方?」
「あ、オレっすか?」
「名前は?」
「ピーターっす」
「司祭パイクに伝えられる?出来れば、彼に領都まで来て欲しいんだけど」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆☆★☆
コッソリ帰った私達を待っていたのは、大鬼も逃げ出しそうな表情の侍女頭テレーゼ。
「3人とも、理解しておいででしょうね」
…怖いよ。
しかぁし!
そんなんで懲りる私では無い‼︎
「懲りて欲しいです、お嬢様」
「もうやめませんかぁ?リーファ様ぁ」
翌日。
再び、私達は街に繰り出して。
昨日の教会にサイヴァ村の司祭パイクとテスタ村の村長兼高司祭エンダスを呼び出していて。
「どうかしら」
「テスタ村は受け入れ可能です。西へ開拓しつつある今、農民・働き手が増えるのは有り難い」
「我々も現状よりは、遥かにマシです。明日に望みが持てる。ですが代官が何と言うか」
「それは領主が命じるので大丈夫だと思います。お祖父様を私が説得します」
思ってた以上に話がすんなりいって。
それくらい、サイヴァ村は困窮してたんだろう。
そして、予想はしてたけどある意味残念な話。
お祖父様にとっても、サイヴァ村の廃村はどうでもいい些細な事みたいで。
代官は確かにゴネたんだけどね。たいして仕事してなかったみたいだし。可哀想だけど放逐って形になった。
そして。
「感謝するっす、リーファお嬢様」
「おいら達、お嬢様の為なら何だってやります」
出稼ぎの少年達から数名。
私の専属として仕えさせる事になった。
特に、東方の算術計算機を使い熟せるピーターって子と家事万能のミーアって娘。それに盾使いピエールと怪力ブラウン。
私の手持ちは充実していく。
いや、別に公爵家の後継って訳でもないし、そんなの目論んでもいないけど。
前世では私の側に2人しかいなかった。
でも『聖女』の現世では、私を慕ってくれる人がかなり増えてる。
…兄には面白くない状況なのか。
何やら、ランスロー殿下に近付いてるみたいな。
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