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聖女となって
王子や兄は、面白くなくて
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「貴様の妹は、随分好き勝手にやっている様だな」
「誠に持って…、その」
王宮の一室。
ランスロー王子の私室…では無いが、それに準ずる程殿下が使われる部屋で。
私以下、殿下の友人達が集っている。
「最近は王妃教育をサボり街中へ繰り出し、何やら下賤の者と交わっておられるとか」
「アディール公子。宰相家としても、コレは由々しき問題では?」
「申し訳ございませぬ。両親も諌めてはおるのですが、何せ宰相閣下が妹のやる事を咎め立てせず」
「フン。あの宰相閣下にして孫娘にそこまで甘いとはね」
そんなある日の、王宮の一画で。
学校帰りの我々と出会った時に、妹は挨拶はしたものの、そのまま帰ろうとしていた。
「今日も王妃教育を受けぬつもりか?そんな事では我が伴侶等…」
「必要がない、と言われる程やってみせておりますが?殿下とは違いますの」
「な!」
ランスロー殿下への王道教育もまた、臣下の者の悩みのタネ。だが、その悩みの次元が天地程の差異があるとは聞いた事がある。
「私は既に公務もこなしている。子供の貴様とは違う!」
「公務?要らぬ口出しの間違いでは?それに子供はお互い様ではありませんか?」
妹と殿下は2歳しか違わない。
それなのに、これは大人と子供程の違いの様に見えてしまう。
「無礼な…がっ」
妹に殴りかかる?いや、触れようとした殿下の護衛騎士が、触れる直前に何かに跳ね飛ばされてしまう。
「神聖属性の防御魔法、甘く見ない事です。私は確かに子供です。でも、貴方方程度ならば5分で勝てる自信がありますよ」
うっすらと輝き出す妹。
此方を見る殿下に、一応具申する。
「殿下。その、妹は既に領内での魔物討伐の実績を持っています。後ろの護衛2人も同様です」
王都に魔物が出る筈もない。
おそらく近衛騎士だとしても、魔物討伐の経験など一部の者しか無いと思う。
広大な公爵領ならばこその実戦経験。
無論、私ですらその様な経験は無いのだけど、型破りな妹は違うのだ。
「ちっ」
舌打ちして、態度だけは強がり、逃げる様に去って行く殿下。我々も忌々しげに妹を睨み、殿下に付き従う。
「くっ」
声が出てしまった。
妹の2人の護衛~ジンとセリアの、あの目付き。
主家の嫡男を蔑みやがって!
私は、攻撃魔法を得意とする火属性だと言うのに!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「また、随分と煽りましたねぇ、リーファ様ぁ」
「それにしても、隠し事出来ないってのは長所なのか…」
「短所よ。宰相家の嫡男が駆け引き、まるでお話にならないんじゃあね。兄には、その自覚すらないのに『その器に有らず』ってお祖父様の思惑には気付いてる」
「お館様は勿論、我等ですら侮蔑の眼で見てますからね。これで気づかねば、お先真っ暗ですよ」
出て行った殿下達を見送って。
本当にバカの集団だわ。
いっそ、不敬罪で婚約破棄してくれないかしらね。
「行きましょうか、お嬢様」
目の前の少年は、まだ11歳でしかないのに、私は見上げないといけないくらい背の高さが違ってきた。
「城門控所でブラウンも待ちくたびれている頃かと」
「それは悪い事したわ」
王宮内に、そうそう人数を入れられる訳もなく。
護衛と世話役の2人しか付いて来れなくて、城門にある使用人控所には、年齢に見合わない体格と怪力の持ち主ブラウンともう1人の世話役ミーアが待機してる。
「待ちくたびれたよ、ジン」
「ちょいとゴタゴタあってね。馬車は?」
「アッチ。御者が準備してる」
「ありがとう。じゃあ、帰ります」
私とセリア、ミーアが乗り込む。
ジンは御者台の後ろに。ブラウンは馬車の後ろにある護衛控に立って。
「出ます」
ギョームが軽く手綱を引いて、馬車がゆっくりと走り出す。城門を出る迄は駆け足すら問題。歩きか?ってのは言い過ぎかな。
門番に一礼。
アディール公爵家の家紋入馬車が呼び止められる筈も無く、すんなりと出て行く。
「お嬢様」
「真っ直ぐ帰ります。流石に今日は部屋で寛ぎたいわよ」
小窓から見えるジンの顔。
いつもならば寄り道。せっかく王都大通りを行くのだから、繁華街で買い物や軽食したりするのだけれど。
ホント、疲れた。
「誠に持って…、その」
王宮の一室。
ランスロー王子の私室…では無いが、それに準ずる程殿下が使われる部屋で。
私以下、殿下の友人達が集っている。
「最近は王妃教育をサボり街中へ繰り出し、何やら下賤の者と交わっておられるとか」
「アディール公子。宰相家としても、コレは由々しき問題では?」
「申し訳ございませぬ。両親も諌めてはおるのですが、何せ宰相閣下が妹のやる事を咎め立てせず」
「フン。あの宰相閣下にして孫娘にそこまで甘いとはね」
そんなある日の、王宮の一画で。
学校帰りの我々と出会った時に、妹は挨拶はしたものの、そのまま帰ろうとしていた。
「今日も王妃教育を受けぬつもりか?そんな事では我が伴侶等…」
「必要がない、と言われる程やってみせておりますが?殿下とは違いますの」
「な!」
ランスロー殿下への王道教育もまた、臣下の者の悩みのタネ。だが、その悩みの次元が天地程の差異があるとは聞いた事がある。
「私は既に公務もこなしている。子供の貴様とは違う!」
「公務?要らぬ口出しの間違いでは?それに子供はお互い様ではありませんか?」
妹と殿下は2歳しか違わない。
それなのに、これは大人と子供程の違いの様に見えてしまう。
「無礼な…がっ」
妹に殴りかかる?いや、触れようとした殿下の護衛騎士が、触れる直前に何かに跳ね飛ばされてしまう。
「神聖属性の防御魔法、甘く見ない事です。私は確かに子供です。でも、貴方方程度ならば5分で勝てる自信がありますよ」
うっすらと輝き出す妹。
此方を見る殿下に、一応具申する。
「殿下。その、妹は既に領内での魔物討伐の実績を持っています。後ろの護衛2人も同様です」
王都に魔物が出る筈もない。
おそらく近衛騎士だとしても、魔物討伐の経験など一部の者しか無いと思う。
広大な公爵領ならばこその実戦経験。
無論、私ですらその様な経験は無いのだけど、型破りな妹は違うのだ。
「ちっ」
舌打ちして、態度だけは強がり、逃げる様に去って行く殿下。我々も忌々しげに妹を睨み、殿下に付き従う。
「くっ」
声が出てしまった。
妹の2人の護衛~ジンとセリアの、あの目付き。
主家の嫡男を蔑みやがって!
私は、攻撃魔法を得意とする火属性だと言うのに!
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「また、随分と煽りましたねぇ、リーファ様ぁ」
「それにしても、隠し事出来ないってのは長所なのか…」
「短所よ。宰相家の嫡男が駆け引き、まるでお話にならないんじゃあね。兄には、その自覚すらないのに『その器に有らず』ってお祖父様の思惑には気付いてる」
「お館様は勿論、我等ですら侮蔑の眼で見てますからね。これで気づかねば、お先真っ暗ですよ」
出て行った殿下達を見送って。
本当にバカの集団だわ。
いっそ、不敬罪で婚約破棄してくれないかしらね。
「行きましょうか、お嬢様」
目の前の少年は、まだ11歳でしかないのに、私は見上げないといけないくらい背の高さが違ってきた。
「城門控所でブラウンも待ちくたびれている頃かと」
「それは悪い事したわ」
王宮内に、そうそう人数を入れられる訳もなく。
護衛と世話役の2人しか付いて来れなくて、城門にある使用人控所には、年齢に見合わない体格と怪力の持ち主ブラウンともう1人の世話役ミーアが待機してる。
「待ちくたびれたよ、ジン」
「ちょいとゴタゴタあってね。馬車は?」
「アッチ。御者が準備してる」
「ありがとう。じゃあ、帰ります」
私とセリア、ミーアが乗り込む。
ジンは御者台の後ろに。ブラウンは馬車の後ろにある護衛控に立って。
「出ます」
ギョームが軽く手綱を引いて、馬車がゆっくりと走り出す。城門を出る迄は駆け足すら問題。歩きか?ってのは言い過ぎかな。
門番に一礼。
アディール公爵家の家紋入馬車が呼び止められる筈も無く、すんなりと出て行く。
「お嬢様」
「真っ直ぐ帰ります。流石に今日は部屋で寛ぎたいわよ」
小窓から見えるジンの顔。
いつもならば寄り道。せっかく王都大通りを行くのだから、繁華街で買い物や軽食したりするのだけれど。
ホント、疲れた。
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