11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~

琴乃葉ことは

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第一章『それは、新しい日常』

第七話「少女...」

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 ここは...魔王城の前か?



 辺りを見回せば、つい今朝出発する時に見たばかりの景色があった。



 テレポートとと言っていたな。文字通り瞬間移動してきたらしい。スキルも手に入ったしうれしいのだが... 行きもこれでよかったんじゃないのか?

 後に聞いたところ、そんなのつまらないじゃない、とのことだった。

 行きの雑談でいろいろ話せたのはたしかなので文句はない。



「やー、魔法って便利だねー」



 シオンが感慨ぶかそうに呟いている。



「お前は使えないのか?」



「使えない訳じゃないけどあまり得意じゃないね。そもそも魔法は難しすぎてあまり使う人がいないんだよ」



 そんな魔法を簡単そうに操っているあたりさすが魔王って感じだ。俺もいずれ使えるようになりたいな。



 空を見上げれば太陽はまだ登り切っておらず昼も迎えていなかった。あまりにも早い邪龍討伐だったな。(殺してないけど)



「よし、荷物をおいて食堂にいこうぜ。お宝の確認はこいつの自己紹介の後な」 



 ユウキの一言により一同は食堂に足を運んだ。







 ~~~~~~~~~~







 毎度恒例となってきた食堂へ着くと俺たちは席についた。ならびは前回と同じで、少女が俺の横に座っている。本当は前の特等席のほうがいいのでは、と思ったが俺が座ったと同時に隣に座ってしまったので、なし崩し的にいつもと同じ並びになった。



 リリィーがお茶を入れてくれている。料理は並んでなく、お茶だけだ。早く帰ってきすぎて、まだまだ昼食の時間ではないのだ。





 全員が席に着いたので、話を始める。



「で、お前は何者なんだ?」



「ねーねー 、このやり取り私昨日も見た気がする」



「ふふっ、そうだね」



 いきなり外野がうるさい。ヒソヒソと話す声が聞こえる。

 確かに昨日もこんな感じだったな。この少女が「私は◯◯。転生者だ」とか言わないことを願おう。俺のアイデンティティがなくなってしまう。



「話すより見た方が早い...」



 少女は自分のステータスを出すと、こちらへ見せてきた。





 名 前: ——

 年 齢: ——

 称 号:《神》《調律者》《\%$€£》etc

 スキル:《神性なる身体》《瞬間移動》etc











「え!? えー?神様?」



 驚きのあまりリリィーが大声をあげた。



 少女がコクリと頷く。



 まさか昨日、今日と2日連続で神に会うとは。狙ってやってんじゃないかと思えてくる。



「本当にいるもんだねー。」



 勇者、魔王ときて今度は神か。こっちの世界にきてからたいそうな奴らとばかり会うな。自分もすごいやつなんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。



 そんなことを思うユウキだが、この世界で邪龍といえばもっとも強いと思われている存在なので、もうすでに十分すごいやつ、となっているのだが本人は気づいていない。







 改めてステータスよく見てみる。このステータス、ステータスとして機能してないな。さて、どこから突っ込めばいいのやら。上から順に見ていこう。



 まず名前と年齢が記されていない。年齢がないというのはわかるんだが、まさか名前までないとは。不便じゃないのか?

 それから文字化けしているところがある。まあ、神っていうくらいだし、こっちの方が自然な気がする。web小説などでも神様のステータスが文字化けしてるイメージがあるのは俺だけだろうか。



 そして...俺が一番気になるのは《神性なる身体》だ。これはいったいどういうことだ。なぜ、俺と同じスキルをもっている?

 俺は、神に身体を創ってもらったから、このスキルが手に入ったんだと思っていたが違うのか?

 他に考えられることといえば、神の性質?、"神"の属性みたいなものを持っているってところか。この案は結構前に出ていたのだが、「神の性質ってなんだよ!ふわっとしすぎてよくわからん!」ってことで破棄してしまっていた。神様も持っているならやはりこの推測が正しいのだろうか。





 まあ、いい。それより聞かなければならないことがある。



「そんな神様がなんでんだよ」



 ステータスを見ながら、あれだこれだと感想を言い合っていたリリィーとシオンが不思議そうな顔でこちらを見る。

 何を聞いているんだ?って顔だな。



「別にふてくされてない...」



「いやそれはふてくされてるやつのセリフだろ」



 邪龍の攻撃を受けようとしてたのがいい証拠だ。神なんだしあれで死ぬことはないだろうが、だからって攻撃を受ける理由にはならない。

 なによりこいつの目を見ればわかる。昔鏡で見たからな。



 ......



 見つめ合うこと数秒、こちらが引き下がる気がないと分かると少女はポツリポツリと話し始めた。





 曰く、この世界には10人の神がいた。

 曰く、そこに突然、11人目が現れる。



 もといた10人の神は恐れた。自分が11人目、"偽物"の神になることを。

 だから皆、自分は"本物"の神だと主張し、現れた11人目を排斥しようとした。



 この11人目というのが、今目の前にいる少女である。



 その後は、邪龍の封印という口実をつくられ、無事に追い出されたそうだ。他の神には、それまで色々と酷いこと言われていたらしい。





 どこの世界も似たようなもんか。俺は誰にも気づかれないよう小さく息を吐いた。







「なによそれ!酷すぎる! だいいち本物も、偽物も、あるかもわからないのに!安心して、私たちが守ってあげる」



 リリィーが魔王らしくない優しい声で魔王らしくない発言をする。ほんとこいつ魔王にむいてねーな。

 その場合、他の10人の神を敵にまわすことになるのだが、こいつはわかっているのだろうか。



「わが身かわいさに他人を蹴落としたんだね。よくある話だとはいえ、それが神様たちの中で起きてるって知るのは何とも複雑だよ」



 リリィーとシオンは、差異はあれど二人とも怒っていた。誰かのことで怒ってやれるとは、優しいやつらだな。



 ユウキは笑みをもらす。



 ああ、そうだ忘れないうちにこれは聞いておこう。



「聞きたいことが一つあるんだがいいか?」



「いいよ... スリーサイズはだめね...」



 この少女よくわからないところでボケを入れてくるな...



「他の10人の神の中に爺さんはいなかったか?」



「たしかいた... なんで...」



「ああ、俺は転生者でな。爺さんの神に送られてこの世界にきたんだ。だから知ってんのかと思って」



「ふーん...」



 ふーんって、あんまり驚かないのな。なんか悔しい。









 その後はリリィーの質問攻めになっていた。どうやらかわいい妹分ができたことで舞い上がっているらしい。

 落ち着くまで待とうと、俺とシオンはお茶をすすりながら話を聞いていた時だ。



「あなた名前がないのね。なんて呼べばいいのかしら」



「好きに呼んでもらって構わない...」



 リリィーが困ったように、こちらを振り向く。まあ、名前を考えるのはハードル高いもんな。



 俺はどうする?とシオンに目で問う。



「ユウキが連れて来たようなもんだし、ユウキが決めなよ」



 と言われてもなー



「なあ、他の神にはなんて呼ばれてたんだ?」



「"11番"...」



 あー、うーん。どうしたもんか。参考にしようと思って聞いたのに、これ参考になるのか? 11番...11番ねー







 あっ



「"イブ"ってのはどうだ」



「いいじゃない、可愛らしい名前」



 ちなみに"イブ"は、11を英語にして"イレブン"ってところから取らせてもらった。

 それからこれは後付け設定だが、イブといえばクリスマス。純白のこの子にはぴったりだろう。自分のセンスが恐ろしいぜ。ハッ。



「イブ... うん、いい名前...」



 どうやら気に入ってもらえたようだ。こころなしか表情が明るくなった気がする。







 ゴーーーーン





 時計台から鐘の音が鳴った。



 そろそろ昼時か? 話しているとあっという間だなー



「あーーー!」



 リリィー急に大声をあげる。



「ど、どうしたんだい?」



「お弁当つくったのに!」



 あー、やっと気づいたのか。そう、俺たちはテレポートしてきたせいで昼前に帰ってきていたのだ。よって、弁当が意味をなさない。



 シオンがそれを見てかわいそうだと思ったのか俺に助けをもとめてきた。イブのほうを確認するとこちらをジーっと見ている。それはどういう表情なんすかねー。



「しかたねー。もっかいテレポートで外にでも食いに行くか」



 リリィーは悪いやつじゃないしな。イブもリリィーのことを気に入ったみたいだし、このくらいのわがままは聞いてやろう。



「いいの?やった!」



「じゃあご飯を食べに行って、午後はみんなでお宝の鑑定でもしようか」



「わかった... なんでも鑑定する...」



「やめとけ! お前のボケ、この世界じゃ俺以外に通じないからな?」



 ユウキはそんなツッコみをいれながら、にぎやかになってきたなーと楽しそうに笑った。それを見ながらイブがわかるかわからないか程度で満足げな表情をしたことに一同は気付いていない。
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