11番目の神 ~俺と勇者と魔王と神様~

琴乃葉ことは

文字の大きさ
9 / 44
第一章『それは、新しい日常』

第八話「お話」

しおりを挟む
「美味しかった...」



 リリィーの手作りパイがお気にめし、イブはご満悦だった。



 物資が少ないと言っていたが、なけなしの砂糖を使って作ってくれたらしい。なんだかんだで頭が上がらない。何気にこっちに来てから一番世話になっちまってるし、後で何かお返ししないとな。



「もうちょっと休んでたかったわ」



「ダメだよ、リリィー。食べた後だから今動かないと眠くなってくる」



 シオンの言うとおりだ。あのまま休んでいたら寝てしまっていただろう。せっかく苦労してお宝を盗ってき——、いや、取ってきたのだから早く鑑定してみたい。



 物置に運んでおいたのをゴソゴソとみんなであさりながら高価そうなものを並べていく。先に並べてしまってからまとめて鑑定会をしようって算段だ。



 ガッチガチの甲冑や何か特殊効果のありそうなマント、他にはアーティファクトらしきものもある。

 アーティファクトというのは魔道具のことで、便利なものが多い。以上、俺が読んでいたラノベ知識より。



 いろいろ取り出してみたが、どれも装備品ばかりだ。邪龍に挑む奴らが硬貨を何枚も持ってくるわけないので、当然といえば当然かもしれない。



「こんなものかな?」



「よし、じゃあ鑑定していくかー」



 あらかた金になりそうなものは整理できたので次々と《鑑定》をかけていく。四人全員が《鑑定》を持っているので早い早い。









 名 前: 聖剣カラドボルグ

 効 果: 硬さ(大)

    切れ味(中)

    刀身変化







 名 前: 聖剣デュランダル

 効 果: 破壊不能武器

    切れ味(大)

    所有者への防御バフ(大)

 





 名 前: 龍殺しの剣

 効 果: 龍を相手にした時攻撃力バフ(大)

    殺してきた龍で攻撃力バフ(?)

    攻撃力バフの数により攻撃力バフ

    龍以外へダメージが通らない







 名 前: 神槍グングニル

 効 果: 雷属性(大)

    火属性(大)

    投げた際攻撃力バフ(特大)

    投げた後に手元に復元







 名 前: アイギスの盾

 効 果: 防御力(特大)

    所有者へ耐性スキル全て付与

    戦闘中では破壊不能

    自動防御









 などなど、他にも三十点近くもの装備品があった。かなり効果の良いものもあるし、これだけの数を売れば金に困ることはないだろう。

 しかし、これだけの数の人が邪龍の犠牲になっていたとは...



 俺が邪龍に殺された人に向け合掌しようとしたところ、シオンに止められた。



「それは違うよ、ユウキ。彼らは自分の意思で邪龍に挑み、逃げずに戦い続けたんだ。だから彼らを憐れむことをしてはいけない」



「...そうか」



 手をあわせようとして行き場をなくした手をコートのポケットにツッコむ。



「わー、これかわいい!」



「ん... きれい...」



 女性陣が指輪や首飾りなどのアクセサリーを見ながらはしゃいでいる。鑑定してステータスを出しているのに全く効果とか見ていない。



 イブもアクセサリーであんな顔するんだな。



「ユウキは神様にお熱だね~」



「別にそこまでじゃねーよ。ただちょっとした仲間意識みたいなもんだ」



 シオンがからかってくるが適当にごまかしておく。俺にまだそんな気持ちはない。



「それより、これだけの数をどうやって金に変えるつもりだ? こんな特殊な物、取り扱ってくれる店なんてそうそうないだろ」



「それなら大丈夫。僕が人間界の方でツテがあるから、明日にでもいってくるよ」



 この品々を正規で扱ってくれる店などないだろう。ってことは十中八九、裏の社会の人間との取引だ。勇者としてどうなんだと思わなくもない。



「なら任せる。あ、でも俺も人間界についてっていいか? 一度この目で見に行ってみたいんだ」



「うん、いいよ。」



 その場の思いつきで言ってみたものの、ちゃんと承諾を得られた。人間界か...どんなところなんだろうな。個人的にチンピラに絡まれるテンプレなんかやってみたかったりする。







「あー、こっちのもいいな~」



 コクコク



 リリィーの言葉にイブがうなずく。こういう時女性は長い。



 それを見て俺とシオンは苦笑し、今後について話を進めるのであった。









 ~~~~~~~~~~









 その夜、自室に向かう途中。



「ふぅ、さっぱりした」



 俺はリリィーに頼み込んでシャワーを貸してもらった。ちゃんとお湯が出てきたので、どんな仕組みでできているのか聞いて見たところ、魔法よ!という魔法の言葉で終わってしまった。マホウスゴイ。



 自分の部屋の前にたどり着き、ドアをあける。



 ......



「なんで俺の部屋にいるんだ、イブ」



「こんないたいけな少女を... 一人にさせる気...?」



「いや、お前神様なんだし結構なロリバっていててて、髪を引っ張るな!」



 そのままベットに引っ張り倒され馬乗りされる。



「なにをする」



「なにしてほしい...?」



 ......



 俺は身体を起き上がらせると、今度は逆に、馬乗りになっていたイブが後ろに倒れこむ。

 話が進まないので、イブに何の用だと視線で問いかけた。



「話... しに来た...」



「いいぞ、別に」



 イブはかすかに微笑むと、寝転んだまま俺を見上げて話だした。



「《転生者》... つけてるんだ...」



「ん?ああ、まあな」



 ここでいう転生者というのは、おそらく俺が持っている称号のことだろう。



 称号やスキルというのはスイッチのオン、オフと同じだ。必要なときは入れておき、必要なとき以外は切っておく、これが基本だと俺は思っている。



 考えても見てほしい《怪力》や《縮地》なんか使いながら生活していたら絶対事故る。《暗視》なんかつけたまま生活していたら違和感しかないだろう。

 だから俺は使ったら切るを徹底している。他のやつらもきっとそうだろう。



 ただ、例外もある。例えば耐性系のスキルだ。耐性系のスキルは日常生活で使っていても特に弊害はない。それに奇襲を受けたとき、スキルの発動が間に合わない可能性もある。つけておいて損はないだろう。





 そして、もう一つの例外がある。



 こちらの世界にきてから、ずっとつけっぱになっている称号、イブも口にした《転生者》だ。

 実は昨日の夜も確認しているが、この称号の効果をよく思い出して欲しい。





《転生者》

 精神安定作用がある。





 シンプルな説明欄だが、これは精神に影響を与える代物だ。

 最初この称号見つけたとき、気づいてしまった。何故俺はこちらの世界に来て普通・・に生活できているのかを。

 そこからは、この称号を切ることができなかった。今の俺が消え、怯えて何もできない俺が残される可能性があったから。







「やっぱりマズイのか?」



 聞いてみると、予想外にイブは首を横に降った。



「悪い物ってわけじゃない... ただ、気持ちの問題... どう受け止めるか...」



 なるほど。



「大丈夫... ユウキはユウキ...」



 珍しく長々と説明してくれたし、励ましまでもらってしまった。



「ああ、俺は俺だ。多少変わってしまっていても本質は変わらない」



 ユウキはニッと笑うと、イブの頭をクシャクシャにした。照れ隠しのつもりだろうか。隠せていない。



 イブはこれ好機とみるや、すぐに用意していた言葉を放った。



「じゃ... 寝よ...」



「お?おう、突然だな。おやすみ?」



 早いな、実際会話したの一分もなかったと思うけど。すると、イブがゴロゴロとベッドを転がりながら移動する。



 ピタ



 何故か俺のベッドを半分占拠したところで止まった。





 ......





「あのー イブさん?」



 仰向けで目を閉じたまま、ピクリともしない。早く隣に寝ろとのことらしい。



「きれいな顔してるだろ。死んでるんだぜ。それで」



「今... きれいって言った...?」



「人のボケをボケで返すのやめてもらっていいかな!俺が恥ずいんだけど!」









 足下にある布団を引っ張ってきて、自分とイブがはみ出ないようにかける。

 え?結局一緒に寝るのかって?

 俺は知っている(ラノベで)。このタイプの子は最後まで折れない。なら、無駄な争いはやめて黙って寝ようということにした。





「ユウキたちは、なんで... 世界平和なんて目指してるの...?」



 左に顔を向けると、イブの顔がすぐ目の前にあった。



「んー、俺はそのくらいしか目的がないからだな。他の二人は知らん」



「随分アバウト... 私も一緒にいていいんだよね...」



 俺のそでをちょこんとつまむ感覚がある。それは、ちょっとでも動かせば離れていってしまいそうなほど弱々しい。

 俺はイブの頭に手を乗せる。人は誰かに頭を撫でられると不安だとか恐怖が柔らぐらしい。



「当たり前だろ。だってその方が絶対面白い」







 イブの瞳に映る俺の影は、若干揺れて見えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

処理中です...