16 / 144
思いがけないおすそ分け
3
しおりを挟む
桐生さんの秘密?
それを私に教えてくれるの?
「も、もし、見せて下さるなら……」
「丁寧な敬語を使う俺も、無口でクールを気取っている俺も、本当の俺じゃない。俺は、普通。丁寧で優しいわけでもないし、厳し過ぎるわけでもない。いたって『普通』の人間なんだ」
敬語が無くなり、急に表情が緩んだ。
同時に私まで肩の力が抜けた気がした。
「普通……?」
「ああ」
「普通ではないと思いますが……」
「普通だよ。桐生グループの一人息子だとしても、俺は肩書きに左右されない1人の人間としての『桐生 拓弥』でありたい。そう思って生きてきた。でも、世間はいつだってそれを許してはくれなかった」
「桐生さん……」
ただの凡人にはわからない、桐生さんなりの苦労があったんだろう。そのくらいは私にもなんとなく想像することはできる。
「桐生グループの御曹司だからとちやほやして、お金や権力に群がる大人達。集まってくる女性達もみんな……誰も俺の中身を見てくれる人などいなかった」
「そんな……」
「そんなことないと思う? でも、俺は今までそういう人間を嫌というほど見てきた。これは事実。心が壊れそうになったこともある。だから……大学を卒業して会社に入ったタイミングで、俺は違う人格で本来の自分を消した。厳しくて愛想の悪い仕事人間を演じて、むやみに周りに人を近づけないようにしていたんだ」
「……」
桐生さんの真剣な心の叫びが胸を締め付け言葉が出ない。
「でも、君には……厳しい人格でも、普通の自分でもない『違う俺』が出てきた。どうしてなんだろうな……」
「そ、それは元々桐生さんが優しいからですよ。優しい桐生さんも、本当の桐生さんの中に存在しているから」
「……優しい……?」
「はい、とても」
それを私に教えてくれるの?
「も、もし、見せて下さるなら……」
「丁寧な敬語を使う俺も、無口でクールを気取っている俺も、本当の俺じゃない。俺は、普通。丁寧で優しいわけでもないし、厳し過ぎるわけでもない。いたって『普通』の人間なんだ」
敬語が無くなり、急に表情が緩んだ。
同時に私まで肩の力が抜けた気がした。
「普通……?」
「ああ」
「普通ではないと思いますが……」
「普通だよ。桐生グループの一人息子だとしても、俺は肩書きに左右されない1人の人間としての『桐生 拓弥』でありたい。そう思って生きてきた。でも、世間はいつだってそれを許してはくれなかった」
「桐生さん……」
ただの凡人にはわからない、桐生さんなりの苦労があったんだろう。そのくらいは私にもなんとなく想像することはできる。
「桐生グループの御曹司だからとちやほやして、お金や権力に群がる大人達。集まってくる女性達もみんな……誰も俺の中身を見てくれる人などいなかった」
「そんな……」
「そんなことないと思う? でも、俺は今までそういう人間を嫌というほど見てきた。これは事実。心が壊れそうになったこともある。だから……大学を卒業して会社に入ったタイミングで、俺は違う人格で本来の自分を消した。厳しくて愛想の悪い仕事人間を演じて、むやみに周りに人を近づけないようにしていたんだ」
「……」
桐生さんの真剣な心の叫びが胸を締め付け言葉が出ない。
「でも、君には……厳しい人格でも、普通の自分でもない『違う俺』が出てきた。どうしてなんだろうな……」
「そ、それは元々桐生さんが優しいからですよ。優しい桐生さんも、本当の桐生さんの中に存在しているから」
「……優しい……?」
「はい、とても」
23
あなたにおすすめの小説
恋は秘密のその先に
葉月 まい
恋愛
秘書課の皆が逃げ出すほど冷血な副社長
仕方なく穴埋めを命じられ
副社長の秘書につくことになった
入社3年目の人事部のOL
やがて互いの秘密を知り
ますます相手と距離を置く
果たして秘密の真相は?
互いのピンチを救えるのか?
そして行き着く二人の関係は…?
極上Dr.の甘美な誘惑―罪深き深愛の果てに-(旧題:sinful relations)
雛瀬智美
恋愛
*タイトルを極上Dr.の甘美な誘惑―罪深き深愛に溺れて-に変更いたしました。
メインキャラの設定の見直しのため、随時、加筆修正版&次話を更新していきます。
「もう会うこともないだろうが……気をつけろよ」 彼女は少し笑いながら、こくりと頷いた。 それから一緒に眠りに落ち、目覚めたのは夜が明けた頃。 年上男性×年下少女の重ねる甘く危険な罪。両片思いのすれ違いじれじれからハッピー甘々な展開になります。
階段から落ちたOLと医師のラブストーリー。
青の子供時代のエピソードは、
fall in blueや、他シリーズの
four seasonsにて。
ヤンデレ御曹司から逃げ出した、愛され花嫁の168時間
水田歩
恋愛
家永円佳(27)は嘉島財閥御曹司、透也(24)との結婚を一週間前に控えて、幸せいっぱい。
……のはずが、透也の目的が父の特許奪取のためとわかり、家出を決行する。
海外出張中だった透也は円佳に逃げられてイライラ。
「こんなことなら円佳を僕の腕の中に閉じ込めておけばよかった」
一方の円佳は。
「迎えにきたら婚約破棄する」と宣言したくせに透也が恋しくて仕方ない。
このままでは前に進めない――。
円佳は透也の許に戻り、彼の真意を問いただすことを決意する。
こじれた二人の仲は修復できるのか。
そして透也は円佳を家出させた黒幕の大物セレブをおびき寄せた。二人はセレブとハネムーン行きの船上で対決することに。
艶場面には⭐︎をつけます。
2022/02/25 完結しました!
最高ランクの御曹司との甘い生活にすっかりハマってます
けいこ
恋愛
ホテルマンとして、大好きなあなたと毎日一緒に仕事が出来ることに幸せを感じていた。
あなたは、グレースホテル東京の総支配人。
今や、世界中に点在する最高級ホテルの創始者の孫。
つまりは、最高ランクの御曹司。
おまけに、容姿端麗、頭脳明晰。
総支配人と、同じホテルで働く地味で大人しめのコンシェルジュの私とは、明らかに身分違い。
私は、ただ、あなたを遠くから見つめているだけで良かったのに…
それなのに、突然、あなたから頼まれた偽装結婚の相手役。
こんな私に、どうしてそんなことを?
『なぜ普通以下なんて自分をさげすむんだ。一花は…そんなに可愛いのに…』
そう言って、私を抱きしめるのはなぜ?
告白されたわけじゃないのに、気がづけば一緒に住むことになって…
仕事では見ることが出来ない、私だけに向けられるその笑顔と優しさ、そして、あなたの甘い囁きに、毎日胸がキュンキュンしてしまう。
親友からのキツイ言葉に深く傷ついたり、ホテルに長期滞在しているお客様や、同僚からのアプローチにも翻弄されて…
私、一体、この先どうなっていくのかな?
謎多きお見合い相手は、秘めた愛を彼女に注ぐ
玖羽 望月
恋愛
老舗医療機器メーカーのマーケティング・企画部で働く石田琴葉【いしだことは】(28)は、仕事一筋で生きてきた。
学生時代に恋愛で痛手を負った琴葉は、それから勉強と仕事を最優先に生きてきた。
ある日琴葉は、祖母にお見合いを勧められ、「会うだけなら」と渋々お見合いに臨んだ。
そこに現れたのは眉目秀麗という言葉が似合う榛名智臣【はるなともおみ】(33)だった。
智臣は琴葉の仕事や業界に精通していて、思いの外話しは弾む。ただ自身のことは多くを語らず、会話の端々に謎を残してお見合いは終わった。
その後何も連絡はなく、気になりながらも目の前の仕事に全力を尽くす琴葉。
やがて迎えた、上層部の集う重要会議。
緊張感の中、突如発表されたのはマーケティング・企画部長の異動と、新たな部長の着任だった。
そこに現れた新部長は――
※こちらのサイトのみ投稿しています。
(3月中旬頃まで充電期間いただきます🙏再開をお待ちいただけると嬉しいです)
ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。
汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。
書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。
―――――――――――――――――――
ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。
傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。
―――なのに!
その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!?
恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆
「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」
*・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・*
▶Attention
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる