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クリスマス・イブの夜に
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「今、何を考えてた?」
その突然の質問に一瞬うろたえた。
「……い、いえ、別に」
「柊のこと……だよな」
図星だった。
樹さんがずっと黙るから、私、つい柊君のことを考えてしまった。
「……えっと……」
「さっきの答え」
「えっ?」
「今日の俺の相手がお前でいいのかっていう質問の答えだ」
「あ……はい……」
「今日は、柚葉に見せたいものがある」
「見せたいもの?」
「行けばわかる」
「……はい」
ぶっきらぼうな言い方は相変わらずだ。
「俺は今日、それを柚葉と見たかった」
「えっ?」
「クリスマス・イブなんか、今まで俺には関係ないイベントだった。1人でいても、寂しいなんて思ったこともなかった」
樹さん……
「でも、今日はお前と一緒にいたいって……思ってる」
そんな……本当に?
一緒にいたいって……
どういう風に受け取ればいいんだろう……
「樹さん、私のこと、本当に心配してくれてるんですね。ごめんなさい、私がまだ不安定だから……」
「……もうすぐ着く」
樹さんからは、その言葉しか返ってこなかった。
何を話せばいいのかわからない。
樹さんは、次々に言葉が出てくる柊君とは全然違う。
1つ1つの言葉を慎重に、そして、大切に……つむぎ出してるように感じた。
「着いた」
「うわぁ、すごいです! 素敵……」
車から目の前に広がるパノラマの夜景。
夜の暗闇の中、宝石を散りばめたみたいにキラキラしてる。
一瞬、胸がキュッとなって涙をこらえた。
高台にあるこの場所は、とてつもなく静かで、住宅もなく他に車もいない。
完全に2人きりだ。
「こっちに帰ってきていろいろ探した。ここなら誰もいないし、ゆっくり夜景を楽しめる」
「樹さん、この場所をわざわざ探してくれたんですか?」
「夜景……見たかったから。なかなかこんな機会ないしな」
「ありがとうございます。すごく素敵です」
その突然の質問に一瞬うろたえた。
「……い、いえ、別に」
「柊のこと……だよな」
図星だった。
樹さんがずっと黙るから、私、つい柊君のことを考えてしまった。
「……えっと……」
「さっきの答え」
「えっ?」
「今日の俺の相手がお前でいいのかっていう質問の答えだ」
「あ……はい……」
「今日は、柚葉に見せたいものがある」
「見せたいもの?」
「行けばわかる」
「……はい」
ぶっきらぼうな言い方は相変わらずだ。
「俺は今日、それを柚葉と見たかった」
「えっ?」
「クリスマス・イブなんか、今まで俺には関係ないイベントだった。1人でいても、寂しいなんて思ったこともなかった」
樹さん……
「でも、今日はお前と一緒にいたいって……思ってる」
そんな……本当に?
一緒にいたいって……
どういう風に受け取ればいいんだろう……
「樹さん、私のこと、本当に心配してくれてるんですね。ごめんなさい、私がまだ不安定だから……」
「……もうすぐ着く」
樹さんからは、その言葉しか返ってこなかった。
何を話せばいいのかわからない。
樹さんは、次々に言葉が出てくる柊君とは全然違う。
1つ1つの言葉を慎重に、そして、大切に……つむぎ出してるように感じた。
「着いた」
「うわぁ、すごいです! 素敵……」
車から目の前に広がるパノラマの夜景。
夜の暗闇の中、宝石を散りばめたみたいにキラキラしてる。
一瞬、胸がキュッとなって涙をこらえた。
高台にあるこの場所は、とてつもなく静かで、住宅もなく他に車もいない。
完全に2人きりだ。
「こっちに帰ってきていろいろ探した。ここなら誰もいないし、ゆっくり夜景を楽しめる」
「樹さん、この場所をわざわざ探してくれたんですか?」
「夜景……見たかったから。なかなかこんな機会ないしな」
「ありがとうございます。すごく素敵です」
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